一章
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「まさか真っ先にされることが、家出とは」
ぐったりと横になる名前に向けて、碧霞玄君はころころと笑った。
それは初めて会った時のような威圧的な厳しさも皮肉さもなく、変わり種の幼子のいたずらを褒めたたえるような軽やかさがあった。
名前が女仙達に囲まれ、室に到着したのは昼を迎える少し前。初めそうされたように足を湯で綺麗に浄め、着るものを取り換えた。
甘い果実がいくらか運ばれて来たのと碧霞玄君が入って来たのとは同じ時だった。
「ほんに、豪胆な麒であらしゃる」
麒だから、大胆な行動に出れたわけじゃない。そう反抗しかけて、やめた。そうする気力の湧かぬほど疲れていた。何か言うことを考えるのも、ひどく億劫であった。
心配した、黄海は危険であるから、容易に出向いてはならない。黄海へはいずれ
などというお小言とお説教を賜って、不承不承頷くと布団に身を伏せた。
「しばらく休まれるべきであろうの。先ほど連絡があり、明日にはエンキも参られるとのこと。エンはソウに次いで長い治世の国、そのタイホとあらば、十二麒麟の長兄とも呼んでよいお方。」
「エンキ・・・エンの麒麟、エン麒。」
十二麒麟の、長兄。
麒麟は多くが金の髪をしていると聞いたから、その人も金髪なのだろうか。
何となく長身に金の長髪の青年を想像し、溜息を吐いた。
その人に会ったからと言って、何がどう変わるのだろう?
それでも、こちらでのそなたの兄と思えばいい、そう言われれば会ってみたい気がしないわけではなかった。
こちらのことが何一つ分からない、そもそも麒麟がなんたるものなのかも分からない名前にとって、それは何かの好機になりやしないかと、自身でもそう期待したのだ。
「楽しみに、お待ちしております。」
せめて、私が「分からない」と答えても、嫌な顔をしない人ならいい。そんな思いを胸に、名前はやがて眠りについた。
母が幼子にしてくれるように、朱狼がずっと傍について、名前の腕を撫でてくれていた。
次の日の朝はいつもより早く起きて身支度をした。それというのも、兄麒が午前中には着くだろうということで、朱狼に起こされたからだ。
一応の報告の後、それまで眠られますかと聞かれたが、起きる、と答えて身を起こした。
一昨晩の家出のせいか、身体に良いものをと並べられた滋養にも消化にもよさそうな朝食を終えると、鳥酉に呼ばれて着衣を正式なものに整える。
「予定では、エンタイホがいらっしゃるということでしたが。」
「違うの?来れなくなったんですか?」
「いえ、エンタイホに加え、ケイタイホがいらっしゃるとのことです。タイタイホが、ご公務のため来れなくなり代わりにとエンタイホがお呼びしたそうです。」
麒麟の長男は他国の麒麟を動かすほどの権力者なのか。名前は鳥酉の苦笑を見て、思わず顔をしかめた。
そう心配されることはありませんよ、と否定されると、そうだといいけれど、とまた俯いてしまう。
昨晩はそれなりに楽しみだったのだが、ただでさえ麒麟という自分の立場に自信がないのに十二国の中でも長い治世を支えた麒麟のお出ましとあって、今は僅かに不安が混ざる。
「そんな顔なさいますな。また飛び出して行かれるのではないかと鳥酉は戦々恐々しておりまする。」
鳥酉がおどけて、けれど僅かではあるが本当に不安があるようで、顔を曇らせて言った。
「ご不満がおありなら、わたくしでよければ聞きますのに。峯麒は女仙につれなすぎます。ようやく蓬山公のお世話が出来るというのにこれではあまりに寂しいと、皆も申しておりましたよ。」
謝ることも頷くこともできず、髪を結ってほしいです、と世話を請うと、鳥酉は心得たとばかりに手早く名前の髪を結い上げた。
きつく結いあげたのだから、くれぐれも転変しないようにと念を押されながら室を出る。言われずとも、転変などできやしない。
待っていたとばかり、年少の女仙が駆け寄って微笑んだ。
「エンタイホ、ケイタイホがお待ちです。」
頬が軋むのを感じた。同時に、鳥酉と朱狼が苦笑するのも、気配で知って顔をしかめた。
人ごとだと思って!
途中何度か、お茶をご用意した方がいいんじゃないかしらとか、もっと動きやすい格好の方がよくないかしらなどと、言い訳じみた時間稼ぎを言っては却下されつつ、客人用の室にすごすごと向かう。
戸口の手前で朱狼は傍を離れた。
女怪は本来人前に出るものではないのだという。それが心細かった。
扉のない、外に開いた大きな窓のあるほとんど露台のような部屋へ通されて、金の髪をした少年と青年がこちらを向くのと同時に、竦んだ。
少年は窓に行儀悪く腰掛け、こちらを見てニッ、と笑う。青年も窓の傍の椅子に腰かけ、不機嫌そうに表情を固めていた。
青年がエンタイホ、少年がケイタイホだろうか?
「お前、家出したんだって、やるなあ。でも黄海はやめておけよ、使令もないのに。」
少年が窓枠から降りて、軽やかに寄ってくる。
明るく強い金の髪は、彼の性格を表しているのか、軽快そうな髪質をしている。
「あの。」
丁寧な言葉を使わなくてはならない、と、思う。
けれど目の前の少年があまりに気安いから、「タイホ」という偉い立場を忘れそうになってしまう。
こんな子供も麒麟なのか。彼も王を選んだのか。
「はじめまして。」
遠慮がちに喉から出たのは、場違いではないものの当り障りない言葉だった。
「おう、はじめまして。おれは、六太な。」
「ろくた。」
子供らしい愛らしい名前だと、思わず頬がゆるむ。ろくた、その響きは、なんだか安心する。彼の口調の賜物だろうか。
「エンタイホ。」
同じく立ち上がった青年が、厳しい声で言った。こちらは薄い金髪をしていて、顔色もろくたより白い。
「そのような物言いをされては。」
「エンタイホ?」
思わず青年の言葉を遮って、名前は首を傾げる。
視線を合わせるには少し目線を落とさなくてはならない背丈の少年を、その言葉とともに見つめる。
「ケイタイホは?」
「わたくしですが。」
あれっ、と口元に手を寄せた。少年と青年を交互に見やる。
六太は特に気にした様子もなく、青年の方を振り返った。
「怖がらせるなよ、ケイキ。」
「わたくしは何も。」
「峯麒は蓬莱から来たばかりなんだ、お前、タイキには優しくできたんだから、峯麒にも優しくしてやれよ。」
タイキ、という言葉に、能面めいた無表情の青年は僅かにうろたえる。
「タイキは。」
「子供だったとか、関係ないからな。こっちのこと分かんないのは一緒なんだから。それにしても、ほんっとに、完全に麟だよなあ、何がどうなったっていうんだか。まあ、とりあえず座れな。」
話題が自分に振り戻されて、名前は思わず固唾を呑み込んだ。
「こっちのはケイキな、慶東国の麒麟、
景麒が僅かに会釈するのに合わせて、名前も頷いた。
「本当は戴の、
「胎果慣れ?」
「慶は王が胎果なんだ、それも女王。見た目の年頃は峯麒よりいくらか下かな。それに景麒は泰麒が蓬山公だった頃、交流があった。」
はじめこそ二人の年齢と関係に面喰って、思わずしげしげと観察していたのだが、そうしているとようやく合点がいった。
十二国の麒の中で最も長い、雁の麒麟、延麒。
最初は青年の方がそうなのかとも思ったが、実際言葉の端々から見える風格や余裕は少年の方が段違いで上だ。
もっとも、雰囲気や表情は完全に子供のそれなのだが。
一方青年の・・・慶国麒麟、景麒は、落ち着いて見えるのだが、先ほどから延麒の覇気に圧されがちだ。
何一つ言い返すことなく、特別な反論がなければその言動に大人しく従っているあたりに延麒への静かな敬意が見える。
その無表情さは年齢とは別の不器用さにも思えるが、延麒の持つ包容力を邪魔する様子はなかった。
「お前、名前は?」
「名前です。」
思わず声が喜色ばんだのが自分でも分かった。
名を聞かれることが、こんなに嬉しいのだと痛感する。
「名前、主君以外に呼ばれるのは嫌とかあるか?峯麒って呼んでもいいんだけど、ここでは何て呼ばれてる?峯麟、はまずいか。」
「ぜひ、呼んでください、名前で、名前って。」
「うん、じゃあ、そう呼ぶ。」
胸が、すとんと落ち着いたようだった。朱狼以外の、初対面の少年が自分を名で呼んでくれる、呼ぼうと言ってくれる。
こちらのことは分からないだろうと手を差し伸べ、教えようと笑ってくれる。
それだけで、地に足のついたような心地がした。
「驚いたろ?急にこんなとこ連れて来られて。」
「はい、とっても。」
素直にこんなことが言えるのはこちらに来て初めてだった。
半ば憤りながら、帰りたいと主張しながら言うのとは違って、どこか自分自身穏やかに、ああ、そうだ、とても驚いたのだと受け入れられる。
だよなあ、と言いながら、延麒六太は溜息を吐いた。
「俺が申し訳ないなんて言うのも、変だと思うけどさ。」
「私、帰れないんですか?」
「聞いた、帰りたいって言ってるんだってな。」
「帰りたいと言っている、というより、私がいるべきなのはここじゃないと思うんです。私にはここにいるべき理由がない、帰りたいのではなく帰るべきなんです。」
単なる我が儘で、駄々をこねて帰還を強請っているとは思われたくなかった。
そもそも突然日常から切り離されて連れて来られたわけで、それを元に戻したいと望んでいるだけなのだ。帰りたいというより、ここにいる理由がない、この場所を望んでいない。ただそれだけのこと。
しかし六太も景麒も難しい顔をして、暖かい日差しで頬を照らした。
「王を選定し、サイホとして国を支えること。理由を言うなら、それが理由だ・・・けど多分それじゃ納得しないんだろうな。」
「私は麒麟じゃありません。」
青年の女が少年の男に強情を張る姿は、はたから見れば滑稽だろうか。
六太は真剣な物腰のまま、頑として首を縦には振らない。
「麒麟には麒麟の気配が分かるんだ。麒麟である俺や景麒から言わせればお前は麒麟だ。」
「私には分かりません、六太達が麒麟であるということが。人にしか見えない。」
「それは恐らくお前がまだ麒麟としての本性に目覚めてないからだろう。本来ならこんなにも長く帰還しない麒麟はないんだ。俺も、もとは蓬莱で生まれたけど、戻ったのは子供の頃だった。胎果とはいえ、普通はそんなもんなんだ。」
十五歳以上には絶対見えない六太が「子供の頃」だなんていうと不思議な感がする。けれど、彼が既に五百年を越える長い国を支えていることは聞いている。
峯麒は戻ってくるのが遅すぎたのか?そんな囁きはあちこちでされていた。
それが、麒麟の本性の欠損という意味に繋がることはどこかで気づいていた。
「私は既に麒麟ではないということですか?」
「いや、麒麟であることには違いない、けど眠ってしまったのかもしれない。人として生きている間に、麒麟として生きることを押し殺したんだろうな。麒麟は人の群れの中で生きるにはあまりにも異端だ。麒麟の心のまま生きるには人の世はあまりに残酷すぎる。」
思わず呼吸にも言葉にも詰まって、黙りこんだ。
どうしても群れに混ざることのできなかった、馴染もうとした努力も片端から排除された記憶は苦く、迫害の痛みは離れない。
「見たところ眠っているだけで、穢れに病んだ様子はありません。怨念や瘴気のようなものは感じるが、元凶から離れていれば自然と浄化される程度に峯麒の麒としての光はお強い。何より泰麒の例がある。多くの穢れや不浄を背負われた泰麒でさえその本性は麒麟であり続けた。角を失っていないのであれば、麒の本質を失うはずがない。」
穢れだの怨念だの瘴気だの景麒の言う言葉はあまりに非日常的で名前には馴染みがない。
それに気付いたのか、景麒も名前をまっすぐ見返し、噛み砕くようにしながら言い直した。
「麒麟の本質とは、眠ってしまった程度で失われるほど浅いものではない、ということです。」
麒麟の本質を取り返したいとは思わなかったが、麒麟であるから人の群れから弾き出されたのかもしれないという仮説は、妙にしっくりと胸に収まった。
異端だとは思わなかったか、彼らに言われるまでもなく、自分自身で、彼らと己の違いを痛感していなかったか。
必死になって潜り込もうとした群れに、己とは異なる色、質を感じていなかったか。
そして自然と、自ら諦めてはいなかったか、あちらの世界のほとんどすべてに対して。
そう、諦めたのだ、だから何度も旅に出た、何かを求めて。
それがここだというのか?麒麟としての使命だというのか?
己の本能は、この世界を切望していたのだろうか?
でも、と、心が続けて叫ぶ。
家族がいる、友とは呼べないかもしれないが、それでも関わり合った知故がいる。
夢がある、生活がある、あちらには自分のものになるはずだった人生がある。
過去の全てを断ち切って、こちらの世界を当然と受け入れて、新たな己に身を委ねる勇気は湧かなかった。
かといって、自分の本能が長年求めていたものがあるかもしれない、という期待は、こちらの世界をそのまま丸ごと切り捨てることも躊躇わせた。
「私、麒として生まれたというんです、なのに蓬莱では女として生きてきたし、今だってそうです、姿も胎殻のまま。それに、転変・・・獣の姿を、知らないし、持っていない、それでも麒麟だと言えるんでしょうか。」
「転変は、追々覚えられるでしょう。あなたが麒麟だという事実はたしかなことです。麒麟である以上、いずれはその身で知ることとなられる。それまで、麒麟とは何か、その使命について学ばれるがよろしい。」
たしかにお前は人ではないのだ、と言われても、眼の前にいる二人・・・どう見ても人の姿をした仁の獣に言われるのなら、それも悪くはなかった。
そういうものなのだ、という妙な達観が生まれ、あやふやながらも頷くことができた。
私は、人ではなかった。麒麟だったのだ。この世界に使命があって、それが何なのか、まだ言葉でしか知らないし、実感も湧かない。
正直帰りたいかと問われればすぐにでも帰りたいが、この世界には自分が望み続けた何かがあるのかもしれない。
ならば、それをたしかめてからでも遅くはないかもしれない。
ふわふわと落ち着かなかった心がすとんと固まって、溜息を吐くと共に全身に染み込んでゆく。
「芳の、王を、選ぶ。」
「そうです、それがあなたに課せられた天命。」
「固く考えることはないさ、会ってみれば分かる。」
「お二人にも、王がいらっしゃるのですよね。」
景麒には景王、延麒には延王。
女仙から聞いた話によれば、二人とも胎果で、景王は心から民を想う強く優しい女王、延王は大層な辣腕家で様々な改革を行った名君。
「お会いしてみたいな。」
「お国にお下りになれば、お目通りすることもあるやもしれません。芳と慶では距離がありますが、慶には先代の芳国公主が女史を務めております。」
「こっちも、ショウリュウは放浪癖があるから会うことがあるかもしれないな。あいつが芳に行くことがあったら、とっ捕まえて送り返してくれよ。」
その気安さに、やはり少し笑った。
どんな王様なんだろう、この仏頂面の景麒が仕える王なら、やはり同じように生真面目なのだろうか。
聞いた噂では穏やかで凛とした女王だというから、景麒を窘められる程に明るい人かもしれない。
六太が仕える人は?放浪癖があるなんて、五百年も続いた王というのはなかなか面白そうだ。
「帰りたいのは、分かる。けど、もう少しだけこちらにいてみないか。向こうのこともあるかもしれないけど、お前にとって、お前に与えられた天命というのは、帰りたいからと帰せるほど軽いものじゃないんだ。傲慢に聞こえるかもしれないけど。」
「・・・六太がそう言うのなら。」
六太が言うのなら、従ってもいいと思えた。
この世界で、名前の言葉に耳を傾けてくれるのは朱狼だけじゃない。
麒麟であるという存在を知った上で、麒麟ではない自分をも受け入れてくれる人がいる。理解を示してくれる人、理解しようと試みてくれる人がいる。
六太は優しい。仁の獣というだけの眩しいほどの感受がそこにある。それはあちらの世界にもなかったものだ。
世界の違いという境界線で六太という存在を失うのはつらかった。
「そっか。」
よかった、と六太はニッカリ笑った。
自分の名を出されて照れたのか、頬は赤く後頭部で両手を組む。
「六太に会いに行ってもいい?雁はどこにある国なんですか?私雁に行きたい。」
「蓬山公が蓬山をお離れになるおつもりか?」
景麒が咎めるようなきつい声で口を挟んだ。厳しく叱りつける口調に、名前はびくりと肩を揺らす。
「だめなんですか?」
「あまりいじめるなよ、景麒。せっかくこちらにいる気になったのに、景麒がいじめるからって蓬莱に帰ったら、お前、芳国中の民に恨まれるぞ。あのな、名前、一応名前は峯麒で、今はこの山の主だ。やることは山ほどあるし、身の安全も確保してなきゃいけない。お前、まだ使令もいないだろ?そんな麒麟を蓬山から出して何かあったらただ事じゃ済まないんだ。どうしても寂しくなったら、呼んでくれれば、俺、飛んでくる。」
「はい。」
「雁は東、慶の北にある国だ。芳とは遠いから、国に下ったとして俺とちょくちょく会えるかって言うとそうもいかないかもしれない。けど俺はいつでもお前に会いたいし、そう言ってくれたら出来る限りのことはする。この世界で、お前の味方がいないなんて思わなくていい。泰麒がな、前に言ってたんだ。俺達麒麟は同じ捨身木に生まれたから、世界にたった十二しかいないんかもしれないけど、十二も兄弟がいるのと同じだ、って。お前の帰還だって、俺達全力で手伝ったんだ、事態が遅くならないように。」
それぞれの国が抱える問題を分かち合えるわけでない。
この世界の理は、一国の重責を確実に一人の王と麒麟に負わせる。
けれど、世界には同じ境遇の兄弟がいる。
泰麒帰還の際、各国が景王陽子の呼びかけに応じたように、決して無関心なわけでも、非情なわけでもない。
今にして思えば、陽子の成した前例は少しずつではあるが十二国に新たな風を吹き込んでいる。
陽子がいてよかった。泰麒帰還を成し遂げてよかった。名前がそれらに助けられる日が来るかもしれない。六太はそう祈る。
「分からないことがあったら、何でも聞けよ。俺でよければ手伝うから。」
「はい。」
麒麟であっても構わないかもしれない。
麒麟であってもなくても、私を私だと思ってくれる人がいるのなら。
六太の笑顔に、そう思えた。