うさぎのモンスターと骨兄弟

スノーフルの町で「かくれんぼ」をやろうなんて言い出すモンスターは、そうそういない。なんたって、周りを見渡せばどこもかしこも真っ白な雪だらけ。隠れる場所なんて、木の陰か、パピルスの仕掛けた雑なパズルの裏くらいしかないからだ。

だが、こと「ゆき」に関して言えば、彼女は間違いなくスノーフルNO.1の、いや、地底世界で一番の「かくれんぼの天才」だった。

なにせ、ゆきの毛並みは、一点の曇りもない純白。
ただでさえ小さな身体のゆきが、スノーフルのふかふかの雪の中にぽんと身を沈め、自慢の長い耳を頭の後ろにぴったりと伏せてじっとしてしまえば……もうおしまいだ。

そこにあるのは、ただの「雪」。
どこからが雪で、どこからがゆきなのか、誰にも見分けることなんてできない。

「おーーーい! ゆき! どこにいるのだ! この偉大なるパピルス様の目を欺けると思うなよーーーッ!」

ある日の広場。パピルスが赤いスカーフをなびかせながら、目を皿のようにして辺りを見回していた。
すでにゲーム開始から30分。パピルスは広場を何周も行き来しているが、一向にゆきを見つけられる気配がない。それもそのはず、パピルスが今まさに踏みつけそうになっている、その足元の雪の盛り上がりこそが、ゆき本人なのだから。

ゆきは雪にまみれながら、小さな手足できゅっと身を縮め、笑い声をあげたいのを必死に堪えていた。

「ハハ、パピルス。あきらめなよ。あいつはもう、スノーフルの一部になっちまったんだわ。探すだけ『骨(ほね)』折り損だぜ」

ベンチに腰掛け、ケチャップをすすりながら観戦していたサンズが、気怠げに声をかける。

「何を言うかサンズ! ロイヤル・ガードたるもの、民間人(うさぎ)一人見つけられなくてどうする! ボクは絶対に諦めないぞ!」

パピルスがフハハハ! と叫びながら再び遠くの木箱を調べに走っていくのを見送り、サンズはふっと視線を落とした。

サンズの視線の先――ベンチのすぐ脇にある、なんの変哲もない雪のラミ(塊)。

サンズはポケットからゆっくりと片手を取り出すと、その雪の塊の「てっぺん」あたりを、骨の指先でかるく、ぽんぽんと叩いた。

「……みーっけ」

「わっ!? なんでバレちゃうの、サンズ!?」

スポン! と雪の中から飛び出してきたのは、やっぱりゆきだった。
毛並みが真っ白なせいでパピルスには絶対に見つけられなかったが、サンズにだけは最初から完全にバレていたのだ。ゆきは真っ赤な顔をして、長い耳をピコピコと悔しそうに揺らしながらサンズを睨んだ。

「もう! 私、完璧に雪に化けてたもん! パピルスだって気づかなかったのに、サンズは超能力でも使ったの?」

「超能力なわけねえだろ。オイラ、そんな大層な魔法は持ち合わせてねえよ」

サンズはニヤニヤと笑いながら、ゆきの頭や背中に積もった雪を、優しい手つきで払ってやった。

パピルスには見えなくても、サンズには分かってしまう。
人一倍耳がいいゆきが、パピルスの足音に反応して、ほんの少しだけ耳の毛をピクリと動かす微かな音。息を殺そうとして、逆にトクトクと早く刻まれてしまう小さな鼓動。そして何より、オイラの後ろをいつもぴょんぴょん跳ね回っているあの小さな存在が放つ、独特の「気配」のようなものが、サンズの五感(骨だけどな)にはハッキリと伝わっていた。

「お前さんがどれだけ雪に紛れるのが上手くてもさ……。オイラの前じゃ、その綺麗な白い毛並みも、ただの『目印』にしかならねえんだよ」

サンズはゆきの小さな手をぎゅっと握り、ベンチの隣のスペースへひょいと引き上げた。

「えー、ずるいなぁ。せっかく誰も見つけられない秘密の技なのに」

不満げに口を尖らせるゆきを見て、サンズの胸の奥には、いつもの心地いい温かさと強い庇護欲が広がっていく。

誰も彼女を探し出せない、スノーフルのかくれんぼの天才。
けれど、もし世界中の誰もが彼女を見失ったとしても、オイラだけは絶対に、この小さな白い影をすぐに見つけ出せる自信があった。というか、見失うわけにはいかないのだ。こんなに脆くて愛おしい生き物を、ただの冷たい雪の中に置き去りになんてできるはずがない。

「いいじゃねえか。世界中でオイラだけがお前さんを見つけられるなんて、コメディアンとファンとしては、なかなかに『お熱い(ホット)』関係だろ?」

「あはは! スノーフルなのにホットなんて、サンズのダジャレ、やっぱり最高!」

パピルスが遠くで「あっちの雪だるまが怪しいぞ!」と叫んでいる声をBGMに、二人の小さな笑い声が、白い雪の世界に優しく溶けていくのだった。
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