ヤンデレ、女攻め、夢主受け、バッドエンド、あほえろ何でもありです。
こわれて きえた
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ベットにサイドテーブルに木製の小さな椅子と少しの家具という、簡素な部屋に彼女は居た。
虚な目をした彼女は、ベットに上半身だけを起こし委ねて何も喋らない。窓辺をぼうっと眺める瞳には一片の光も映ってはいなかった。
やがて、無音の空間を切り裂くように「ただいま」と軽やかな口ぶりで青年が顔を覗かせた。
_メローネ。彼女の元同僚であり、恋人である
「やあ、ナマエ。調子はどう?今日は晴れていて
ディ・モールト気分が良いぞ。ナマエも1日、日向ぼっこでもしてたのかな」
ギギ、と音を立てて年季の入った椅子に腰掛ける。
『…………』
ナマエと呼ばれた女性はメローネに一瞥もくれず、黙っている。ナマエの心はある日を境に枯れ果ててしまった。
…きっかけは些細なことだったのかもしれない。
ナマエ達の仕事は殺人を専門としていた。いわゆるギャングと呼ばれる集団の中の、暗殺チームに所属していた。
時には痩せた腕のか弱い老人。時には麻薬を売り捌き人の道を外れた子供。そしてギャングの撲滅と正義を掲げる権利者たち。小石を転がすように多くの人間を最も簡単に殺してきた。
それが彼女達の仕事であり、たったひとつの生きる道だったのだから、仕方がない事だと、死んだ奴は運が悪かったのだと大半の仲間は割り切っていた。
ある時、ナマエは偶然現場に居合わせた子供を殺してしまった。
…年端もいかぬ少女だった。薄汚れた服装とは裏腹に澄んだ瞳をした少女。真っ直ぐにナマエを見つめていた。…その眼の子供をナマエは撃ち殺したのだ。
当然、メローネを含む同僚達は仕方がない事だったと慰めもした。もっと気楽にやれよ、と声をかける仲間達にナマエは安堵していた。
しかし着実に、少女を殺した事実は彼女の心を蝕んでいった。彼女は、忘れる強さを。人の命を否定する傲慢さを、あの瞬間の弾丸と共に置いてきてしまったのだ。
…いつだっただろう、確かこんな晴れた日だった気がする。メローネが中々自室から出てこないナマエを不審に思い、部屋を訪ねた時にはナマエの眼は、曇り陰を落としていた。
現在ナマエは休養中扱いとなっているが、もはや前線に立つミュスカを期待するものは居ないだろう。
「ああ、そうだ。ほらこれ、林檎。マーケットのオヤジからおまけしてもらったんだ。剥いてやるから一緒に食べようぜ」
片手で林檎を掲げるメローネ。そして果物ナイフを手に取ると器用に皮を剥き始めた。
その間も、メローネは根気強くミュスカに話しかける。
プロシュートが女に間違われてナンパしてきた男の顔面をぶん殴っただとか、ペッシの育てているサボテンが日に日にデカくなってるだとか、そんな他愛のない話を続ける。それがメローネの日課であった。
「でさあ、ホルマジオの元カノが家まで乗り込んできて、ここで死んでやるって包丁振り回して大変だったらしいぜ。笑えるだろ?
まあ元カノ始末して事は終わったんだけどさ。良い母体になりそうな女だったのに勿体ないな」
一通り話を終えると、メローネはふう、とため息をつき
「ああ、そろそろアンタの声も聴きたくなってきた。いつもの歌、聴かせてくれよ」
メローネの言葉に答えるように、ナマエは辿々しく歌い出す。この偶然の重なりがメローネが安らげる唯一の瞬間だった。
『…しゃぼんだまとんだ、やねまでとんだ。やねまでとんで……………。………。』
「そうそうそれ。アンタの故郷の民謡か?俺も好きだぜ。ナマエの好きなモノならなんだって好きだ。…なあ、そっから先はなんて歌詞なんだ?いつか…いつかナマエの口から知りたいな…」
林檎を剥く手が止まる。今は無理でもいつかは。そんな幻想を抱く自分に嫌気が差していた。
『………メローネさん』
ぽつりとナマエがこぼした言葉をメローネは聴き逃さなかった。随分と久しぶりに彼女の本当の声を聴いた気がする。
「……!!なんだ?ナマエ…!?何か欲しいものでもあるのか?」
ガタリと揺れる椅子。メローネは立ち上がり、ナマエの手を握った。暖かくて小さな手だ。あの時から何も変わらない。彼女は何も変わってないんだ。安心感からか、メローネの顔が綻ぶ。
『私を殺してください』
「は………」
「な、なんで、そんなこと……」
メローネの笑みが、ぎこちない笑顔に変わる。
『わたしを、ころして』
そう噛み締めるように紡がれる言葉。
うっそりと微笑む姿には、いつもの虚の目はどこにもなく、ナマエはメローネを真っ直ぐ見据えていた。
メローネは彼女の言葉に、微笑みに狼狽え思わず後退りしてしまった。よろよろとナマエから距離を取る。
その瞬間、後ろに下がった拍子にカランと乾いた音を立てて、サイドテーブルに置かれていた果物ナイフが落ちた。
メローネは恐る恐るナイフを手に取り、刃をナマエに向けるが直ぐにはっと我にかえる。咄嗟にナイフを投げ捨てメローネはナマエを抱きしめた。
「ッ……!出来るわけがないだろ!アンタを手にかけるなんて……!」
本当は、メローネ自身も解っていた。いつかこの生活にも限界が来ることを。いつか見なければいけない現実から目を背けていたのだ。ずっと、こんな姿のナマエと一緒には居られない。もし、俺が何処かでヘマをして死んだら彼女はどうなる?もし、彼女が一生このままで俺の気が狂ったらどうなる?
そんな不安が風船のように膨らんで、今にも破裂しそうになる。どこかで終止符を打たなければならない。
…きっと、それが今なんだろう。
「う、あ……」
それでも、自分の手で愛する者を殺すことなんて出来なかった。
「無理だ……俺には出来ない…アンタの居ない世界も。アンタがこんな風になっちまってまで生きてる世界も。俺にとっては地獄だよ……
なあどうすれば良い…?どうやったらこんな最低な悪夢が終わるんだよ……」
握った手の隙間に涙が流れ落ちる。
晴天だった雲間はいつのまにか雨粒が窓を濡らしていた。
泣きじゃくるメローネを他所に、ナマエはぼんやりと窓辺に目をやり、歌う。
__しゃぼんだまとんだ、やねまでとんだ。やねまでとんで…………__
虚な目をした彼女は、ベットに上半身だけを起こし委ねて何も喋らない。窓辺をぼうっと眺める瞳には一片の光も映ってはいなかった。
やがて、無音の空間を切り裂くように「ただいま」と軽やかな口ぶりで青年が顔を覗かせた。
_メローネ。彼女の元同僚であり、恋人である
「やあ、ナマエ。調子はどう?今日は晴れていて
ディ・モールト気分が良いぞ。ナマエも1日、日向ぼっこでもしてたのかな」
ギギ、と音を立てて年季の入った椅子に腰掛ける。
『…………』
ナマエと呼ばれた女性はメローネに一瞥もくれず、黙っている。ナマエの心はある日を境に枯れ果ててしまった。
…きっかけは些細なことだったのかもしれない。
ナマエ達の仕事は殺人を専門としていた。いわゆるギャングと呼ばれる集団の中の、暗殺チームに所属していた。
時には痩せた腕のか弱い老人。時には麻薬を売り捌き人の道を外れた子供。そしてギャングの撲滅と正義を掲げる権利者たち。小石を転がすように多くの人間を最も簡単に殺してきた。
それが彼女達の仕事であり、たったひとつの生きる道だったのだから、仕方がない事だと、死んだ奴は運が悪かったのだと大半の仲間は割り切っていた。
ある時、ナマエは偶然現場に居合わせた子供を殺してしまった。
…年端もいかぬ少女だった。薄汚れた服装とは裏腹に澄んだ瞳をした少女。真っ直ぐにナマエを見つめていた。…その眼の子供をナマエは撃ち殺したのだ。
当然、メローネを含む同僚達は仕方がない事だったと慰めもした。もっと気楽にやれよ、と声をかける仲間達にナマエは安堵していた。
しかし着実に、少女を殺した事実は彼女の心を蝕んでいった。彼女は、忘れる強さを。人の命を否定する傲慢さを、あの瞬間の弾丸と共に置いてきてしまったのだ。
…いつだっただろう、確かこんな晴れた日だった気がする。メローネが中々自室から出てこないナマエを不審に思い、部屋を訪ねた時にはナマエの眼は、曇り陰を落としていた。
現在ナマエは休養中扱いとなっているが、もはや前線に立つミュスカを期待するものは居ないだろう。
「ああ、そうだ。ほらこれ、林檎。マーケットのオヤジからおまけしてもらったんだ。剥いてやるから一緒に食べようぜ」
片手で林檎を掲げるメローネ。そして果物ナイフを手に取ると器用に皮を剥き始めた。
その間も、メローネは根気強くミュスカに話しかける。
プロシュートが女に間違われてナンパしてきた男の顔面をぶん殴っただとか、ペッシの育てているサボテンが日に日にデカくなってるだとか、そんな他愛のない話を続ける。それがメローネの日課であった。
「でさあ、ホルマジオの元カノが家まで乗り込んできて、ここで死んでやるって包丁振り回して大変だったらしいぜ。笑えるだろ?
まあ元カノ始末して事は終わったんだけどさ。良い母体になりそうな女だったのに勿体ないな」
一通り話を終えると、メローネはふう、とため息をつき
「ああ、そろそろアンタの声も聴きたくなってきた。いつもの歌、聴かせてくれよ」
メローネの言葉に答えるように、ナマエは辿々しく歌い出す。この偶然の重なりがメローネが安らげる唯一の瞬間だった。
『…しゃぼんだまとんだ、やねまでとんだ。やねまでとんで……………。………。』
「そうそうそれ。アンタの故郷の民謡か?俺も好きだぜ。ナマエの好きなモノならなんだって好きだ。…なあ、そっから先はなんて歌詞なんだ?いつか…いつかナマエの口から知りたいな…」
林檎を剥く手が止まる。今は無理でもいつかは。そんな幻想を抱く自分に嫌気が差していた。
『………メローネさん』
ぽつりとナマエがこぼした言葉をメローネは聴き逃さなかった。随分と久しぶりに彼女の本当の声を聴いた気がする。
「……!!なんだ?ナマエ…!?何か欲しいものでもあるのか?」
ガタリと揺れる椅子。メローネは立ち上がり、ナマエの手を握った。暖かくて小さな手だ。あの時から何も変わらない。彼女は何も変わってないんだ。安心感からか、メローネの顔が綻ぶ。
『私を殺してください』
「は………」
「な、なんで、そんなこと……」
メローネの笑みが、ぎこちない笑顔に変わる。
『わたしを、ころして』
そう噛み締めるように紡がれる言葉。
うっそりと微笑む姿には、いつもの虚の目はどこにもなく、ナマエはメローネを真っ直ぐ見据えていた。
メローネは彼女の言葉に、微笑みに狼狽え思わず後退りしてしまった。よろよろとナマエから距離を取る。
その瞬間、後ろに下がった拍子にカランと乾いた音を立てて、サイドテーブルに置かれていた果物ナイフが落ちた。
メローネは恐る恐るナイフを手に取り、刃をナマエに向けるが直ぐにはっと我にかえる。咄嗟にナイフを投げ捨てメローネはナマエを抱きしめた。
「ッ……!出来るわけがないだろ!アンタを手にかけるなんて……!」
本当は、メローネ自身も解っていた。いつかこの生活にも限界が来ることを。いつか見なければいけない現実から目を背けていたのだ。ずっと、こんな姿のナマエと一緒には居られない。もし、俺が何処かでヘマをして死んだら彼女はどうなる?もし、彼女が一生このままで俺の気が狂ったらどうなる?
そんな不安が風船のように膨らんで、今にも破裂しそうになる。どこかで終止符を打たなければならない。
…きっと、それが今なんだろう。
「う、あ……」
それでも、自分の手で愛する者を殺すことなんて出来なかった。
「無理だ……俺には出来ない…アンタの居ない世界も。アンタがこんな風になっちまってまで生きてる世界も。俺にとっては地獄だよ……
なあどうすれば良い…?どうやったらこんな最低な悪夢が終わるんだよ……」
握った手の隙間に涙が流れ落ちる。
晴天だった雲間はいつのまにか雨粒が窓を濡らしていた。
泣きじゃくるメローネを他所に、ナマエはぼんやりと窓辺に目をやり、歌う。
__しゃぼんだまとんだ、やねまでとんだ。やねまでとんで…………__
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