うさぎのモンスターと骨兄弟
スノーフルとウォーターフェルの境界線。
そこは、しんしんと降る雪が、冷たく湿った水滴に変わる場所です。
ゆきは、少し珍しい青いエコーフラワーを見たくて、いつもの散歩コースから少しだけ足を伸ばしていました。しかし、ウォーターフェルの入り口に差し掛かったその茂みの中で、彼女は最悪なものに出会ってしまいました。
パチン! という冷酷な音が響いた瞬間、ゆきの左足に鋭い痛みが走りました。
人間が、あるいは野蛮な狩人が仕掛けたのであろう、無骨な金属の罠。うさぎのモンスターであるゆきが、本来なら最も警戒すべき「狩りの道具」に、まんまと足を囚われてしまったのです。
「うっ……! あぁっ……!」
ゆきは茂みの中で身動きが取れなくなりました。
自慢の大きな耳が恐怖で小刻みに震えます。鋭く研ぎ澄まされた聴覚は、洞窟の中に滴り落ちる水音さえも、まるで巨大な怪物の足音のように大きく増幅させてゆきを追い詰めました。
(いたい……動けない……っ。誰か、助けて……)
恐怖で涙がこぼれ落ちます。ここは人通りの少ない場所です。もし、このまま誰も通りかからなかったら。あるいは、もしこの罠を仕掛けた「誰か」が戻ってきたら――。
ゆきは恐怖に耐えきれず、耳を伏せて小さく嗚咽を漏らしました。
その時でした。
ガシャーン! ガシャーン! という、重々しい金属の鎧が擦れ合う音が近づいてきました。
「――ん? 何か音がしたぞ。……おい、そんなところに誰かいるのか!?」
その声は、力強く、そしてこの洞窟全体を震わせるほどに響きました。
茂みをかき分けて現れたのは、光り輝く鎧を纏った、ロイヤル・ガードの隊長――アンダインでした。
「なっ……!?」
アンダインはゆきの姿を認めた瞬間、その鋭い眼光を驚きに見開きました。そして、ゆきの左足に食い込んでいる金属の罠を見た瞬間、彼女の表情は怒りで一気に険しくなりました。
「なんてことだ……。モンスターに対してこんな卑劣な真似を……ッ!」
アンダインはゆきに駆け寄ると、優しく、しかし確固たる意志を込めて言いました。
「動くな! 今、私がなんとかしてやる!」
アンダインはポケットからではなく、その手から魔法の槍を召喚しました。彼女のエネルギーが、洞窟を青く照らします。
「アンダイン、だめ、壊れるかも……!」とゆきが心配するのも束の間、アンダインは驚くほど繊細な力加減で、罠の金具の隙間に槍の先を差し込みました。
「NGAAAH!!」
彼女の叫びとともに、青い魔力が爆発しました。
ガキンッ!! という鈍い金属音を立てて、罠はねじ曲げられ、ゆきの足から外れました。
一瞬の出来事でした。
「――大丈夫か!? 立てるか!?」
アンダインは罠を放り投げると、すぐさまゆきを抱きかかえました。ゆきは痛さと安心感で、アンダインの鎧に顔を埋めて泣き出してしまいました。
「うわぁぁぁん! アンダイン……こわかったよぅ……!」
「ああ、よしよし……! もう大丈夫だ、私がついている!」
普段の豪快なアンダインからは想像もできないほど、その手つきは優しく、ゆきの震える体をさすりました。
彼女は怒りに拳を震わせながら、地面に転がる罠を睨みつけました。
「こんなひどい罠を仕掛けた奴は、私が必ず見つけ出して、地獄まで追いかけてやる……! この場所は、この私が責任を持って見回りルートに追加だ!」
アンダインはゆきを大切そうに抱え直すと、力強く宣言しました。
「さあ、帰ろう! スノーフルまで送ってやる! ついでにグリルビーズで、うまいもんでも奢ってやるからな! なあ、いいだろ?」
「うん……っ、ありがとう、アンダイン……」
ゆきはアンダインの力強い心臓の鼓動を聞きながら、やっとのことで涙を拭いました。
ウォーターフェルの冷たい空気が、今はまるでアンダインの優しさのように温かく感じられました。
「よし、しっかり捕まってろよ! 行くぞ!」
アンダインは堂々と歩き出しました。
その頼もしい背中と、迷いのない足取りのおかげで、ゆきの耳にはもう、恐怖の音ではなく、ただアンダインの歩く頼もしい響きだけが聞こえていたのでした。
そこは、しんしんと降る雪が、冷たく湿った水滴に変わる場所です。
ゆきは、少し珍しい青いエコーフラワーを見たくて、いつもの散歩コースから少しだけ足を伸ばしていました。しかし、ウォーターフェルの入り口に差し掛かったその茂みの中で、彼女は最悪なものに出会ってしまいました。
パチン! という冷酷な音が響いた瞬間、ゆきの左足に鋭い痛みが走りました。
人間が、あるいは野蛮な狩人が仕掛けたのであろう、無骨な金属の罠。うさぎのモンスターであるゆきが、本来なら最も警戒すべき「狩りの道具」に、まんまと足を囚われてしまったのです。
「うっ……! あぁっ……!」
ゆきは茂みの中で身動きが取れなくなりました。
自慢の大きな耳が恐怖で小刻みに震えます。鋭く研ぎ澄まされた聴覚は、洞窟の中に滴り落ちる水音さえも、まるで巨大な怪物の足音のように大きく増幅させてゆきを追い詰めました。
(いたい……動けない……っ。誰か、助けて……)
恐怖で涙がこぼれ落ちます。ここは人通りの少ない場所です。もし、このまま誰も通りかからなかったら。あるいは、もしこの罠を仕掛けた「誰か」が戻ってきたら――。
ゆきは恐怖に耐えきれず、耳を伏せて小さく嗚咽を漏らしました。
その時でした。
ガシャーン! ガシャーン! という、重々しい金属の鎧が擦れ合う音が近づいてきました。
「――ん? 何か音がしたぞ。……おい、そんなところに誰かいるのか!?」
その声は、力強く、そしてこの洞窟全体を震わせるほどに響きました。
茂みをかき分けて現れたのは、光り輝く鎧を纏った、ロイヤル・ガードの隊長――アンダインでした。
「なっ……!?」
アンダインはゆきの姿を認めた瞬間、その鋭い眼光を驚きに見開きました。そして、ゆきの左足に食い込んでいる金属の罠を見た瞬間、彼女の表情は怒りで一気に険しくなりました。
「なんてことだ……。モンスターに対してこんな卑劣な真似を……ッ!」
アンダインはゆきに駆け寄ると、優しく、しかし確固たる意志を込めて言いました。
「動くな! 今、私がなんとかしてやる!」
アンダインはポケットからではなく、その手から魔法の槍を召喚しました。彼女のエネルギーが、洞窟を青く照らします。
「アンダイン、だめ、壊れるかも……!」とゆきが心配するのも束の間、アンダインは驚くほど繊細な力加減で、罠の金具の隙間に槍の先を差し込みました。
「NGAAAH!!」
彼女の叫びとともに、青い魔力が爆発しました。
ガキンッ!! という鈍い金属音を立てて、罠はねじ曲げられ、ゆきの足から外れました。
一瞬の出来事でした。
「――大丈夫か!? 立てるか!?」
アンダインは罠を放り投げると、すぐさまゆきを抱きかかえました。ゆきは痛さと安心感で、アンダインの鎧に顔を埋めて泣き出してしまいました。
「うわぁぁぁん! アンダイン……こわかったよぅ……!」
「ああ、よしよし……! もう大丈夫だ、私がついている!」
普段の豪快なアンダインからは想像もできないほど、その手つきは優しく、ゆきの震える体をさすりました。
彼女は怒りに拳を震わせながら、地面に転がる罠を睨みつけました。
「こんなひどい罠を仕掛けた奴は、私が必ず見つけ出して、地獄まで追いかけてやる……! この場所は、この私が責任を持って見回りルートに追加だ!」
アンダインはゆきを大切そうに抱え直すと、力強く宣言しました。
「さあ、帰ろう! スノーフルまで送ってやる! ついでにグリルビーズで、うまいもんでも奢ってやるからな! なあ、いいだろ?」
「うん……っ、ありがとう、アンダイン……」
ゆきはアンダインの力強い心臓の鼓動を聞きながら、やっとのことで涙を拭いました。
ウォーターフェルの冷たい空気が、今はまるでアンダインの優しさのように温かく感じられました。
「よし、しっかり捕まってろよ! 行くぞ!」
アンダインは堂々と歩き出しました。
その頼もしい背中と、迷いのない足取りのおかげで、ゆきの耳にはもう、恐怖の音ではなく、ただアンダインの歩く頼もしい響きだけが聞こえていたのでした。
