うさぎのモンスターと骨兄弟

グリルビーズを出て、雪の積もるスノーフルの道を歩く。

ザッ、ザッ、という自分の気怠げな足音のすぐ後ろから、ピョン、ピョン、と小気味いい音がついてくる。振り返らなくてもわかる。ゆきがその小さな手足を一生懸命に動かして、オイラの後ろを跳ね回っているのだ。

ふと足を止めると、後ろの小さな影が「おっとっと」という風に、オイラの青いパーカーの裾にぶつかりそうになって止まった。長い耳が、嬉しそうにピコピコと揺れている。

「なーんだ、サンズ。急に立ち止まってどうしたの?」

無邪気に見上げてくる大きな瞳。オイラの腰のあたりまでしかない小さな身体。
それを見つめていると、サンズの胸の奥の骨の隙間に、妙に温かくて、それでいて少しだけひりつくような感情がじわりと広がっていく。

(……ほんと、ちっせえなぁ)

モンスターの世界は過酷だ。いつ何が起こるか分からない。こんなに小さくて、脆くて、オイラの後ろを信じ切った目でついてくるだけの生き物は、放っておけばいつの間にか塵になって消えてしまいそうな危うさがある。

何に対しても「めんどくせえ」で済ませたいはずのオイラなのに、この小さな大ファンが自分の後ろを楽しそうについてくるだけで、不思議と「守ってやらなきゃな」という妙な義務感が湧いてくるのだ。パピルスに対するそれとはまた少し違う、もっと壊れやすいものを扱うような、そんな感覚。

「いや……別に。お前さんがあんまりピョンピョン跳ねるからさ。スノーフルの雪は滑りやすいんだから、転んで泣き言言うなよって思ってさ」

サンズはいつものようにポケットに両手を突っ込んだまま、わざと意地悪っぽくウインクしてみせる。

「大丈夫だよ! 私はうさぎだもん。ジャンプは得意なんだから!」

「へへ、そいつはどうだか。……ほら、そんなところで油断してると……」

サンズはポケットから片手を取り出すと、ゆきの小さな手を、その骨だらけの手で大雑把に、けれど痛くさせないような絶妙な力加減で包み込んだ。

「……こうして繋いでおかないと、どっかの雪穴にでも落っこちちまいそうだからな。オイラ、お前さんを引っ張り上げるほど力持ちじゃねえんだわ」

「あはは! サンズの手、ひんやりしてて気持ちいい! ……でも、本当は私が迷子にならないように心配してくれてるんでしょう?」

図星を指されて、サンズは「やれやれ」と頭を振る。本当に、この耳のいいファンはオイラの声のトーンをよく聞き分けてやがる。

「さあね。オイラはただ、お前さんに怪我でもされたら、毎日ダジャレを評価してくれる貴重なサクラを失うことになるからな。……ほら、はぐれないようにしっかり掴まってな」

「うん!」

小さな手が、オイラの骨の手をぎゅっと握り返してくる。
吹雪が近づく冷たいスノーフルの町。けれど、その小さな手から伝わってくる確かな体温が、サンズの冷え切った身体をほんの少しだけ優しく温めていた。
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