「いいか歌音、無理をせずに無茶するんだぞ」

「ビルス様ぁ、言ってる事よくわかんねぇぞ」

「お前はいいんだよ！」

「はは、頑張ってみます」

第2試合出場者である歌音は先程勝利したブウの褒美であるお菓子を1つ貰って食べている。気が紛れると考えたのかもしれないが、顔の表情から察するに効果はあまりなかったようだ。
武舞台では黄色い狼、ラベンダが歌音を待ち受けていた。

「歌音！吐くなよ！」

「さ、さんきゅー悟空...」

「開始！」の合図がかかり組手のように闘いが始まった。しかし体調の悪さが影響しているのか歌音は受け身が多い。

「フハハハ！次こそはやってしまえラベンダ！」

ラベンダは歌音が電撃を放とうと構えた手に飛び乗り、そのまま顔に向かって紫の煙を吹いた。よろめいた彼女が顔を覆うと同時に第9の界王神はガッツポーズを決める。
どうやら相手は毒使いらしく、真っ先に視界を封じられたようだ。

「っーーー！」

「ケッヒヒ！おらよ！！」

激痛で目が見えなくなった歌音に容赦なく攻撃が繰り出される。
ラベンダを探そうと生体反応を探るが、気分の悪さが増すし周りが強すぎて感知出来ない。歌音は再び吐き気もやってきていてかなり焦りを感じていた。

「うぐっ」

「オレの毒はうまいか？喰らいすぎると体が腐っちまうけどなァ！」

「ハーハッハッハッ！小娘はさっさと辞退した方がいいんじゃないのかー！？」

野次を飛ばす第9の界王神ロウをビルスが睨みつける。
第7の界王神が仙豆を使おうと提案するが、歌音はそれを拒否した。そもそも受け取ることが困難だろうし、ラベンダが妨害してくることが考えられたからだろう。
真っ暗な視界で比較的冷静に思案できたようだった。それに対し界王神は不安の声を上げるが、それと反対に悟空はそれでもあの特殊能力と応用力でどうにかなると考えている。それはビルスなども同じことだった。

棒立ちの歌音に後ろからラベンダが飛び蹴りを食らわす。が、歌音はそれを腕で受け止めた。ラベンダは狼狽える。

「何ィ？」

「うっ、ぉぇ」

気分は最悪だが、生体反応に集中する事で神の中に埋もれるラベンダを見つけたのだ。しかし本当に吐いてしまうので長時間はできないし、近い所限定である。

これ1回吐いた方が楽になるんじゃ...。

歌音は次々と攻撃を受け止める際にそんな事を考える。全く汚ならしい。
またもや込み上げてくる吐き気を飲み込んだ。
電撃を喰らわせられたラベンダが倒れると第7からは歓声が起こり、悟空やビルスはよくやったな顔で仁王立ちしている。


「ロウ様、あの女は目を潰された事によって他の器官が研ぎ澄まされているんです。あれはただ者じゃねぇ...」

「なんだと！？そんな事があってたまるか！」


感知の仕組みが分かったラベンダは、約10メートル離れた歌音の上空へやって来た。離れてしまうと神の反応に紛れてしまう。
上からの攻撃に耐えるしかなかった。