『おい、おとなしくしろ！』

詩音『いやだ！行きたくない！あねき助けて！！』

『妹をはなせ！』バリバリ

『ぐわッ』

『オラッ！』

ガンッ
『っ...！』

三教授の手下に固い物で頭を殴られた。ぐわんぐわんと意識が朦朧とする中、暴れる詩音が実験室に連れていかれる。

☆☆☆

「はぁっはぁっ」

目をぐわりと開ける。心音がこれまでに無いくらい早い。夢だと自分に言い聞かせて、激しく脈打つ左胸を押さえる。トラウマとなった過去を、たまに夢で見る時があった。私は三教授の手下から妹を守れた事が1度もなく、毎回傷だらけになって帰ってくる詩音に罪悪感で心が潰れそうになっていた。その時1回だけリストカットをして感情を抑えた事がある。痕はうっすら残っている手首を、夢を見た時はいつも見ていた。そうすると落ち着くのだ。痕がかなり薄くなったのは詩音はもう実験をされていないということ、私は詩音を守れているのだと。
心臓が通常通りの拍を刻む頃には、荒ぶった感情も落ち着いた。

ﾌﾞｰﾌﾞｰﾌﾞｰﾌﾞｰ
《大気圏に突入します 衝撃にお備えください》

あ、またこのアナウンスだ。この荷物とだだっ広い空間でどう備えろと言うのか。生憎安全装備品はきちんと包装された箱から出していないし、それは部屋の隅っこにある。用意していなかった私が悪いのか。自動操縦に切り替えて操縦席の安全ベルトを締めた。ドドドドと凄まじい轟音を立てて着地していく。外を見ると、見覚えのある庭だった。窓から見えるプールと緑やレンガの地面、Capsule Corpoの文字がある建物。
ついに帰ってきたんだ！
外へ出ると、先程の轟音でブルマとトランクスが慌てて出てきている。


「歌音！おかえりなさい！」

「歌音ねえちゃん！やっと帰ってきたのか！」

ベジータも続けてやって来た。

「フン、やはりお前だったか。予定よりも随分早いじゃないか」

「ちょっと用事を思い出したんだよ」

「オレ凄い暇だったんだぜ！」

「ごめんねトランクス、これからいっぱい遊べるよ！」

「はぁ、本当に心配したわ。よく無事に帰って来れたわね、改めておかえりなさい」

「っ、ただいま！」

飛びついてきたトランクスに続いてブルマともハグをする。ベジータはそういう事はしないので笑顔でピースを向けた。