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後日、跡部は静香に会いに来ていた。
病室内のベッドに座り、読書をしていた彼女は、跡部の来訪に驚き、涙し、笑った。
怪我は大分良くなっているみたいで、ホッとし、久々に会った彼女に笑みが溢れた。
だが、直ぐに笑みを納めて今までの事を助けてやれなくてすまないと、何度も謝罪する跡部。
静香は慌てて跡部に謝らないでと、そう言って笑った。
「ところで…晴樹は?氷帝にいるって聞いたんだけど…」
その言葉に跡部は言うべきか言わないべきか、悩んだ。
「ねえ、景吾…?」
不安そうに見つめてくる静香に、跡部はついに口を開いた。
話を聞いた静香は信じられないと、目を見開き、絶句した。
悲しくて俯いた静香の手を跡部はそっと握った。
「悪い、俺がさっさとアイツを止めていれば…」
「……仕方ないわよ、もう過ぎてしまった事よ」
静香が流す涙を拭うと、跡部は静香の肩を掴んだ。
「俺が晴樹を探すから、泣くな」
「景吾……うん、ありがとう。でも、見つけても…そっとしておいてあげて。晴樹が会いに来てくれるまで、待つわ」
そう言って、静香は悲しげに笑った。
「しっかし、驚いたなー氷帝でイジメ発覚か」
「一応出場はするみたいだけどな」
ブン太と赤也は柳に見せられたパソコンを食い入るように見詰めていた。
「フン!!合宿の時からあのマネージャーは気に入らなかった」
「やたら色目ばかり使ってたしのお」
「それにしても…この動画を作った方は少々やり過ぎな感じもしますけどね」
カチャリと眼鏡を上げながら柳生はパソコンから目を逸らした。
「…………」
無言でその様子を見ていた幸村と真田は顔を見合わせた。
「ジャッカル、柳、俺は少し出るよ」
「ああ、わかった」
幸村は部室を出ると、ある人物を見つけて笑った。
「ああ、晴樹。良かった、今から君を探しに行くところだったんだ」
「幸村部長、お話が」
「うん、俺も君に話があるんだ。ここじゃなんだし、向こうに行こうか」
部室から少し離れた場所を指差し、幸村は笑う。
頷いた晴樹と共に移動すると、幸村は表情を引き締めた。
「さて、俺から話しはじめて悪いけど、単刀直入に聞くよ。あの氷帝の動画、流したのは晴樹だね?」
「……はい」
「で?何故あんな事したのか…聞かせてもらうよ」
頷くと、全てを話した。
話を聞き終えた後、幸村はゆっくりと口を開いた。
「確かに、君はやり過ぎたね…」
「………」
「まあ、でも俺はそういうの、嫌いじゃないよ。目には目を、歯には歯を」
驚いて顔を上げた晴樹は幸村を驚愕の眼差しで見つめ、情けない笑みを浮かべた。
「あんた、歪んでるよ」
「君に言われたくないよ」
幸村が笑うと、晴樹は泣いた。
「と、いう訳なんだけど…俺はこれからも晴樹に部にいてもらおうと思う」
全てを幸村が話すと、沈黙が訪れる。
怖くて前を見れない晴樹は俯き、手を握りしめていた。
「まあ、幸村がいいならいいんじゃねーの?」
ガムを膨らませながらブン太はそう言った。
「まあ…そうじゃのう。俺もいいと思うぜよ」
皆が是の言葉を次々と紡ぐ。
そんな中、口を開いていなかった赤也は晴樹に近付き、肩を掴んだ。
「テニス、好きか?」
晴樹は顔を上げると、頷いた。
「大好きだ」
「なら問題ねえ」
赤也はニッと笑った。
「あの…本当の名前は草川晴樹と言います。これからも…よろしくお願いします!!!」
頭を下げた晴樹に、皆が笑った。
こうして一人の男の復讐は終わった。
彼は消して全うな、善人ではない。
幸せにもなれない可能性の方が高い。
だけど今だけは…今だけは、凄く幸せそうに笑っていた。
END
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