ACT.5
名前変更
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それから二~三日、太田のアピールは激しくなり、それに伴い前田への当たりは強くなっていった。
相変わらず俺は芥川達からも忍足達からも睨まれているが気にしない。
潰す為なら我慢なんていくらでもしてやる。
着実に証拠は集まっているんだ。
(もう少し)
もう少しの我慢だ。
「晴樹君?」
「どうしました?」
「もう少しで…合宿終っちゃうね」
「そう…ですね」
悲しそうに俯くと、手を握られた。
ぞわぞわっと悪寒が走るが我慢し、太田に視線を向ける。
「愛、さん?」
「合宿終わっても…会ってくれる?」
上目遣いに見上げてくる太田に微笑むと、頷いた。
嬉しそうに笑う太田と別れると、手洗いへ向かった。
(気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い)
手を出さなかっただけ良かった、我慢の限界が来る前に離れて良かった。
手を洗っていると、人が入ってきた。
ちらりと視線を向けると、芥川がと日吉だった。
彼等は最近よく一緒に行動しているみたいで、偶々手洗いにも一緒に来たのだろう。
「こんにちは」
「………」
挨拶するが二人は晴樹を睨むだけ、随分と嫌われたものだ。
まあいいかと手洗いを出ようとした時、芥川に手を掴まれた。
「ねえ高城君」
「はい?」
「何でそんなに太田と仲良く出来るの?」
「え?」
「芥川さん」
日吉は芥川の肩を掴んだが、芥川は気にせず話続ける。
太田がどんな人物か、何をしてきたか、そのせいで誰がどうなったか。
次々と話す芥川の手を振り払うと、ククッ…と笑いが溢れる。
「おい、なに笑ってるんだよ」
日吉が訝しげに晴樹を見る。
「クククッ…ホント、日吉君もジロー先輩も面白い方ですね」
「急に何言って…」
「俺が何も知らないとでも?」
突然無表情になった晴樹に2人は怯む。
「全部、知ってるよ。あんたらに言われなくてもな」
晴樹は2人を睨むと手洗いを出た。
嬉しい事に今日が合宿最終日。
やっと太田から離れられるというのに今日晴樹が担当するコートには氷帝陣が揃っていた。
(あーやだやだ)
しかし、手を抜くのは嫌だ。
完璧にしてやる。
やるべき事を全て完璧にこなしていく。
しかし、こなせばこなす程氷帝陣からの注目を集める事になった。
原因はドリンク。
(味変えるの忘れた)
ずっと静香や晴樹のドリンクを飲んでいた彼等が不思議に思うのは妥当だろう。
早く終わらないか終わらないかと思いながら黙々と仕事をしていると、やっと終わった。
「おい」
それと同時に声をかけられる。
かけてきたのは宍戸だった。
「はい?」
「ちょっと面貸せよ」
宍戸の後ろには鳳達が立っていた。
「面、ですか?」
「いいから来い!!」
ガッと腕を掴まれ、表情が歪む。
「ちょっと待ってよ宍戸!!俺も高城君に用があるんだけど!!」
晴樹を連れていこうとする宍戸の手を芥川が掴んで止めた。
「なんだよジロー、後でもいいんだろ?」
「今じゃないとダメなの!!」
引かない宍戸に引かない芥川。
苛々を我慢していると、反対の腕を誰かに掴まれた。
「ちょっと二人とも!晴樹君に迷惑かけないでよね」
腕を掴んだのは太田のようだ。
色々な意味で我慢の限界が近い。
宍戸に掴まれている腕を振り払おうとしたとき、後ろから声をかけられた。
「晴樹」
「幸村先輩」
「氷帝には悪いけど、今から立海でミーティングあるから、晴樹は返してもらうよ」
立海の部長に言われたら宍戸も手を離すしかなく、苦々しい表情のまま手を離した。
「行くよ」
「はい」
幸村の後ろに着いて歩き出す。
「あの、ミーティングって?」
「ふふっ、あんなの嘘だよ」
「え?」
「晴樹が困っていたからね」
「そうでしたか…ありがとうございます」
礼を言うと幸村はふふっと笑う。
「ところで…」
「はい?」
「合宿後もマネージャーはしてくれるのかな?」
その質問には答えず、苦笑するだけだった。
合宿は終わり、各校帰りのバスへ乗り込む。
氷帝のバスから視線を感じて視線を向けると太田がこちらを見ていた。
口パクで『またね』と伝えると太田は顔を真っ赤にして頷いた。
(バカな奴だ、次に会うときは絶望に染まるというのに)
晴樹はニィっと笑うとバスへ乗り込んだ。
END ACT.5