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暗い部屋の中、テレビからの光と音声が鳴り響く。
「静香、もうすぐだよ」
テレビに映る人物達へ手を伸ばすと、爪を立てる。
「もうすぐ…コイツらは終わるんだ」
待っててね、静香。
歪んだ笑みを浮かべる彼は、ゆっくりと瞳を閉じた。
「今日の練習はここまで!!」
幸村の声が響き、皆の手が止まる。
「つっかれたー!!」
「お疲れ様、赤也」
「おう!サンキューな!」
合宿が終わった今も、晴樹はマネージャーを続けていた。
皆は純粋に喜んだが、晴樹は後少しだけだし、と残っていた。
「いよいよ大会だな」
「へっ!!俺に任せときな!!」
自信満々に笑う赤也に晴樹も笑う。
「ああ、楽しみ」
歪んだ笑みを浮かべる晴樹には気付かず、赤也は笑い続けていた。
大会前日、中学テニス界には衝撃が走った。
『氷帝テニス部の一部で虐め発覚』
突然の発覚に各校衝撃に包まれていた。
「なんやねん、これ…」
部室でネットを見ていた氷帝テニス部の忍足は思わず声を漏らした。
ネットには動画が流れており、今まで自分達が、静香に、前田に、草川に。
今までしてきた仕打ちが延々と流れていた。
静香や前田達の顔にはモザイクやらの修正が入っていたが、危害を加えてる側の人間にはモザイクはなし、向日達の顔は丸見えだ。
顔を青くする宍戸達の後ろでは、顔を顰める跡部や怒りに震える芥川達が、その動画を見つめていた。
「そんな…なにこれ…」
その傍らでは顔を青くする太田が動画に釘付けだった。
(なにこれ、こんなの流したら…)
私の事もバレるじゃない。
その時、焦る太田の隣にいた跡部の電話が鳴った。
「………はい、跡部です。はい……はい、わかりました」
ピッと電話を切った跡部は、忍足達を見る。
「明日の大会、本当なら出場停止になる筈なのに、奇跡的に出場は出来るそうだが、出場選手からお前らは除外された」
「………」
「序でに言うなら、今後一切お前らは大小関わらず大会には出場不可能だそうだ」
「なんだと…!?」
「動画は全世界で流れているらしい、そしてあらゆるテニス協会にもお前達は有害な選手として認識されたらしい」
跡部の言葉に、鳳はグッと手を握った。
「誰が…こんな動画を…」
「ん~?俺だけど」
聞こえてきた声に、皆一斉に振り返る。
開いた部室の扉に凭れ、晴樹が笑っていた。
「晴樹…?」
「気安く俺の名前を呼ぶんじゃねえよ」
太田を冷たく睨み、部室内へ入っていく。
「お前が犯人か…!!」
ギッと睨んでくる向日にふざけた様子で肩を竦める。
「なーに怒ってんの?今殺されてないだけ感謝して欲しいんだけど」
「殺されてないだけ…だと?」
「俺、お前ら皆殺しにするつもりだったから」
言葉と共に放たれた憎悪に身震いする。
「静香がさ、どーしてもダメだって言うから、殺さない事にはしたけどさ、奪われたまんまじゃ静香が可哀想じゃん?だからお前らからも奪ってやろうと思ってさ、テニス」
晴樹の言葉に、芥川が駆け寄ってくる。
「ねえ、君、草川晴樹君だよね?静香とどーいう関係なの?!!」
「草川…!?」
驚く面々にニイッと笑った。
「芥川さん、意外と鋭いですね。確かに、俺は草川晴樹」
眼鏡を付け、前髪を前に垂らすと、皆が息を飲む。
「因みに、俺が愛してやまない静香との関係は…信愛なる従姉」
「従姉だと…?」
「ほんと、可哀想な静香。こんな屑共に未来を奪われて…」
眼鏡を外し、髪をかき上げる。
「ああ、そうそう、静香の今の状態、知ってる?」
「今の状態…?」
「テニスが二度と出来ないだけじゃなく、女としての幸せも掴めないかもしれない。子供産めないかもしれない」
「なに…!?聞いてないぞ!!?」
「誰が外部に情報漏らすかよ」
キッと跡部を睨む。
「まぁ、あんだけ暴力受けたら、そうなるわなぁ」
晴樹は太田を見た。
「ぜーんぶ、お前のせい。静香を痛め付けて楽しかったか?」
「なに、言って…」
「ククッ…もう演技しなくていいぜ?お前の事も流れてるから」
太田は驚いてパソコンへ振り返る。
次々と流れる数々の証拠動画。
「あ…あっ…これは…」
「ほんと、醜いよなあ。こんな事しても跡部は振り返らないし、好きになった俺の正体はこんなんだし、可哀想だなー」
ケラケラと笑いながら話続ける。
「お前の嫉妬に静香を付き合わせただけじゃなく、傷まで残しやがって…テメーが死ねよ」
冷たく見下ろす晴樹に、太田は震える。
「愛…これは、全部事実なんか?」
「………」
「愛!!!」
「無言は肯定、お前らも認めろよ、コイツに踊らされてたってな」
晴樹は皆の間を歩き、パソコンへ近付く。
「そうそう、お前には特別なプレゼントがあるんだ」
晴樹は楽しそうに笑い、パソコンの画面を皆に見せる。
「そ…んな…」
「良かったなあ、これでお前の回りには色んなナイトが現れるぜ?」
パソコンの画面には、男を求める、売春やそういったモノが書かれた画面に、太田の顔写真、名前、家の住所まで晒されていた。
「こんなの…犯罪よ…!!」
「犯罪?」
晴樹はゆらりとパソコンから離れると、壁を殴り付けた。
「静香が今生きてるから未遂で終わったものの、殺人未遂、犯したのはどこの誰だ?」
地を這う様な低い声に身震いする。
「お前は自分の手を汚さなかった、だから俺も自分の手は汚さねえ、だから…」
晴樹はニタァと笑う。
「自分から死にたくなるような出来事、沢山用意させてもらったよ」
歪んだ笑みを向けられ、太田は座り込んでしまう。
「自業自得だ、悪いことしたら、自分に返ってくんだぜ~?あ、そうそう、お前ら4人にも楽しい出来事用意してるから」
晴樹は楽しそうに笑うと、出口へ向かう。
「明日から、楽しみだなあ」
凄く楽しそうに笑いながら、部室から出ていく晴樹は何か思い出したように振り返った。
「そうそう、跡部さんにお願いがあるんですよ、ここではアレなんで、部室前に出てもらえます?扉は開いたままで十分警戒してもらって大丈夫なんで」
そう言った晴樹に、跡部は近付き部室を出る。
「お願いとは…なんだ」
「静香に会ってやってください」
「なに…?」
晴樹は先程までとは違い、至極真剣に跡部を見る。
「静香の病室が面会拒絶だったのは俺が指示出してたからです。だけど、静香が貴方に、会いたがっていた。跡部さんの入室許可は取ってます、跡部さんが良ければ、会いに行ってやってください」
「あぁ…分かった」
「場所はわかりますよね?後…俺の代わりに側にいてやって下さい」
「代わり?」
「歪んだ俺は、こんな事をしでかした、静香は気に病むから…」
悲しそうに笑い、その場を離れる晴樹を、跡部は見つめるしか出来なかった。
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