ACT.4
名前変更
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「なんでそんな事すんだよ」
「1人1人、体を壊さない様に無理のない練習をしてもらうためです」
「ケッ!!勝手にしてろ…」
背中を向けて歩き出す人物に視線を移す。
「亜久津仁さん…昨日喧嘩でもしました?右腕が若干腫れてますね」
晴樹の言葉に亜久津は足を止める。
「打ち合いなどの練習であまり無理をなさらない方がいいですね。なんなら手当てしますよ?」
ニコリと笑う晴樹に亜久津は近づき、胸ぐらを掴んだ。
「テメェ…この俺の指図するつもりか」
「指図じゃないですよ、アドバイスです。それにこの出席は決して強制ではないので、面倒だと感じる方は俺の事無視して下さっていいですし」
そう言うと、亜久津はジッと晴樹を見た後、手を離した。
「合宿後に待ち構える大会、それに出る方も出ない方も関係ない、俺は皆さんに無理なく過ごして頂きたいだけなので」
ニコニコ笑う晴樹に亜久津はニィッと笑った。
「おい、お前。俺のメニューをとっとと決めな」
「!!…はい、わかりました」
不良全開の亜久津になにやら気に入ってもらえたようだ。
体調等色々聞いて、既に決められている練習項目1つ1つの限度を教えていく。
例えば、腕に怪我等がある場合、素振りを十回するところを半分の五回にした方がいいと助言する。
それを聞くのも聞かないのも自由、所詮助言だ。
助言を聞いた亜久津が去ると、人が近付いてくる。
「お前…結構度胸あるな。亜久津に凄まれて怯まないとはな」
フッと笑ったのはジャッカルだ。
「結構ビクビクしてましたよ」
「そうは見えなかったぜ」
笑うジャッカルに晴樹も笑った。
あの後、全員の出席をとった。
体を壊しては元も子もないと思ったのだろ。
無理はせず、だけどしっかりと練習はする。
メニューを次々とこなしている面々を見た後、コートを出る。
ドリンクとタオルの準備をするのだ。
マネージャー業をするのに必要な物が揃ったその建物に向う時、ふと気付いた。
(前田と太田が不在…)
コートに二人がいない、と言うことは…
ニッと笑うと建物の扉の前で止まった。
中には人の気配。
中には入らずに建物の正面から側面へ移動する。
そこにある窓から中の様子を伺う。
向き合う太田と前田。
太田は腕を組んで前田を睨んでいた。
『あんた、まさか青学にいたとはね…』
『……』
『しかも、またテニス部のマネージャーだなんてね。なに?目当ての男でもいるの?』
『そんなんじゃないです!!私は純粋に皆さんをサポートしたくて『ああ、あんたの事なんてどうでもいいわ』
太田は前田に近付くと、髪を掴んだ。
『格好いい人がいっぱい…愛は勿論、皆に愛されないとダメなの』
『っ…』
『だから、氷帝の時みたいに…協力してね?』
歪んだ笑みを浮かべた太田が前田の髪を離したのを見て直ぐに扉へ移動し中に入った。
驚いて此方を見た太田に、晴樹は微笑んだ。
「こんにちは、氷帝の…太田先輩、でしたよね?ハジメマシテ、高城晴樹です」
「こ、んにちは。氷帝のマネージャーの太田愛よ。愛って呼んでね」
瞬時に微笑みを浮かべ可愛い子ぶる太田にヘドが出そうになる。
それをグッと抑え、少し照れたように視線を反らせた。
(照れちゃって…とか思ってるんだろうな)
そう思いながら視線を戻して口を開く。
「あ、えと…ドリンク作りに来たんで、隣通りますね」
「ふふっ、通るのに一々報告しなくてもいいのに」
晴樹の態度が気に入ったのか、上機嫌で出ていった太田。
閉まる扉を睨み付けた後、前田に近寄った。
「大丈夫か」
「晴樹さん…はい、何とか」
「今日の午後、アイツらに呼び出されるかもしれないぞ」
アイツら…氷帝の馬鹿四人。
「太田が初日から動いた。アイツらが動いても不思議じゃない」
顔を青くする前田の頭を撫でる。
「一回は…耐えてくれ。そして、俺の視界の中にいろ」
背中を撫でてやると、震えが伝わってきた。
すまないと思うが、利用する事はやめられない。
アイツらから必ずテニスを奪ってやるためにも。
(さて…)
ドリンクを作りながら前田を見る。
「前田さん、青学の奴らとの関係は良好か?」
「はい、皆さんよくしてくださってます」
「裏切らないと言い切れるか?」
「………」
口篭る前田だったが、自分の腕を握った後、晴樹を見た。
「はっきりと裏切らない、とは言えません。けど、裏切るとも言えません」
「というと?」
「傍観に回る可能性が一番高いかな…と」
「何で?」
「あの…怪我見られてしまって、その…」
「苛められていたのが露呈した、前の学校で苛められていた話をした、その為一方的に皆が敵に回る可能性は低いかもしれない、ということか?」
頷く前田の頭にポンと手を置いた。
「とりあえずは、それでいい」
そう言って部屋を出た。
「皆さんお疲れ様です。30分休憩ですよ」
ドリンクとタオルを手にコートへ戻る。
集まってきた面々に渡すと、転がるボール等を回収しにいく。
(この後の練習は「うお!なんやこれ!!」
突然大声が聞こえて振り返る。
「めっちゃ美味しいやん~!!」
「確かに…これは美味しいですね」
「ありがとうございます」
大声を出したのは四天宝寺の遠山金太郎、それに続いて賞賛してくれたのは比嘉の木手永四郎。
嬉しくて素直に礼を言うと、金太郎が駆け寄ってくる。
「なあなあ、これ兄ちゃんが自分で作ったん?」
「うん、そうだよ。市販のドリンクの粉を使ってるけど、分量とかは俺が決めて作ってる」
「へー…あっ、ワイ四天宝寺の遠山金太郎言います、よろしゅう」
「よろしく」
にっこり笑った金太郎に笑うと腕を捕まれる。
「なぁなぁ、合宿終わったら四天宝寺にきてやー」
「え?」
「兄ちゃんにマネージャーして欲しいねん!!」
唐突すぎる勧誘に苦笑していると、金太郎の後ろから人が来る。
「こらこら金ちゃん、困らせたらあかんやろ」
そう言いながら彼は金太郎の頭を撫でる。
「すまんなあ、金ちゃんがワガママ言って。俺は四天宝寺の白石蔵ノ介や、よろしく」
「よろしくお願いします」
微笑む彼に微笑み返す。
「しかしまあ随分優秀なんやなあ、流石王者立海のマネージャーやわ」
「あははは…」
苦笑していると、ジッと此方を見る視線に気付いた。
視線は隣のコートからだった。
「すいません、失礼します」
白石と金太郎に笑い、その場を離れるとフェンスへ近付く。
「なに睨んでんだよ」
「睨んでねぇよ」
視線の犯人、切原はムッとしていた。
「どうしたんだよ」
「そっちのコートが羨ましくてな」
「なんで?可愛いマネージャーさんいるじゃん」
(一生懸命愛想振り撒いて、見苦しい奴)
切原は太田の担当するコートにいるのだ。
「可愛い以前に、仕事出来なさすぎ。アイツ本当にマネージャーなのかよ」
悪態を吐く切原の後ろに影が出来る。
「赤也、珍しく意見が合うな」
「柳先輩」
切原は隣に来た柳を見る。
「俺も本当にマネージャーなのか疑っていたところだ。データによれば1年前からマネージャーをしているみたいだが」
「1年前から!?それでこれっすか!?」
ありえねェ…と頭を抱える切原から太田へ視線を移す。
可愛い子ぶって、愛想振り撒いて、醜い奴。
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