少しの息苦しさと体の重さに目が覚めた。今は何時だろうとぼんやりしながら目を開いて硬直する。

これは一体どういう状況なのだろう。

どうして私は悟に抱きつかれているのだろう、というか昨日玄関で寝落ちして悟が帰ってくる夢を見て…あれ、夢じゃなかった？現実？あれ、私どうやってベットに入ったんだっけ？

「…ねえ、悟」

状況が理解できず混乱したまま、目の前の男に声をかける。

「…伊織起きたの？おはよ」

ふわりと笑うその男はとても美しかった。

悟が世にいう美形であることはもちろん一目見た時から分かっていたし一緒に住んでその性格を知ってああこれが残念なイケメンか、なんて失礼な事を考えたこともある。
その顔を見て「イケメンだなあ」とどこか他人事のような感想を抱くことはあっても何も思わなかったのに。

「あれ、顔赤くない？熱？」

額に伸ばされる手に思わず後ずさる私を見て悟は意地悪そうに笑った。

「かわい、照れてんの？」

違う、そうだいつもより距離が近いからだ。起きたら何故か抱きしめられてるなんてこの状況のせいだ。

じわじわと顔に集まる血流と早鐘を打つ鼓動に必死で言い聞かせた。