ACT.3
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「高城晴樹はいるか」
昼休み、本当に柳が来た。
「俺ですが…?」
「高城、あの人が柳先輩だ」
切原が耳打ちをしてくる。
「あの人が…」
有名な三強の一人、柳蓮二。
頭で情報を確認し、彼の前に立つ。
「何かご用ですか?」
「休み時間に仁王達から聞いているのでは?」
フッと笑う柳に晴樹は眉を下げる。
「テニス部へのお誘い、でしたよね」
「そうだ」
「申し訳ないですが俺は…」
首を振る晴樹に柳は笑みを崩さない。
「と、言っているがどうする」
その言葉に様子を伺っていた切原は柳の背後を見て「ゲッ」と声を溢した。
「ふむ、断るのか」
「蓮二の見込んだ人物なら、是非入部して欲しいけどね」
背後にいたのは真田弦一郎と幸村精市だった。
(三強勢揃い…)
驚いて言葉を失っていると、幸村が一歩近付いてきた。
「断る理由を聞いてもいいかな?」
「断る理由…ですか?」
頷く幸村を見てギュッと右肩を掴む。
「テニスが…出来ないんです」
苦痛の表情を浮かべる晴樹に、三人は黙る。
不味い事を聞いてしまったと互いに目を合わしている三人から視線を反らすと、反対の肩をポンと叩かれた。
「テニスはもう嫌いなのか?」
後ろから聞こえた声に振り返ると、切原が此方をジッと見ていた。
「お前、もうテニスは嫌いなのかよ」
切原の言葉にゆっくりと首を振る。
「好きだ…大好きだ。出来るならしたい」
「なら、入部したらいいじゃねえかよ!」
切原はニッと笑う。
「テニスが出来ないのに入部しても…」
「誰が出来ないって決めたんだよ!」
「世界的にも有名な医者」
あちゃーっと切原は頭を抱えた。
「全く出来ないのか?」
「リハビリでここまで普通に動くようになりましたが、スポーツをするとなると別です」
「ふむ…」
真田は顎に手を当てる。
何もここまでしつこく勧誘する必要が無いことは解ってる。
しかし、幸村が引く気がないのが見てわかる。
自身も病気により動けなくなった体を必死にリハビリし、ここまで戻ってきた。
しかし、リハビリしても元の場所へ戻れない晴樹。
なにか思うことがあるのだろう。
「じゃあ…マネージャー業してみない?」
「マネージャー…?」
「そうそう。女子はマネージャーにしたくなくてね、男子でマネージャーしてくれる人を探してたんだ」
「高城はテニス経験もある。マネージャーをしてくれるなら随分と助かるだろう」
幸村の提案に柳が賛成する、その後ろで真田は名案だと頷いていた。
しかし、まだ悩む様子の晴樹の後ろで切原が声を上げた。
「部長!まずアレに参加してもらったらどうッスか?!」
「ああ…アレにねぇ…」
幸村は少し考えた後「そうだね」と笑った。
「実は今度色々な学校が集まって合同合宿があるんだ」
「合宿?」
「うん。そこで少しマネージャー業してみない?序でに言うと、俺らは最低1人はマネージャーを連れて来ないとダメなんだ」
幸村は晴樹の手を取る。
「君さえ良ければどうかな…?是非お願いしたいな」
幸村は微笑んだ。
晴樹は困った様に頬を掻いた後、手を握り返した。
「俺で…良ければ、マネージャー業します」
眉尻が下がった笑みを浮かべた晴樹の手を、幸村は力強く握り返した。
「ククッ…」
笑いが溢れる。
全て予定通り。
柳先輩の目につく様に振る舞い、勧誘されるのを待つ。
自信はあった。
長年静香の側にいた。
必然的に着く実力。
まさか三強が揃って来るとは思わなかったが、上手く怪我の芝居に騙され、同情を誘い、あの部長直々に誘われた。
(これで合宿に参加出来る)
参加するからには出来る限りの最大のサポートはする。
別に立海に恨みはない。
なんならこれ以上無いくらいの最高のコンディションで氷帝の連中を叩きのめしてくれるように頑張るくらいだ(そしてその後に追い討ちをかけたり)
なんにしろ、誘われなくてもどうにか合宿には潜り込むつもりだった。
合同合宿。
生半可なものではない。
青学・立海・六角・山吹・ルドルフ・不動峰・四天宝寺・比嘉、そして氷帝。
合宿の後に待ち構える全国大会に出る学校もあれば出ない学校もあるが、全て実力者揃いの学校だ。
そして、あの女は必ず来る。
私はお姫様、皆に愛されて当たり前の彼女は、必ず。
なんと嬉しい事に各校イケメン揃い。
そして少なからず可愛い部類には入るであろうアイツに惑わされるやつもいるだろう。
しかし、関係ない。
皆の前で、アイツの本性を晒し、序でにナイト気取りの四人も一生テニスが出来なくしてやる。
力業だけではダメだ、精神的にも追い詰める。
追い詰めて追い詰めて。
「破滅させてやる」
後日、早速幸村に呼び出された。
「合宿は一週間後。大体の仕事を簡単に覚えてもらうために今日から部活に来て欲しいんだけど大丈夫かな?」
「大丈夫です」
「それは良かった。ここに仕事内容が纏めてある。一度目を通しておくといい」
柳からノートを受け取り、パラパラと開く。
「さて、序でにレギュラーが揃ってる事だし、自己紹介でもしとこうか」
幸村と柳の後ろに立っていた面々に、視線を移し、名前を告げるために口を開いた。
放課後、イソイソとマネージャー業に励んでいた。
こうやって体を動かすのは嫌いじゃない。
タオルを洗いドリンクを作り、スコアを書き皆の様子に目をやる。
久しぶりにするマネージャー業が凄く楽しい。
(楽しんでる場合じゃないんだけどなあ…)
スコアを書きながら思い出す。
(日吉とか滝先輩、ちゃんとしてるかな…他の部員も元気かな…)
氷帝で仲が良かった人物達を。
元々は人懐っこい性格な為、仲の良かった彼等が気になるのだ。
「よっ!!」
ポンと肩を叩かれ振り返ると切原がいた。
「お疲れ様」
「サンキュー」
タオルとドリンクを渡すと、再びスコアに視線を落とす。
「なあ」
「ん?」
「なんか考えてたろ」
「ああ…昔の事とか、前の学校で仲良かった人を思い出していた」
切原はふーんと言うと、ドリンクを飲んで声を上げた。
「なんだこれ!?スッゲー美味い!!!」
「ありがと」
「え、晴樹が用意したんだよな?」
「そうだけど?」
切原は少し考え込んだ後、晴樹の肩を掴んだ。
「これからもマネージャーよろしく頼む」
真剣に言った切原に対し、返事はしなかった。
一週間は早いもので、合宿当日を迎えた。
バスに揺られ、着いた合宿場。
集まりつつあるバスを見て、晴樹はニィッと笑った。
END ACT.3
昼休み、本当に柳が来た。
「俺ですが…?」
「高城、あの人が柳先輩だ」
切原が耳打ちをしてくる。
「あの人が…」
有名な三強の一人、柳蓮二。
頭で情報を確認し、彼の前に立つ。
「何かご用ですか?」
「休み時間に仁王達から聞いているのでは?」
フッと笑う柳に晴樹は眉を下げる。
「テニス部へのお誘い、でしたよね」
「そうだ」
「申し訳ないですが俺は…」
首を振る晴樹に柳は笑みを崩さない。
「と、言っているがどうする」
その言葉に様子を伺っていた切原は柳の背後を見て「ゲッ」と声を溢した。
「ふむ、断るのか」
「蓮二の見込んだ人物なら、是非入部して欲しいけどね」
背後にいたのは真田弦一郎と幸村精市だった。
(三強勢揃い…)
驚いて言葉を失っていると、幸村が一歩近付いてきた。
「断る理由を聞いてもいいかな?」
「断る理由…ですか?」
頷く幸村を見てギュッと右肩を掴む。
「テニスが…出来ないんです」
苦痛の表情を浮かべる晴樹に、三人は黙る。
不味い事を聞いてしまったと互いに目を合わしている三人から視線を反らすと、反対の肩をポンと叩かれた。
「テニスはもう嫌いなのか?」
後ろから聞こえた声に振り返ると、切原が此方をジッと見ていた。
「お前、もうテニスは嫌いなのかよ」
切原の言葉にゆっくりと首を振る。
「好きだ…大好きだ。出来るならしたい」
「なら、入部したらいいじゃねえかよ!」
切原はニッと笑う。
「テニスが出来ないのに入部しても…」
「誰が出来ないって決めたんだよ!」
「世界的にも有名な医者」
あちゃーっと切原は頭を抱えた。
「全く出来ないのか?」
「リハビリでここまで普通に動くようになりましたが、スポーツをするとなると別です」
「ふむ…」
真田は顎に手を当てる。
何もここまでしつこく勧誘する必要が無いことは解ってる。
しかし、幸村が引く気がないのが見てわかる。
自身も病気により動けなくなった体を必死にリハビリし、ここまで戻ってきた。
しかし、リハビリしても元の場所へ戻れない晴樹。
なにか思うことがあるのだろう。
「じゃあ…マネージャー業してみない?」
「マネージャー…?」
「そうそう。女子はマネージャーにしたくなくてね、男子でマネージャーしてくれる人を探してたんだ」
「高城はテニス経験もある。マネージャーをしてくれるなら随分と助かるだろう」
幸村の提案に柳が賛成する、その後ろで真田は名案だと頷いていた。
しかし、まだ悩む様子の晴樹の後ろで切原が声を上げた。
「部長!まずアレに参加してもらったらどうッスか?!」
「ああ…アレにねぇ…」
幸村は少し考えた後「そうだね」と笑った。
「実は今度色々な学校が集まって合同合宿があるんだ」
「合宿?」
「うん。そこで少しマネージャー業してみない?序でに言うと、俺らは最低1人はマネージャーを連れて来ないとダメなんだ」
幸村は晴樹の手を取る。
「君さえ良ければどうかな…?是非お願いしたいな」
幸村は微笑んだ。
晴樹は困った様に頬を掻いた後、手を握り返した。
「俺で…良ければ、マネージャー業します」
眉尻が下がった笑みを浮かべた晴樹の手を、幸村は力強く握り返した。
「ククッ…」
笑いが溢れる。
全て予定通り。
柳先輩の目につく様に振る舞い、勧誘されるのを待つ。
自信はあった。
長年静香の側にいた。
必然的に着く実力。
まさか三強が揃って来るとは思わなかったが、上手く怪我の芝居に騙され、同情を誘い、あの部長直々に誘われた。
(これで合宿に参加出来る)
参加するからには出来る限りの最大のサポートはする。
別に立海に恨みはない。
なんならこれ以上無いくらいの最高のコンディションで氷帝の連中を叩きのめしてくれるように頑張るくらいだ(そしてその後に追い討ちをかけたり)
なんにしろ、誘われなくてもどうにか合宿には潜り込むつもりだった。
合同合宿。
生半可なものではない。
青学・立海・六角・山吹・ルドルフ・不動峰・四天宝寺・比嘉、そして氷帝。
合宿の後に待ち構える全国大会に出る学校もあれば出ない学校もあるが、全て実力者揃いの学校だ。
そして、あの女は必ず来る。
私はお姫様、皆に愛されて当たり前の彼女は、必ず。
なんと嬉しい事に各校イケメン揃い。
そして少なからず可愛い部類には入るであろうアイツに惑わされるやつもいるだろう。
しかし、関係ない。
皆の前で、アイツの本性を晒し、序でにナイト気取りの四人も一生テニスが出来なくしてやる。
力業だけではダメだ、精神的にも追い詰める。
追い詰めて追い詰めて。
「破滅させてやる」
後日、早速幸村に呼び出された。
「合宿は一週間後。大体の仕事を簡単に覚えてもらうために今日から部活に来て欲しいんだけど大丈夫かな?」
「大丈夫です」
「それは良かった。ここに仕事内容が纏めてある。一度目を通しておくといい」
柳からノートを受け取り、パラパラと開く。
「さて、序でにレギュラーが揃ってる事だし、自己紹介でもしとこうか」
幸村と柳の後ろに立っていた面々に、視線を移し、名前を告げるために口を開いた。
放課後、イソイソとマネージャー業に励んでいた。
こうやって体を動かすのは嫌いじゃない。
タオルを洗いドリンクを作り、スコアを書き皆の様子に目をやる。
久しぶりにするマネージャー業が凄く楽しい。
(楽しんでる場合じゃないんだけどなあ…)
スコアを書きながら思い出す。
(日吉とか滝先輩、ちゃんとしてるかな…他の部員も元気かな…)
氷帝で仲が良かった人物達を。
元々は人懐っこい性格な為、仲の良かった彼等が気になるのだ。
「よっ!!」
ポンと肩を叩かれ振り返ると切原がいた。
「お疲れ様」
「サンキュー」
タオルとドリンクを渡すと、再びスコアに視線を落とす。
「なあ」
「ん?」
「なんか考えてたろ」
「ああ…昔の事とか、前の学校で仲良かった人を思い出していた」
切原はふーんと言うと、ドリンクを飲んで声を上げた。
「なんだこれ!?スッゲー美味い!!!」
「ありがと」
「え、晴樹が用意したんだよな?」
「そうだけど?」
切原は少し考え込んだ後、晴樹の肩を掴んだ。
「これからもマネージャーよろしく頼む」
真剣に言った切原に対し、返事はしなかった。
一週間は早いもので、合宿当日を迎えた。
バスに揺られ、着いた合宿場。
集まりつつあるバスを見て、晴樹はニィッと笑った。
END ACT.3