うさぎのモンスターと骨兄弟
しんしんと冷たい雪が降るスノーフルの森。
その日、ゆきはいつもより少し遠く、スノーフルとウォーターフェルの境目近くにある果実の木まで、おやつを探しにきていた。
耳が良いゆきは、森の静寂の中に混ざる、わずかな「音」に敏感だ。雪が木から落ちる音、風が枝を揺らす音。そんな平和な音を楽しんでいたとき、その「異変」は前触れもなく訪れた。
バキィッ!
重苦しい、不吉な破裂音が森に響き渡る。
ゆきが驚いて上を見上げると、長年の雪の重みに耐えかねた、巨大な大木の太い枝が根元からへし折れ、まさに自分の真上へとまっすぐ落ちてくるところだった。
「え……っ!?」
あまりの突然の出来事に、ゆきは身体がすくんで動けなくなってしまった。自慢の大きな耳が恐怖でペタリと伏せられる。避ける時間はもうない。巨大な雪の塊をまとった大枝が、視界を完全に塞ぐようにして迫ってきた。
(だめ、当たっちゃう――!)
ゆきがぎゅっと目を閉じた、その瞬間。
ガシッ、と力強い骨の手が、ゆきの小さな身体を横から乱暴にひったくった。
「――おっと。危ねえところだったな」
聞き慣れた、少し掠れた低い声。
それと同時に、視界がふっと一瞬だけ真っ暗になった。
ドゴォォォン!!!
背後で、地響きを立てて大枝が地面に激突し、激しい雪煙が舞い上がる音が聞こえる。しかし、ゆきはその衝撃をまったく感じなかった。
恐る恐る目を開けると、そこはさっきまでいた森の中ではなく、スノーフルの町外れにあるお馴染みの「見張り小屋」の裏手だった。
目の前には、青いパーカーのフードを被り、いつもと変わらない永久不変の笑みを浮かべたスケルトン――サンズが立っていた。
「サ、サンズ……!? なんで……」
ゆきは状況が掴めず、大きな目をパチクリとさせてサンズを見上げた。心臓がまだバクバクと激しく鐘を鳴らしている。
サンズはポケットに両手を突っ込むと、やれやれと肩をすくめてみせた。
「いやぁ、オイラの鋭い『骨(コツ)』がさ、可愛い大ファンがピンチだって囁いたもんでね。慌てて『ショートカット』で駆けつけたってわけさ」
実際には、耳の良いゆきがいつもと違うルートへ歩いていく足音を、サンズがなんとなく気に留めて、裏道から見守っていたのだった。
危ういところで直撃を免れたのだと理解した瞬間、ゆきの緊張がフッと解け、その場にぺたんと座り込んでしまった。
「怖かったぁ……! サンズ、ありがとう……! 本当に助かったよ。サンズが来てくれなかったら、私、今頃ペッちゃんこの雪うさぎになるところだった……」
うるうると涙を浮かべてお礼を言うゆきを見て、サンズはいつものように左目をウインクさせた。
「ハハ、気にすんなって。お前さんみたいな熱心なファンを、あんな木の枝ごときに潰させるわけにはいかないからな。そんなことになったら、オイラのコメディアンとしての面目が『丸潰れ』になっちまう」
「もう、こんな時までダジャレなんだから!」
ゆきは涙を拭いながら、ようやくクスリと笑った。やっぱり、サンズのこの緊張感のないお馴染みのジョークを聞くと、どんな恐怖も綺麗に吹き飛んでしまう。
サンズはゆきの前に屈み込むと、ポケットから片手を出して、ゆきの頭をぽんぽんと優しく叩いた。
「ま、怪我がなくて何よりだ。でも、あんな奥まで一人で行くのは感心しねえな。パピルスが見たら、それこそ目玉が飛び出るくらい心配するぜ。……まあ、あいつに目玉はねえんだけどよ」
「あはは! 骨のダジャレが止まらないね!」
「へへ、そいつはオイラの生業だからな。さてと、冷えないうちに町に戻るか。グリルビーズで温かいココアでも奢ってやるよ。もちろん、オイラのツケでな」
「わあい! サンズ、大好き!」
ゆきは元気よく立ち上がると、自慢の大きな耳を嬉しそうにピコピコと揺らした。
白い雪が舞うスノーフルの帰り道。二人の歩幅に合わせるように、小さく優しい笑い声が、静かな冬の空気の中に溶けていった。
その日、ゆきはいつもより少し遠く、スノーフルとウォーターフェルの境目近くにある果実の木まで、おやつを探しにきていた。
耳が良いゆきは、森の静寂の中に混ざる、わずかな「音」に敏感だ。雪が木から落ちる音、風が枝を揺らす音。そんな平和な音を楽しんでいたとき、その「異変」は前触れもなく訪れた。
バキィッ!
重苦しい、不吉な破裂音が森に響き渡る。
ゆきが驚いて上を見上げると、長年の雪の重みに耐えかねた、巨大な大木の太い枝が根元からへし折れ、まさに自分の真上へとまっすぐ落ちてくるところだった。
「え……っ!?」
あまりの突然の出来事に、ゆきは身体がすくんで動けなくなってしまった。自慢の大きな耳が恐怖でペタリと伏せられる。避ける時間はもうない。巨大な雪の塊をまとった大枝が、視界を完全に塞ぐようにして迫ってきた。
(だめ、当たっちゃう――!)
ゆきがぎゅっと目を閉じた、その瞬間。
ガシッ、と力強い骨の手が、ゆきの小さな身体を横から乱暴にひったくった。
「――おっと。危ねえところだったな」
聞き慣れた、少し掠れた低い声。
それと同時に、視界がふっと一瞬だけ真っ暗になった。
ドゴォォォン!!!
背後で、地響きを立てて大枝が地面に激突し、激しい雪煙が舞い上がる音が聞こえる。しかし、ゆきはその衝撃をまったく感じなかった。
恐る恐る目を開けると、そこはさっきまでいた森の中ではなく、スノーフルの町外れにあるお馴染みの「見張り小屋」の裏手だった。
目の前には、青いパーカーのフードを被り、いつもと変わらない永久不変の笑みを浮かべたスケルトン――サンズが立っていた。
「サ、サンズ……!? なんで……」
ゆきは状況が掴めず、大きな目をパチクリとさせてサンズを見上げた。心臓がまだバクバクと激しく鐘を鳴らしている。
サンズはポケットに両手を突っ込むと、やれやれと肩をすくめてみせた。
「いやぁ、オイラの鋭い『骨(コツ)』がさ、可愛い大ファンがピンチだって囁いたもんでね。慌てて『ショートカット』で駆けつけたってわけさ」
実際には、耳の良いゆきがいつもと違うルートへ歩いていく足音を、サンズがなんとなく気に留めて、裏道から見守っていたのだった。
危ういところで直撃を免れたのだと理解した瞬間、ゆきの緊張がフッと解け、その場にぺたんと座り込んでしまった。
「怖かったぁ……! サンズ、ありがとう……! 本当に助かったよ。サンズが来てくれなかったら、私、今頃ペッちゃんこの雪うさぎになるところだった……」
うるうると涙を浮かべてお礼を言うゆきを見て、サンズはいつものように左目をウインクさせた。
「ハハ、気にすんなって。お前さんみたいな熱心なファンを、あんな木の枝ごときに潰させるわけにはいかないからな。そんなことになったら、オイラのコメディアンとしての面目が『丸潰れ』になっちまう」
「もう、こんな時までダジャレなんだから!」
ゆきは涙を拭いながら、ようやくクスリと笑った。やっぱり、サンズのこの緊張感のないお馴染みのジョークを聞くと、どんな恐怖も綺麗に吹き飛んでしまう。
サンズはゆきの前に屈み込むと、ポケットから片手を出して、ゆきの頭をぽんぽんと優しく叩いた。
「ま、怪我がなくて何よりだ。でも、あんな奥まで一人で行くのは感心しねえな。パピルスが見たら、それこそ目玉が飛び出るくらい心配するぜ。……まあ、あいつに目玉はねえんだけどよ」
「あはは! 骨のダジャレが止まらないね!」
「へへ、そいつはオイラの生業だからな。さてと、冷えないうちに町に戻るか。グリルビーズで温かいココアでも奢ってやるよ。もちろん、オイラのツケでな」
「わあい! サンズ、大好き!」
ゆきは元気よく立ち上がると、自慢の大きな耳を嬉しそうにピコピコと揺らした。
白い雪が舞うスノーフルの帰り道。二人の歩幅に合わせるように、小さく優しい笑い声が、静かな冬の空気の中に溶けていった。
