クッキーで吸血鬼な彼と
「ねぇ、ヴァンパイア味クッキー。……お願いがあるんだけど、今週末の夜、ちょっと一緒に出かけてくれない?」
平日の夜、ゆきは手を合わせながら、ソファの上の吸血鬼に上目遣いで切り出した。
「おや、デートのお誘いかい? でもオレ、人混みも日光も大嫌いなんだけどねぇ……」
ヴァンパイア味クッキーはグラスを揺らしながら、面倒くさそうに首を傾げる。しかし、ゆきは「そこはちゃんと考えてあるから!」と、スマートフォンの画面を彼の目の前に差し出した。
「これを見て!『夜のペア割キャンペーン』。2人で行くと、映画のチケットが半額になって、さらに提携レストランのメニューも全品30%オフになるの!」
画面には、煌びやかな映画館と、美味しそうな料理の写真が並んでいる。ゆきは彼の『吸血鬼としての事情』を考慮して、一気にまくしたてた。
「もちろん、出かけるのは完全に日が落ちてからの夜! 映画の最中は館内が真っ暗だから、ずっと寝ていてくれて構わないし、レストランでも無理に食事を摂らなくていいから! ただ、2人組としてそこにいてくれるだけでいいの。お願い、ついてきて!」
そこまで必死に、しかも自分に配慮した条件を出されると、ヴァンパイア味クッキーも少しだけ興味が湧いてきた。彼はスマートフォンを覗き込み、レストランのメニューのページを指でスクロールする。
「へぇ、そこまでオレに都合がいいなら、行ってもいいけど……。ん? ゆき、このレストランのメニュー、ちょっと見てみなよ」
「え?」
彼が指差したのは、ドリンクメニューの欄だった。そこには、期間限定の目玉商品が大きく載っている。
『最高級ぶどう使用! 砂糖・保存料不使用の贅沢プレミアム100%ぶどうジュース』
「……あ」
「映画で寝てていいのも楽でいいけどさ。この『ぷれみあむぶどうジュース』が30%オフで飲めるなら、俄然やる気が出てきちゃったねぇ。オレ、これにする!」
ヴァンパイア味クッキーは、赤い瞳をキラキラと輝かせて嬉しそうに笑った。食事は摂らなくていいと言われたものの、彼にとって大好物の「葡萄ジュース」の、それも最高級品が安く飲めるとなれば、話は完全に別だったらしい。
「本当に!? ついてきてくれる?」
「もちろんさ。ゆきが映画を楽しんでる間、オレは暗闇でじっくり睡眠をとって、その後にその極上のジュースをたらふくいただくとするよ。うん、完璧な計画だね」
「やったぁ! ありがとう!」
同僚に見られたらまた「架空の彼氏とデートの妄想をしてる」なんて思われるかもしれないが、そんなことはもうどうでもいい。週末、2人で贅沢な夜を過ごすという楽しみができただけで、明日からの残業もなんとか乗り切れそうな気がするゆきだった。
平日の夜、ゆきは手を合わせながら、ソファの上の吸血鬼に上目遣いで切り出した。
「おや、デートのお誘いかい? でもオレ、人混みも日光も大嫌いなんだけどねぇ……」
ヴァンパイア味クッキーはグラスを揺らしながら、面倒くさそうに首を傾げる。しかし、ゆきは「そこはちゃんと考えてあるから!」と、スマートフォンの画面を彼の目の前に差し出した。
「これを見て!『夜のペア割キャンペーン』。2人で行くと、映画のチケットが半額になって、さらに提携レストランのメニューも全品30%オフになるの!」
画面には、煌びやかな映画館と、美味しそうな料理の写真が並んでいる。ゆきは彼の『吸血鬼としての事情』を考慮して、一気にまくしたてた。
「もちろん、出かけるのは完全に日が落ちてからの夜! 映画の最中は館内が真っ暗だから、ずっと寝ていてくれて構わないし、レストランでも無理に食事を摂らなくていいから! ただ、2人組としてそこにいてくれるだけでいいの。お願い、ついてきて!」
そこまで必死に、しかも自分に配慮した条件を出されると、ヴァンパイア味クッキーも少しだけ興味が湧いてきた。彼はスマートフォンを覗き込み、レストランのメニューのページを指でスクロールする。
「へぇ、そこまでオレに都合がいいなら、行ってもいいけど……。ん? ゆき、このレストランのメニュー、ちょっと見てみなよ」
「え?」
彼が指差したのは、ドリンクメニューの欄だった。そこには、期間限定の目玉商品が大きく載っている。
『最高級ぶどう使用! 砂糖・保存料不使用の贅沢プレミアム100%ぶどうジュース』
「……あ」
「映画で寝てていいのも楽でいいけどさ。この『ぷれみあむぶどうジュース』が30%オフで飲めるなら、俄然やる気が出てきちゃったねぇ。オレ、これにする!」
ヴァンパイア味クッキーは、赤い瞳をキラキラと輝かせて嬉しそうに笑った。食事は摂らなくていいと言われたものの、彼にとって大好物の「葡萄ジュース」の、それも最高級品が安く飲めるとなれば、話は完全に別だったらしい。
「本当に!? ついてきてくれる?」
「もちろんさ。ゆきが映画を楽しんでる間、オレは暗闇でじっくり睡眠をとって、その後にその極上のジュースをたらふくいただくとするよ。うん、完璧な計画だね」
「やったぁ! ありがとう!」
同僚に見られたらまた「架空の彼氏とデートの妄想をしてる」なんて思われるかもしれないが、そんなことはもうどうでもいい。週末、2人で贅沢な夜を過ごすという楽しみができただけで、明日からの残業もなんとか乗り切れそうな気がするゆきだった。