『愛と正義の味方、グレートｯサイヤマンッ！』

「悟飯さんちょーかっこいい！」

「だねだね！」

隣の席で目をキラキラ輝かせるトランクスがこっそりと耳打ちしてくる。今日は悟飯さんがアシスタントする映画『グレートサイヤマン』を見に来たのだ。
ビーデルさんによると、アクションシーンでもCGをほぼ使っていないので迫力満点らしく評判がとても凄いそう。
実際に鑑賞すると、サイヤ人のいきすぎた身体能力を抑えられていてちょうど良い。悟飯さん苦労しただろうなぁ...。
ちなみに何故トランクスと2人なのかというと、ブルマがめでたく懐妊したからなのだ。もう妊娠後期に入っているので、身体の負担を避けるために彼女には家でゆっくり過ごして貰っている。ピラフマイシュウやベジータがお世話や家事をしてくれるということで、久々に都の中心部へやってきたのだ。

特典のクリアファイルにはグレートサイヤマンがでかでかとプリントされている。裏側は後ろ姿だ。普段使ってるクリアファイルと入れ替えておこ。
携帯の電源を付けると、とある1件のメールが来ており、バナーに表示された文字が目に入った。

「え”っ」

「歌音姉ちゃん？」

はぁ... ....。
メールの差出人は第1宇宙のコッペリオン養成学校からだった。この時点でお察し可能だろう。せっかく気分が良かったのに、どん底に突き落とされてしまった。
内容は”第2回不定期開催集会 第1宇宙研究施設所兼養成学校会議室へ集まるように”だ。相変わらず簡潔すぎる。
本当に最悪である。何故かと言うと、明日は私の大好きなマサキくんが主演になった超大人気小説が映画化するからなのだ。見ようと思っていたのに...明日が初公開だから絶対行こうと思ってたのにィ！ありえないからぁ！
今だけ闇堕ち出来るくらい絶望しているので顔にも出ているのだろう。不思議に思ったトランクスが携帯を覗くと察したのか、「あちゃー、これじゃ暫く遊べないなぁ。姉ちゃんドンマイ」と背中をとんとん叩いてきた。それが心にキたので小さい体をぎゅっと抱き締め、肩に顔を埋めて肺いっぱいに息を吸い込む。ほんわりと子どもらしい匂いがした。

その後の買い物は一時的に楽しく過ごせた。
しかし現実を思い出した帰宅後は、ため息ばかり出てくる。トランクスから事情を聞いたブルマが慰めにきた。

「アンタが見たいっていってた映画、小説版なら電子書籍送るから」

違 う 、 そ う じ ゃ な い 。
悔やんでいても仕方ないので準備を始めよう。明日の朝出たいのだが、ここから1週間かかるのでそうおちおちしては居られない。移動中に寝ておいた方が良いだろうと言うことで今日中に出発する事になった。
食料などが入ったホイポイカプセルを受け取り、ブルマとトランクスとの別れのハグを存分に堪能する。もしかしたら帰っている頃にはベイビーが産まれているのかもしれないのだ。
ピラフマイシュウに全てを任せて、荷物を宇宙船に運ぶ。幸い宇宙船の中は荒れておらず燃料もあと3往復分くらいはあるとパパさんが言っていた。
寂しかったらブルマ邸の大きなモニターで電話すれば良いのだ。
深夜になる前に、遠慮されていたベジータともハグをして出発した。


☆☆☆


『うわぁぁん、地球帰りたいよぉー！』

「何言ってんの、まだ出発して2時間くらいしか経ってないわよ」

「パパ、この調子で1週間耐えれんのかな」

「3日と持たずに孤独死するかもな」

「ﾋｪｯ」

『そんな事言わないでぇ！』