「うぅぅ〜、いてて」

身体に密着していた床がドシンと震えて、長い間寝転がっていた体勢を起こす。背中からぽきぽきと音がした。
ようやく目的地に着いたらしい。乗ってきた宇宙船から1歩外へ出てみると、ふわりと風が頬を撫でていく。その香りも景色も全てが感じたことの無いものだった。

本当に第7宇宙へ来たのか。


1週間の時を掛けて、私達は遥か遠い第1宇宙のある場所から送り出されている。そこはこの第7宇宙の地球と同じ惑星であり、生態系の頂点に人間が君臨している。また、どの宇宙の中でもトップレベルの高IQの持ち主である”三教授”という3人の科学者が設立した研究所付属の幼稚園、小中高一貫校があるのだ。

養成学校の資料と教頭の情報では、ここは私が元いた星よりも治安がよく、派遣された中で唯一人間がいる星らしい。
元の星と同じ人種だと言うことなので少し親近感が湧いてくるが、心配な面もある。何故かと言うと、私...いやコッペリオン達は人間が憎悪、嫌悪の対象であるからだ。個々によってその感情を抱いている理由は様々なのだが、共通しているのは私たちが生まれ持った特殊能力、また人体強度を確かめるために行われた『人体実験』だった。
余り詳しくは言いたくないし思い出したくもないが、大雑把に言うと流血打撲その他の刺激などで身体を検査するもの。悲しい事に第1宇宙に逃げ場はなく、元の星の人間達は私たちをよく思っていなかった故に救いの手を差し伸べてくれることはなかった。よってコッペリオンは皆人間が嫌いなのだ。まあその中でも“嫌い”の度合いはある。人間を忌み嫌う者もいれば、逆に人間に寄り添おうとする者もいる。私は三教授が大嫌いなだけで、他の人間に対してはあまり何とも思っていない。これはきっと大多数のコッペリオンが考えている事だと思う。
そんなおかしな環境の中で生まれたものは、私達コッペリオンは創り出された新人類であり人間とは別の生物であるという思想。コッペリオンの共通認識だ。

話を変えよう。
そもそも私達は宇宙の平和を守るという三教授達の夢を実現するために、それぞれの宇宙の比較的栄えている星に派遣されたのだ。

『わぁ、思ってたより綺麗なところだなぁ。...ぎゃあぁぁ！！！！』

謎の生物に吃驚してしまい、その生物から慌てて距離をとる。特に攻撃してくる様子もなかったので視界に入れないようにしよう。
眩しく照りつける太陽に手をかざす。元の星よりも眩しくて目に焼き付いた。

みんなが上手くやってるか心配になる。がしかし、各々の性格を思い出すと妙な納得をしてしまった。奴等は必ず上手くやるだろう。
目に見えない心配事よりもまずは自分をどうにかしないと。

『まずは自分の身の安全の確保！』

戦いとは無縁そうなほのぼのとしている空気を肺いっぱいに吸った。