うさぎのモンスターと骨兄弟
しんしんと雪が降り積もる町、スノーフル。
冷たい空気の中で、いつも通り「グリルビーズ」のネオンだけが暖かく店先を照らしています。
その店のすぐ近くに、うさぎの女の子のモンスター「ゆき」は立っていました。自慢の大きな耳をパタパタと動かしながら、お目当ての「あの音」が聞こえてくるのをじっと待っているのです。
ゆきは、この町に住むスケルトンの兄弟の兄、サンズの代ファンでした。正確に言うと、彼の放つ「骨(コツ)のあるダジャレ」の大ファンなのです。
うさぎ族のゆきは、人一倍、いやモンスター一倍耳が良いのが自慢。
遠くでパピルスが「サーーーンズ!!」と怒鳴っている声も、雪を踏みしめる小さな足音も、全部聞き分けることができます。
「……あ、きた」
雪をザッ、ザッ、と引きずるような、あの気怠げな足音。
ゆきが勢いよく振り向くと、青いパーカーのフードを被り、ポケットに両手を突っ込んだサンズが歩いてくるところでした。
「お、ゆきじゃん。こんなところで雪だるまの真似事か? 寒さで『ゆき(雪)』詰まっちまう前に、中に入りなよ」
「サンズ! 聞こえた、バッチリ聞こえたよ! 私の名前と雪をかけるなんて、やっぱり最高!」
ゆきがピョンピョンと跳ねながら拍手すると、サンズはいつもの永久不変の笑みを少しだけ緩めました。
「へへ、ありがとよ。オイラのジョークをそこまで喜んでくれるのは、この町じゃお前さんくらいなもんだ。パピルスなんて、オイラが口を開くだけで骨が折れるって顔するからな」
「私はサンズのダジャレ、毎日でも聞きたいな。ほら、私の耳、すごく大きいでしょう? サンズの面白いお話を一言も聞き逃したくないから、神様がこうしてくれたんだと思うんだ!」
ゆきが長い耳をピンと立てて胸を張ると、サンズは「なるほどねぇ」と自身の顎の骨をトントンと叩きました。
「そいつはいい耳だ。じゃあ、そんな耳のいいお前さんに、とっておきの新作をひとつ」
サンズはゆきに少しだけ近づき、声を潜めるようにして言いました。
「最近、川の渡し守のセリフが気になって眠れなくてさ。あいつ、いつも『水が増えてる』とか言うだろ? だからオイラ、川を見に行ってやったんだ。そしたらさ……」
ゆきは耳をこれでもかとサンズの方へ傾けます。
「川の水が、本当に『かわ(川)』いてやがった」
一瞬の静寂。
そして、ゆきは「きゃははは!」と、この日一番の歓声を上げて笑いました。
「かわいてる! 川なのに乾いてるの!? もう、サンズったら最高! お腹痛い!」
お腹を抱えて笑い転げるゆきを見て、サンズは満足そうに左目をウインクさせました。
「喜んでもらえて何より。お前さんみたいなお客さんがいてくれるなら、オイラもコメディアンに『骨(ほね)』をうずめる覚悟が持てるってもんだ」
「あはは、また骨のダジャレ! メモしとかなきゃ!」
スノーフルの冷たい風も、二人の周りだけは、まるでグリルビーズの店内みたいにポカポカとした空気に包まれていました。
「さてと、オイラはグリルビーズでケチャップでもすするわ。ゆきも冷えないうちに家に帰りなよ。あんまり遅くなると、お母さんが『うさぎ(右往左往)』しちゃうだろ?」
「あ、今のちょっと無理があるー!」
「ハハ、ばれたか。じゃあな、名リスナーさん」
サンズはひらひらと手を振りながら、パブの扉を開けて中へと消えていきました。
ゆきは、まだ余韻でピコピコと動く耳を幸せそうに揺らしながら、サンズのダジャレを忘れないように何度も心の中で唱えつつ、家路につくのでした。
冷たい空気の中で、いつも通り「グリルビーズ」のネオンだけが暖かく店先を照らしています。
その店のすぐ近くに、うさぎの女の子のモンスター「ゆき」は立っていました。自慢の大きな耳をパタパタと動かしながら、お目当ての「あの音」が聞こえてくるのをじっと待っているのです。
ゆきは、この町に住むスケルトンの兄弟の兄、サンズの代ファンでした。正確に言うと、彼の放つ「骨(コツ)のあるダジャレ」の大ファンなのです。
うさぎ族のゆきは、人一倍、いやモンスター一倍耳が良いのが自慢。
遠くでパピルスが「サーーーンズ!!」と怒鳴っている声も、雪を踏みしめる小さな足音も、全部聞き分けることができます。
「……あ、きた」
雪をザッ、ザッ、と引きずるような、あの気怠げな足音。
ゆきが勢いよく振り向くと、青いパーカーのフードを被り、ポケットに両手を突っ込んだサンズが歩いてくるところでした。
「お、ゆきじゃん。こんなところで雪だるまの真似事か? 寒さで『ゆき(雪)』詰まっちまう前に、中に入りなよ」
「サンズ! 聞こえた、バッチリ聞こえたよ! 私の名前と雪をかけるなんて、やっぱり最高!」
ゆきがピョンピョンと跳ねながら拍手すると、サンズはいつもの永久不変の笑みを少しだけ緩めました。
「へへ、ありがとよ。オイラのジョークをそこまで喜んでくれるのは、この町じゃお前さんくらいなもんだ。パピルスなんて、オイラが口を開くだけで骨が折れるって顔するからな」
「私はサンズのダジャレ、毎日でも聞きたいな。ほら、私の耳、すごく大きいでしょう? サンズの面白いお話を一言も聞き逃したくないから、神様がこうしてくれたんだと思うんだ!」
ゆきが長い耳をピンと立てて胸を張ると、サンズは「なるほどねぇ」と自身の顎の骨をトントンと叩きました。
「そいつはいい耳だ。じゃあ、そんな耳のいいお前さんに、とっておきの新作をひとつ」
サンズはゆきに少しだけ近づき、声を潜めるようにして言いました。
「最近、川の渡し守のセリフが気になって眠れなくてさ。あいつ、いつも『水が増えてる』とか言うだろ? だからオイラ、川を見に行ってやったんだ。そしたらさ……」
ゆきは耳をこれでもかとサンズの方へ傾けます。
「川の水が、本当に『かわ(川)』いてやがった」
一瞬の静寂。
そして、ゆきは「きゃははは!」と、この日一番の歓声を上げて笑いました。
「かわいてる! 川なのに乾いてるの!? もう、サンズったら最高! お腹痛い!」
お腹を抱えて笑い転げるゆきを見て、サンズは満足そうに左目をウインクさせました。
「喜んでもらえて何より。お前さんみたいなお客さんがいてくれるなら、オイラもコメディアンに『骨(ほね)』をうずめる覚悟が持てるってもんだ」
「あはは、また骨のダジャレ! メモしとかなきゃ!」
スノーフルの冷たい風も、二人の周りだけは、まるでグリルビーズの店内みたいにポカポカとした空気に包まれていました。
「さてと、オイラはグリルビーズでケチャップでもすするわ。ゆきも冷えないうちに家に帰りなよ。あんまり遅くなると、お母さんが『うさぎ(右往左往)』しちゃうだろ?」
「あ、今のちょっと無理があるー!」
「ハハ、ばれたか。じゃあな、名リスナーさん」
サンズはひらひらと手を振りながら、パブの扉を開けて中へと消えていきました。
ゆきは、まだ余韻でピコピコと動く耳を幸せそうに揺らしながら、サンズのダジャレを忘れないように何度も心の中で唱えつつ、家路につくのでした。
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