ACT.5
名前変更
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翌日からの変化は大して見られなかった。
不動峰や山吹の連中は杏と太一が話をしたみたいで、前田に危害を加える様子は無さそうだ。
マネージャーを連れてきてない学校は自分達に特に危害はない、もし何かしてきても返り討ちにする自信があるからか、気にしていないようだ。
そうなれば過剰に前田を嫌悪している氷帝の一部だけが行動を起こすだろう。
(それでいい、俺が消したいのはお前らだけだ)
思わず笑みが零れる。
「高城先輩?」
「ああ、ごめんね、壇君。相変わらず料理下手だなと思って」
「そんなことないです!美味しそうです!!!」
太一はキラキラした笑みで晴樹を見てそう言った。
「ありがとう、さあ配ろうか」
「はいです!!」
配ると言っても、バイキング式なのでキッチンから食堂へ鍋等を運ぶだけなのだが。
少しずつ運んでいると、ちらほらと人の影が現れ出す。
挨拶をしながら全部運び終えると食事が始まる。
「壇君、お疲れ様。俺達も食事にしようか」
「はいです!」
壇と別れ各々食事をとっていると、誰かが近付いてきた。
「晴樹君…おはよう」
「太田先輩、おはようございます」
「一緒に食べてもいい?」
「勿論ですよ」
ニコリと笑えば、目の前に太田は座る。
「その…昨日はごめんね」
「え?」
「助けてくれたり、話聞いてくれたり」
「ああ、俺がしたくてやった事なので、太田先輩は気にしないでくださいよ」
にっこりと笑えば、太田の頬が赤くなる。
「あ、そうだ…ねえ、晴樹君。私の事、愛でいいわよ?」
「愛先輩?」
「んーん、愛よ」
微笑む太田に照れた様子で俯き、口を開く。
「愛、さん?」
「うん、それでいいわ」
満足そうな太田に笑い、食事を一気に平らげる。
「ご馳走さまでした!!」
食器を持って、バタバタと駆けていく晴樹を、太田は楽しそうに見ていた。
(頭痛い頭痛い頭痛い)
太田の野郎なんだかんだで俺に狙いを定めて来やがった。
いや、氷帝の奴等を煽るにはいいかもしれないけど、俺はお前と話したくはないんだ。
おまけに名前呼びを強要しやがってこの野郎…
(静香…)
お前に会いたいよ。
朝の練習が始まり、昨日の様に出席を取る。
話を聞いていたのか、素直に皆出席をとらせてくれた。
その中で気になったのが忍足。
コンディションは悪くない、だけど機嫌が著しく悪い。
(俺にヤキモチでも妬いてるか?)
なんて解りやすい奴等だホント。
マネージャー業をしながら観察していると、あることに気付いた。
ほんのりと手の甲が赤いのだ。
気になって隣のコートを見れば、やたらと機嫌のいい太田。
(やりやがったか)
Bコートへ視線を向ければ前田が目に入る。
動きが悪い。
おまけに今日はBコートにいる跡部と芥川が別コートにいる忍足や向日達を時たま睨んでいる。
完璧に手を出したに違いない。
(昼休み、前田の様子見に行くか)
そう決めて練習へ取り組んだ。
「前田」
昼休み、一人で片付けをしている前田に声をかける。
「晴樹さん…」
「やられたのか?」
頷いた前田に舌打ちが出る。
「…平気か?」
「まだ今日は、軽い方でしたので」
そう言った前田の頭をくしゃりと撫でる。
「もう少しだ、悪いな」
「いえ…」
「太田も、アイツらも必ずぶっ潰す」
そう言った晴樹に、前田は潤んだ目で頷いた。
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