烏野
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ねぇ」
金曜日の昼休み、自販機で飲み物を買っていると突然声をかけられた。
なんだと振り返ると眼鏡とそばかすの二人組が立っていた。
「なに?」
「君、コート上の鷹だよね?」
「いや、違うけど」
即答すると、面白そうに目を細められた。
「即答か。もうバレーはしないって話本当なの?」
「その話をどこから聞いたのかは知らないけど、俺はバレーはしないし、リベロだからコート上の鷹にはなれない」
「へぇ…」
ニヤニヤ見てくる眼鏡に苛ッとする。
「ところで、誰」
「1年4組、月島蛍」
「1年4組の山口忠!」
「山口とは仲良く出来そうだ。眞島晴樹だ、気軽に晴樹って呼んでくれ」
「え、ツッキーは!?」
「感じ悪い奴は嫌いだ」
買った牛乳を山口に渡してよろしくと握手をすると、月島から凄い睨みが向けられた。
ビクッとビビりながらも月島を睨み返す。
「で、なんの用」
「飛ばなくなった鷹が烏野にいるって聞いたからね、興味本意で見にきただけだよ」
「へ~」
適当に返事をして牛乳を再び買い、ちらりと月島を見た。
「そういえば、そんな話するって事はバレー部なのか?」
「そうだけど?」
「明日3vs3するんだろ?」
「知ってるんだ。なに?本当はバレー部なんじゃないの?」
「んなわけあるか。勝手に話をしていく奴がいただけだ」
「ふ~ん」
まあいいやと言った月島にん?と疑問に感じた事を聞いてみる。
「そういや、コート上の鷹の話どっから聞いたんだ?てか、そんなに広まってんの?」
「ん?知りたいの?」
ニヤニヤと笑う月島に嫌な予感を覚え首を振った。
「いや、いい。勝手に想像しとくから」
「交換条件飲んでくれるなら良いよ」
「話聞けよ」
此方の話を聞かない月島にため息を吐くと山口の肩を叩く。
「明日、頑張れよ山口」
「え、あ、うん!」
「ちょっと、無視しないでよ」
「じゃあな、山口!」
「またね!」
にへっと笑う山口は癒しだな、隣の眼鏡?見えない見えない、そんなもの見えな…
「…………」
「月島」
「なに」
「お前も頑張れよ」
「!?…フンッ…」
拗ねた眼鏡が見えてしまったから思わず声をかけてしまった。
ツッキー、素直じゃないから!なんて言って山口が怒られてるのに笑い、その場を後にした。
まあ何に対して素直じゃないのかはわからなかったけど。
「はよー」
「おはよー!!」
「……なんでここにいんの」
朝登校すると、教室になぜか日向がいた。
とりあえず挨拶をして中に入る。
「俺、勝ったんだ!そんで、無事に入部した」
「そうか、オメデト」
自分の席に座ると、日向に手を握られる。
驚いて顔を上げると、キラッキラとした日向の顔があった。
「本当にありがとうな!お前がアドバイスくれたから、いつもよりレシーブ出来たし」
「そ、そうか。よかったな」
「おう!」
あまりバレーの話はしてほしくなかったが嬉しくて堪りませんといった様子の日向に釣られて笑った。
あの後、興奮した様子の日向を諫めて教室から追い出し、1日平和に過ごすはずだったのにおやおやなぜか目の前には此方を睨む影山君がいるじゃありませんか!
「で、何用?」
「……助かった」
「は?」
急に助かったなんて言われて解る筈もなく、首を傾げる。
「日向のレシーブ。先輩達にも色々言われて成長したのもあるが、お前のレシーブ指導で前より大分マシになった」
「ああ、そうか勝ったんだっけ…良かったな」
「おう」
「「…………」」
そこで会話は終わったのに影山は何故か動こうとしなかった。
「まだなんかあんの?」
「いや、悪い。じゃあな」
何か言いたげだったが特に何かを言うわけでもなく教室を出ていった。
「……なんだったんだ?」
少し気になったがまあいいかと次の授業に備えた。
「今日は厄日か」
「人の顔見るなり失礼だね君」
目の前の眼鏡は不愉快そうに顔を歪めた。
昼休みに自販機に来るとまた出会ってしまった。
まあ眼鏡は無視して隣を見ると両手を上げた。
「よっ!忠」
「よっ!晴樹!」
山口とハイタッチを交わす。
うん、やっぱり山口は癒しだ。
「あ、そういやこの前の試合負けちゃったんだってな?どんまいツッキー」
「君、僕に喧嘩売ってるよね?」
「その悔しさをバネに精進するといいよツッキー」
「一回殴らせてもらっていいかな?それより、特に悔しくはないよ。たかが部活だし」
おちょくられて苛立っていた表情から急に冷めた表情に変わった月島に少し驚いた。
「本気でやってないって?」
「そう」
「でもツッキーちゃんと本気出してたよ!」
「うるさいよ山口」
「ごめんツッキー!」
目の前で行われるコントに笑い、感じた驚きと胸の中で燻る何かを忘れる事にした。
.