うさぎのモンスターと骨兄弟

「ねえねえ、サンズ! 望遠鏡で見えるあのきらきら、なんだか美味しそう!」

ウォーターフェルの薄暗い洞窟の奥。正しい向きで望遠鏡を覗くことを覚えたゆきは、接眼レンズにしがみついたまま、興奮気味に声を弾ませた。レンズの向こうで輝く天井の美しい結晶が、まるでお菓子の世界のように見えたらしい。

「美味しそう、ねぇ……。お前さん、やっぱり花より団子、星よりスパゲッティの口か。あんな硬い結晶をボリボリ食べたら、それこそ歯の『骨(ほね)』が折れちゃうぜ?」

サンズはいつものようにポケットに両手を突っ込んだまま、呆れたようにウインクしてみせる。

「だって、黄色くてツンツンしてて、絶対に甘い味がするもん!」

ゆきは望遠鏡から顔を離すと、今度はサンズの青いパーカーの裾を小さな手でぐいぐいと引っ張った。長い耳を期待に満ちた様子でピコピコと揺らし、物欲しそうな大きな瞳でサンズをじっと見上げる。

そんなゆきの姿を見つめていると、サンズの胸の奥には、またあのどうしようもない庇護欲がじわりと湧き上がってきた。この小さな生き物は、欲しいものがあるとすぐにこうして全力でオイラを頼ってくる。その無防備な信頼が、たまらなく愛おしい。

「……ハハ、しょうがねえなぁ。お前さんがそこまで言うなら、ちょっと待ってな」

サンズはポケットからゆっくりと片手を取り出した。その骨の手の中に握られていたのは、小さな透明な袋。中には、ゆきが言った通り、黄色やピンク、水色の、きらきらとしたツンツン頭の小さなお菓子――金平糖がいくつか入っていた。

サンズは袋を開けると、その中から一番綺麗に輝く黄色の粒をひとつ、指先でつまんでゆきの目の前に差し出した。

「ほらよ」

「わあ……! これ、なぁに!?」

ゆきは驚いて、小さな手足をぴょんと跳ねさせた。

「何って……見て分かんねえか? これはオイラがさっき、お前さんのために天井からこっそり取ってきた『星』さ。お前さんが美味しそうって言うから、ショートカットでひとっ飛びして毟(むし)り取ってきてやったんだわ」

サンズはニヤニヤと笑いながら、いかにも大層な嘘をそれっぽく口にする。

「ええっ!? サンズ、お空まで飛べるの!? すごいっ!」

ゆきは真っ赤な顔をして大喜びしながら、サンズの指先から小さな星を慎重に受け取ると、さっそく小さな口へ放り込んだ。カリッ、と静かな洞窟に小気味いい音が響く。

「……あ! あまい! すっごくあまくて美味しいよ、サンズ!」

「だろ? 星の味なんて、オイラくらいしか知らない特製品だからな。お前さんがオイラの最高のファンだから、特別に分けてやったんだ」

本当は、パピルスとのおつかいの途中で、お菓子を見つけて「あいつが喜びそうだな」と何気なくポケットに忍ばせておいたものだった。けれど、目の前で小さな手足をバタバタさせて「美味しい!」と笑うゆきを見ていると、そんな野暮な真実はどうでもよくなってくる。

「サンズ、ありがとう! 最高のプレゼント!」

ゆきは嬉しさのあまり、サンズの骨だらけの手を両手でぎゅっと握りしめて、ぶんぶんと振った。小さな手のひらの温かさが、サンズの冷たい指先へダイレクトに伝わってくる。

「へへ、喜んでもらえて何より。……でもさ、ゆき」

サンズはいつもの永久不変の笑みを少しだけ緩め、ゆきの頭をぽんぽんと優しく叩いた。

「そんなに美味しくても、一度にたくさん食べるんじゃねえぞ? あんまり星を食べ過ぎると、今度こそ本当にお腹の中に『星(星雲)』ができちまって、またお腹が痛くなっちゃうからな」

「あはは! もう、あの時のことまだ言ってるのー!?」

ウォーターフェルの静かな水音の中に、ゆきの無邪気な笑い声がこだまする。
サンズは再び両手をポケットに突き戻すと、自分の後ろを楽しそうにぴょんぴょんと跳ね回る小さな影を見守りながら、この壊れやすくて愛おしい命を、これからもずっと特等席で守り続けてやろうと、心の中で静かに誓うのだった。
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