ACT.1
名前変更
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「気を付けろよ」
「??」
「太田愛に…な」
日吉は苛ついた表情でドリンクを飲んだ。
「太田先輩?特に気をつける事はないんじゃ…?」
自分は何も知らない。
きょとんとした様子で言った晴樹に2人はとても心配になった。
レギュラーではない2人は、太田の事を解っているのだ。
何をしているか言おうかどうか悩んでいると、晴樹は頭を下げた。
「次、行きますね」
「ちょっと!!」
滝の制止も聞かず、晴樹は平部員達の方へ向かった。
「
少なくとも俺はな。
あっちこっち行き来した後、レギュラー陣の近くを何気なく通った。
「ん?」
「どうしたの?」
「いや、今日はドリンクの味が違うな~って」
「!?そ、そう?失敗しちゃったかな…」
「いや、美味いぜ?」
「少し…懐かしいですね」
宍戸と鳳の言葉にあははは…と笑う太田をチラリと見る。
その表情は焦っていた。
(バーカ。美味いし懐かしいに決まってんだろ)
長年アイツのサポートしてきたんだ、同じ味を出せる。
(さあ…その味を覚えておきな。そして思い出せ)
一度飲んだら中々忘れられないその味を。
心の中で笑いながら部室へ戻った。
「草川君」
「はい?」
呼ばれて振り返ると、太田が立っていた。
「どうしました?」
「あのね…お願いがあるの」
「お願い?」
「うん…愛の代わりにね、これからもマネージャーの仕事を全部してほしいの」
後ろで手を組んで見上げてくる。
(あぁ…今自分可愛いとか思ってるんだろな)
反吐が出る。
少し困惑した様子を見せた後、苦笑した。
「すみません、先輩の意図は良く解らないのですが…ボクはもう手一杯ですので」
頭を下げ、顔を上げると太田が睨んでいた。
「愛の言うこと聞けないの?」
「え?」
「愛はね、皆を応援するのに忙しいの。皆に大切にされる事に忙しいの」
「はぁ…」
「もう一度聞くわね、言うこと聞けないの?」
睨んでくる太田に苦笑を浮かべた。
「すみません、ほんとに良くわからないのですが…」
「そう…もういいわ」
太田は髪を払い、晴樹を睨んだ。
「覚悟しなさい」
太田は右手を上げると自分の頬を叩いた。
「きゃあ!!!」
大声を上げると、外から誰かが駆け寄ってくる音が聞こえた。
太田はニヤっと笑う、それに笑い返してやった。
「なに笑って「どうした!!」
何か言いかけたが、入ってきたレギュラー陣を見て、直ぐ様泣きついた。
「忍足君…」
「どないしたんや、愛」
「草川君に告白されて…断ったら叩かれて…」
その言葉に向日がキッと晴樹を睨む。
「ほんとなのかよ」
「え?」
「愛を叩いたのか聞いてんだよ!!!」
胸ぐらを掴まれる。
(小さいくせに頑張んな)
全然関係無いことを考えた後、右手を上げた。
「あの~結果を言えば叩いてません。それにボク、右利きです」
太田の赤い頬は‘右’
右手で叩いたら左頬が赤くなる筈だ。
「それに、その赤い跡とボクの手の大きさ、随分違うかと…」
「うるせぇ!!左手で叩いたんじゃねぇのか!!」
宍戸にそう言われ、溜め息が出そうになり、慌てて呑み込んだ。
(まさかとは思っていたが、ほんとにバカだとは…)
「黙ってるって事は…本当に叩いたんだな?」
「叩いてません」
「お前…まだ嘘つくんか!!」
言葉と同時に、殴られた。
勢いに任せ、尻餅を着くと上から声が振ってきた。
「アイツの次は前田、その次はお前か…愛になんの恨みがあんねん…!!」
忍足から出た言葉に睨み付ける。
瓶底眼鏡でこちらの表情がわからない忍足は憎しみの籠った目で晴樹を睨んでいた。
「だから、ボクは何も…「言い訳すんな!!」
今度は蹴られた、顔を。
(コイツ…)
歯を食い縛り、振り下ろされる拳を見ていると外から興奮した声が響き渡った。
「ねぇねぇ!!これ作ったの誰なの?!」
「え?レギュラーのドリンクは太田先輩じゃ?」
「え~多分これ違うC~」
興奮した芥川と絡まれる日吉が窓から見えた。
「静香の味「芥川先輩!!」
傍観していた鳳が窓を開けて芥川を見た。
「その名前…出さないで下さい」
「ご、ごめん…」
驚いた芥川はまた何時もの眠そうな目に戻った。
「とりあえず、ボクはしてません!!」
「あ、おい!!」
晴樹は立ち上がると走ってその場から離れた。
それを太田は笑って見ていた。
(クソっ…)
アイツらの口から名前が出るなんて…
(静香)
待っててくれよな、明日から始まる。
歪んだ笑みを浮かべる彼を見たものは、誰もいなかった。
END ACT.1