うさぎのモンスターと骨兄弟

スノーフルの森のひらけた場所に、それはそびえ立っていた。
パピルスが人間のために夜なべして作り上げた、色鮮やかな「マルチ・カラー・タイルパズル」だ。

「フハハハ! 見るがいい、ゆき! これぞボクの天才的な頭脳が誇る、超難解パズルなのだ! 人間が来たら、これでお手本のように混乱させてやるぞ!」

パピルスが胸の骨をドンと叩いて高笑いする。その横で、ゆきは大きな目をきらきらと輝かせ、長い耳をピコピコと激しく揺らしていた。

「わあ、すごーい! カラフルで、まるでお菓子のステージみたい! パピルス、私、これやってみたい!」

「なんと! チャレンジャー第一号だな! よし、特別に許可しよう! だが気をつけるのだぞ、ルールは非常に複雑……」

パピルスが説明を始めるより早く、ゆきは「いっきまーす!」と小さな手足を弾ませて、ぴょんぴょんとタイルのスタート地点へと飛び込んでしまった。

それを見守るサンズは、いつも通りポケットに両手を突っ込んだまま、少し離れた木に寄りかかっている。永久不変の笑みを浮かべてはいるが、その目の光は、危なっかしい小さな大ファンの一挙手一投足にしっかりと注がれていた。

最初にゆきが着地したのは**ピンクのタイル**。
何の効果もない安全な床だ。ゆきは「普通の床だね!」と楽しそうにさらに奥へと進む。

次にゆきが見つめたのは、すぐ目の前にある、ひときわ鮮やかな**青のタイル**だった。

「あ、綺麗な青色! 私、お水に入って泳ぐの大好きだから、あの青いところに行ってみよーっと!」

小さな手足をばたつかせ、勢いよく青いタイルへジャンプしようとするゆき。
だが、そのタイルのすぐ隣には、バチバチと火花を散らす**黄色のタイル**が隣接していた。

「わーーーッ! 待つのだ、ゆき!」

パピルスが長い腕を振り回して大慌てで叫ぶ。

「その青は罠だ! 隣の黄色いタイルのせいで、その青い水も完全に感電している! 飛び込んだら、ビリビリと電撃を喰らってスタート地点まで押し戻されてしまうぞ!」

「ええっ!? お水なのにビリビリするの!?」

ゆきは空中で無理やり身体をひねるようにして、手前のピンクのタイルに急着地した。あぶなく感電するところだったゆきは、へにゃりと耳を寝かせて胸をなでおろす。

「ふぅ、あぶなかった……。じゃあ、こっちの美味しそうな匂いがする**オレンジのタイル**にいこう!」

くんくんと鼻を鳴らし、オレンジの香りを身体いっぱいにまとったゆき。果物みたいにいい匂いになってご満悦だ。しかし、ゆきはそのまま、また別の**青のタイル**へ進もうとした。

「次は、今度こそあの青いところで泳ぐんだ!」

「おいおい、ゆき。ちょっとストップだわ」

それまで黙って見ていたサンズが、ポケットから片手を出してひらひらと振った。いつもの気怠げな声だが、その奥には、無防備なゆきへの強い庇護欲がにじんでいる。

「お前さん、今すっごくいいオレンジの香りがしてるだろ? その青い水の中にはな、ピラニアが生息してやがるんだ。……そいつら、オレンジの香りが大好物でさ。そこに飛び込んだら、お前さんのその小さな身体が、ピラニアにボリボリと『骨(ほね)』まで齧られちまうぜ?」

「ピ、ピラニア!? 齧られちゃうの!?」

サンズの具体的な(そして少し脅かしの入った)ヒントに、ゆきは真っ赤な顔をして飛び退いた。

「うぅ、青いタイル、全然泳げないじゃん……!」

「そんなことはないぞ!」と、パピルスがすかさず口を挟む。
「よく見るのだ! あっちの**紫のタイル**の先にある青いタイルを!」

ゆきが言われた方向を見ると、ツルツルと滑りそうな紫のタイルが、青いタイルへと繋がっていた。

「あの紫のタイルは、レモンの香りの石鹸が塗ってあって、乗ると強制的に直進してしまう! だが、青いタイルのピラニアはレモンの香りが大の苦手なのだ! つまり、紫から滑り込めば、ピラニアに噛まれずにそのまま青い水を泳いで渡れるぞ!」

「なるほどーっ! レモンパワーだね!」

パピルスの真摯なアドバイスを受け、ゆきは思い切って紫のタイルへと飛び乗った。
「わわわっ、滑るー!」と、レモンの香りを漂わせながらツルツルと強制直進し、そのまま勢いよく青いタイルへ。今度はピラニアも近寄ってこず、バシャバシャと上手に泳いで通り抜けることができた。

パズルの終盤、ゆきの前には**緑のタイル**が広がっていた。

「あ、ここは綺麗なみどり色! 最後にここを踏んでゴールだね!」

ゆきが嬉しそうに足を伸ばそうとした瞬間、サンズが「あー、そこも罠だぜ」と、片目をウインクしながら告げた。

「そこを踏んでゴールしても、攻略後に大音量の警報が鳴り響くシステムになってる。……お前さん、モンスター一倍耳が良いだろ? そんな大音量のサイレンを目の前で聴かされたら、それこそ自慢の長い耳が『お釈迦(シャカ)』になっちまうよ。ついでに、怒ったモンスターたちとの戦闘もセットだ」

「ひゃあ!? お耳が痛くなるのは絶対にイヤ!」

ゆきは慌てて緑のタイルを大きく迂回し、何の効果もない安全なピンクのタイルだけを器用に選んで、ぴょんぴょんと跳ねながらついにパズルの外へと脱出した。

「やったぁーーー! ゴールできたよ!」

ゆきは小さな手足をいっぱいに伸ばして大喜び。
パピルスは「フハハハ! 素晴らしいぞ、ゆき! ボクの的確なヒントを見事に活かしたな!」と、我がことのように大はしゃぎしてゆきとハイタッチを交わした。

サンズは再び両手をポケットに突き戻し、満足そうに長い耳を揺らすゆきの元へ歩み寄る。

「やれやれ、お前さんが危険な選択ばかりするから、オイラもパピルスもハラハラしっぱなしだったぜ。……まあ、お前さんが怪我なくゴールできて、胸の『骨(ほね)』を下ろしたけどな」

「あはは! サンズ、また骨のダジャレ! ありがとう、サンズ、パピルス!」

危なっかしくて目が離せない小さな大ファンを、二人のスケルトン兄弟は、これからもこうして全力のヒントと優しさで守っていくのだった。
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