ACT.1
名前変更
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「先輩」
「?あら、前田さん。どうしたの?」
青い顔の少女に振り返ったもう1人の少女は微笑みかける。
「今日で貴方ともお別れです。太田愛さん」
「はぁ?」
笑顔から一変、苛ついた形相になる。
「何言ってんの?ふざけてると潰すわよ?」
睨まれて怯みそうになるが、前田はギュッと手を握った。
「もう脅しには…屈しません!!」
「うるさいわね!!!」
「キャッ!!」
パンッと音がし、前田が後退る。
「あんたは私の言うことを聞く人形なのよ?あんたの能力を買って大好きなテニス部レギュラー陣のドリンクとかを用意させてあげてんのに、そんな口を聞くなんて…生意気ね」
太田の口元が歪む。
前田は太田を見た後、直ぐに駆け出した。
「ちょっと!!」
太田は走り去った前田の背中を睨んでいた。
「なんなのよ…」
ギリッと歯軋りをした後、ニッと笑った。
「良くわかんないけど、アイツがいなくなってもアイツにやらせれば良いのよね…草川に」
そう言って歪んだ表情で笑う氷帝テニス部レギュラー陣マネージャー、太田愛を見て笑う男がいた。
「前田さん、お疲れさま。頬大丈夫?」
「は…い」
「じゃあまた…今度ね」
「あの…」
「ん?」
「両親の説得、ありがとうございました」
前田は男に頭を下げ、去った。
「計画に協力してもらうんだから、それぐらいするさ」
男は笑い、歩き出した。
翌日、朝の練習の時に前田は現れなかった。
先日彼女が作っていたドリンク等でやり過ごしたが、イラついていた太田は1年の教室へ赴いた。
「前田さーん」
太田の声に1年は振り返る。
「前田なら転校しましたけど」
「え?そうなの…?」
「はい」
教えてくれた1年に礼を言い、歩き出そうとした。
「誰のせいだと思ってんだよ」
「!!」
誰が言ったかわからないが、その言葉に太田は振り返った。
周りを見渡したが、分からない犯人探しは早々にやめて歩き出した。
「転校したですって…!!」
聞いてないわ、そんなこと。
ギリッと奥歯を噛み締めると、背後から声がかけられた。
「太田」
「ん~?あ、跡部君。どうしたの?」
醜い顔を引っ込ませ、瞬時に彼女は笑顔を浮かべた。
「前田のやつ、急に転校したらしいわ」
跡部の横にいた忍足がそう言った。
「良かったな、イジメの元凶がいなくなってよ!!」
笑顔でそう言った向日に太田は弱々しく微笑んだ。
「うん」
・・ ・・ ・・・
太田は前田にイジメに合っていた。
・・ ・・
太田が前田にだ。
イジメの元凶がいなくなった事に、向日達は安堵の溜め息を溢していた。
太田の心中も知らずに。
「俺達、教室戻るな!じゃあな」
宍戸の言葉を合図に、その場は解散になった。
太田はニコニコと皆を見送った後、歪んだ笑みを浮かべた。
「今日‘オネガイ’してみようかな」
放課後、晴樹はマネージャー用部室でドリンクを作っていた。
(前田は転校、残るは大勢の平部員達のマネージャーである俺)
1人ニッと笑った。
(今日だな)
最後のドリンクを作り終え、籠へと全て入れると同時に部室の扉が開いた。
「草川君おはよ~」
「おはようございます。太田先輩」
にっこり笑って入ってきた太田に挨拶し、立ち上がる。
「どこに行くの?」
「ドリンクもタオルも準備出来たので配りに行ってきます」
今はまだ話は聞いてやらない。
「あ、あの…」
「?どうしたの?」
「ドリンク作りすぎちゃって…お口に合うかわかりませんが良かったらレギュラー用に使ってもらってもいいですか?」
「!!え、ええ、わかったわ」
会釈をして出ていった晴樹の後ろ姿を太田はジッと見ていた。
その意図に気づかず。
「日吉君、滝先輩」
丁度休息をとろうとしていた2人に声をかける。
「お疲れさまです」
「ありがとう」
「すまないな」
ドリンクとタオルを渡すと、彼等は礼を言って受け取った。
「ところで…」
「はい?」
「前田さん、転校したみたいだね」
「……みたいですね」
滝は眉尻を下げながら晴樹を見た。
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