うさぎのモンスターと骨兄弟
時は、あの恐ろしい人間がスノーフルにやってくるよりも、ずっと前のこと。
スノーフルがまだ活気にあふれ、誰もが笑顔で暮らしていた頃、ゆきはパピルスとも、ある大切な思い出で繋がっていました。
それは、ゆきが少しだけ遠出をして、きらきらと光るエコーフラワーが見たくてウォーターフェルまで足を伸ばした日のことでした。
青く美しい洞窟の世界に夢中になって歩いているうちに、ゆきは自分がどこにいるのか完全に分からなくなってしまったのです。周りは薄暗く、水の流れる不気味な音が洞窟内に反響していました。
うさぎ族のゆきにとって、音が反響するウォーターフェルは天敵のような場所。どこから何の音がしているのか分からなくなり、恐怖で耳をぎゅっと伏せて、道端で泣きじゃくっていました。
「お、おい! そこにいる小さなモンスター! どうしたのだ!?」
突然、頭上からとても大きくて、でもすごく張り切った声が響きました。
びっくりして顔を上げると、そこには赤いスカーフをなびかせた、背の高いスケルトン――パピルスが立っていました。
パピルスは泣いているゆきを見ると、骨の眼窩を丸くして、大慌てでその場にしゃがみ込みました。
「大変だ! 泣かないでくれ! この偉大なるパピルス様が来たからには、もう何も心配いらないぞ! 何があったのだ? サンダルを無くしたのか? それとも、パズルが解けなくて絶望しているのか!?」
「う、ううん……。お家が、どっちか分かんなくなっちゃって……」
ゆきが涙を拭いながら言うと、パピルスは胸の骨をドンと叩きました。
「なんと、迷子か! よし、安心するがいい! このロイヤル・ガード(の見習い)であるパピルス様が、キミを安全に送り届けてみせよう!」
パピルスは決してゆきを急かしたりしませんでした。
「キミはうさぎだから、大きな音が苦手なのだな?」と気づくと、いつもより少しだけ声を落として(それでも十分大きかったけれど)、真摯に、一生懸命に元気づけようとしてくれたのです。
「スノーフルまでの帰り道は、このパピルス様が完璧に把握している! さあ、これを食べるといい。元気が出るぞ!」
そう言ってパピルスが差し出したのは、タッパーに入った、ちょっと(かなり)茹ですぎて冷え切った特製のスパゲッティでした。お世辞にも美味しいとは言えなかったけれど、一生懸命に自分を助けようとしてくれるパピルスの優しさが嬉しくて、ゆきは残さず食べました。
「おお! キミはボクのスパゲッティの素晴らしさがわかるモンスターなのだな! 感激だ!」
パピルスはゆきの歩幅に合わせてゆっくりと歩き、スノーフルまでの道のりをずっと護衛してくれました。町の入り口が見えたとき、ゆきは本当に安心したのを覚えています。
「パピルスお兄ちゃん、ありがとう!」
「フハハハ! どういたしましてだ! これからは一人で遠くへ行っては駄目だぞ? もしまた困ったことがあれば、いつでもこのパピルス様を頼るがいい!」
パピルスはそう言って、嬉しそうに骨の手を大きく振って自分の家へと帰っていきました。
その日の夜、グリルビーズの近くでサンズに会ったとき、サンズはいつものようにポケットに手を突っ込んだまま、ゆきに話しかけてきました。
「よお、ゆき。聞いたぜ。うちのバカ弟が、ウォーターフェルで大活躍したんだって?」
「うん! パピルス、すっごく優しかった! 私が迷子になって泣いてたら、ずっと一緒にいてお家まで送ってくれたんだよ。スパゲッティもくれたの!」
ゆきが目を輝かせて話すと、サンズは嬉しそうに永久不変の笑みを深めました。
「へへ、そいつはよかった。あいつ、見た目はあんなだし、いつも叫んでてうるさいけどさ……。根はとびきり優しくて、誰にでも真摯に向き合う、最高の弟なんだ。……オイラの自慢さ」
「うん、パピルスはかっこいいよ!」
「だろ? ……あ、でも、あいつのスパゲッティを毎回完食してたら、お腹が『骨(ほね)』折損になっちまうから、次からはオイラが味見してやるよ」
「あはは! サンズのダジャレ、やっぱり最高!」
パピルスが一生懸命守ってくれた思い出と、それを聞いて嬉しそうに笑っていたサンズの顔。
あの優しかったスノーフルの日常は、今もゆきの耳の奥に、そして心の中に、大切な宝物として残り続けているのです。
スノーフルがまだ活気にあふれ、誰もが笑顔で暮らしていた頃、ゆきはパピルスとも、ある大切な思い出で繋がっていました。
それは、ゆきが少しだけ遠出をして、きらきらと光るエコーフラワーが見たくてウォーターフェルまで足を伸ばした日のことでした。
青く美しい洞窟の世界に夢中になって歩いているうちに、ゆきは自分がどこにいるのか完全に分からなくなってしまったのです。周りは薄暗く、水の流れる不気味な音が洞窟内に反響していました。
うさぎ族のゆきにとって、音が反響するウォーターフェルは天敵のような場所。どこから何の音がしているのか分からなくなり、恐怖で耳をぎゅっと伏せて、道端で泣きじゃくっていました。
「お、おい! そこにいる小さなモンスター! どうしたのだ!?」
突然、頭上からとても大きくて、でもすごく張り切った声が響きました。
びっくりして顔を上げると、そこには赤いスカーフをなびかせた、背の高いスケルトン――パピルスが立っていました。
パピルスは泣いているゆきを見ると、骨の眼窩を丸くして、大慌てでその場にしゃがみ込みました。
「大変だ! 泣かないでくれ! この偉大なるパピルス様が来たからには、もう何も心配いらないぞ! 何があったのだ? サンダルを無くしたのか? それとも、パズルが解けなくて絶望しているのか!?」
「う、ううん……。お家が、どっちか分かんなくなっちゃって……」
ゆきが涙を拭いながら言うと、パピルスは胸の骨をドンと叩きました。
「なんと、迷子か! よし、安心するがいい! このロイヤル・ガード(の見習い)であるパピルス様が、キミを安全に送り届けてみせよう!」
パピルスは決してゆきを急かしたりしませんでした。
「キミはうさぎだから、大きな音が苦手なのだな?」と気づくと、いつもより少しだけ声を落として(それでも十分大きかったけれど)、真摯に、一生懸命に元気づけようとしてくれたのです。
「スノーフルまでの帰り道は、このパピルス様が完璧に把握している! さあ、これを食べるといい。元気が出るぞ!」
そう言ってパピルスが差し出したのは、タッパーに入った、ちょっと(かなり)茹ですぎて冷え切った特製のスパゲッティでした。お世辞にも美味しいとは言えなかったけれど、一生懸命に自分を助けようとしてくれるパピルスの優しさが嬉しくて、ゆきは残さず食べました。
「おお! キミはボクのスパゲッティの素晴らしさがわかるモンスターなのだな! 感激だ!」
パピルスはゆきの歩幅に合わせてゆっくりと歩き、スノーフルまでの道のりをずっと護衛してくれました。町の入り口が見えたとき、ゆきは本当に安心したのを覚えています。
「パピルスお兄ちゃん、ありがとう!」
「フハハハ! どういたしましてだ! これからは一人で遠くへ行っては駄目だぞ? もしまた困ったことがあれば、いつでもこのパピルス様を頼るがいい!」
パピルスはそう言って、嬉しそうに骨の手を大きく振って自分の家へと帰っていきました。
その日の夜、グリルビーズの近くでサンズに会ったとき、サンズはいつものようにポケットに手を突っ込んだまま、ゆきに話しかけてきました。
「よお、ゆき。聞いたぜ。うちのバカ弟が、ウォーターフェルで大活躍したんだって?」
「うん! パピルス、すっごく優しかった! 私が迷子になって泣いてたら、ずっと一緒にいてお家まで送ってくれたんだよ。スパゲッティもくれたの!」
ゆきが目を輝かせて話すと、サンズは嬉しそうに永久不変の笑みを深めました。
「へへ、そいつはよかった。あいつ、見た目はあんなだし、いつも叫んでてうるさいけどさ……。根はとびきり優しくて、誰にでも真摯に向き合う、最高の弟なんだ。……オイラの自慢さ」
「うん、パピルスはかっこいいよ!」
「だろ? ……あ、でも、あいつのスパゲッティを毎回完食してたら、お腹が『骨(ほね)』折損になっちまうから、次からはオイラが味見してやるよ」
「あはは! サンズのダジャレ、やっぱり最高!」
パピルスが一生懸命守ってくれた思い出と、それを聞いて嬉しそうに笑っていたサンズの顔。
あの優しかったスノーフルの日常は、今もゆきの耳の奥に、そして心の中に、大切な宝物として残り続けているのです。
