伊達工業
名前変更
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「ギャーッまたっ…!」
「これで4本連続サービスエース…」
荷物を纏めると烏野は観客席へと上がり青城の試合を見ていた。
「威力は言うまでも無えけど、あのコントロールもえげつねえな…」
「でも、あのサーブさえなんとかすれば…!」
烏養の言葉に日向は振り返る。
「確かにサーブは怖いけど―“セッター”としての及川は、俺達にとって完全に未知だ」
その言葉に面々は口を閉ざした。
確かに、烏野高校にとってはセッターの及川徹は未知数だ。
以前の練習試合も彼は最後の最後にピンチサーバーとしてプレイしただけだ。
「セッターってよ」
ジッと試合を見ながら考えていると、後ろで繋心さんが話し始めた。
「オーケストラの“指揮者”みてえだと思うんだよ。同じ曲、同じ楽団でも“指揮者”が代われば“”音が変わる」
繋心さんの言葉を聞いてチラリと試合中の及川さんを見た。
確かに、その通りだなと。
別に練習試合の時にいたセッターのレベルが低いわけでも。
及川徹という指揮者が青葉城西という楽団を熟知しているからこその滑らかな連携。
(やっぱり、レベル高いな)
フッと思わず笑みが出た。
「大王様かっけえ!!早く試合したい!!」
「おう!サーブ俺狙ってくんねぇかなぁ!?とりてえ!!」
わっくわくの表情で試合を見る西谷と日向に皆視線を向けた。
「コラ~そこの中…小学生かな?少し静かにね」
テレビも来ていたみたいでさらに騒ぎだした2人だったが注意を受けてしまった。
思わず吹き出した俺は悪くない、だって皆も吹き出してたし。
その後、青城はストレートで試合を勝ち進んだ。
繋心さんの撤収の指示で鞄を持った時、下からあっ!!!と嬉しそうな声が聞こえた。
チラリと視線を向けると案の定及川さんがこちらを見ていた。
ぶんぶんと手を振ってるので呆れながらも笑って振り返すとにっこりと満足そうに笑った(因みに岩泉さんに殴られてた)
岩泉さんと目が合ったので頭を下げると、皆に続いた。
「…静かですねえ…」
「2試合したしな。どっちもストレートで勝ったからまだマシだけど」
ブロローンと走るバスの中、皆眠りについていた。
大人組は起きていて会話をしていた。
その会話を右から左に聞き流しつつただぼーっと外を眺めていた。
(勝ったんだな)
今更ながら実感が湧いてきて、ニッと笑った。
「武田先生ぇー!」
学校にバスが着いてすぐ、職員室から大きな声で武田先生を呼ぶ声がした。
「バレー部がテレビに映ってますよーっ」
テレビに出ているとの声に寝ていた生徒はガバァ!!と起き上がり職員室に走り出した。
「ほら、ツッキーも行くよ!!」
「わかったから」
興味ありませんって表情のツッキーの手を引っ張りながら職員室に向かうと、皆もうテレビの前に立っていた。
「おおお!やってる!テレビ!」
「ローカルニュースじゃないですか」
「「うるせえ!テレビはテレビだ!」」
騒ぐ2年2人と呆れ顔のツッキーに苦笑するとテレビを見た。
シード校に勝った和久谷南、王者白鳥沢がテレビで流れた後、今日試合をした体育が映った。
おおっ!と沸き立ったが、パッと映った及川の映像に皆一瞬にして無表情になった。
その後、烏野高校と名前が出て皆期待に満ちた顔でテレビを見たが映ったのは…またしても及川だった。
しかも、烏野について聞かれると、全力で当たって“砕けて”ほしいですネ!とコメントしていた。
「…………」
重い沈黙に包まれたが、それを断ち切るようにニコリと澤村は笑った。
「先生、ありがとうございました」
「あっいや…」
「よーしそれじゃあ、やるか。」
笑顔から一点、無表情になった澤村に皆も無言無表情で続いた(因みにビビる先生に武田先生がミーティングだとフォローを入れてたありがとうございます)
体育館に着くとホワイトボードの前に立つ。
「今日の伊達工戦はな、言わば“ビールの一口目”だ!」
ドーンと言った烏養の言葉に皆はぽかーんとしていた。
「ビールの一口目の美味さは最初だけの特別な美味さだ!」
「繋心さん、俺等未成年にもわかる様にお願いします」
冷ややかな目でそう言うとゴホンと咳払いをした。
「“変人速攻”が初お披露目だったからこそ相手の意表をつくことができたワケだが、でも青城とは一度戦ってるからある程度手の内を知られてる。ただ、それでもお前達の攻撃力が高いのは確かだ。まずは及川のあのサーブを凌ぐことだな。あのサーブで流れを持って行かれるのが一番嫌でかつ、有り得るパターンだ」
烏養の言葉に皆冷や汗を流す。
「―で、今サーブは基本“セッター以外のみんなでとる”フォーメーションになってるが、今回は―MBの日向・月島はサーブレシーブには参加せず、攻撃のみに専念する」
「「ハイ…」」
「おい凹むなよ?“分業”だ分業。じゃあ、コート入れ」
「オス!」
返事をしてコートに入ろうとした皆を烏養は一度止めた。
「あ、あとな、お前ら青葉城西見て“あ、やべえ強え”って思ったろ」
「「「「………」」」」
「でもよ、例えば伊達工の試合をもし同じように観客席で見てたら“なんだよあのブロックまじ恐い勝てない”って怯むだろ。でも戦えた、勝った。明日もそうだ」
ニヤリと笑う繋心さんに皆は気合いの入った雄叫びを上げると、コートに入った。
「じゃあ、明日も遅刻すんなよー!」
「チョース」
挨拶をして体育館から出ると前にいる影山を見た。
(いつもよりピリピリしてんな~)
まあ、明日はいよいよ及川さんとの試合なのだ、だからしかたないと言われれば仕方がない。
だけどまあいくらなんでもピリピリしすぎだと思い近寄ると後ろから翔陽も駆け寄ってきていた。
「おい影山!10代半ばにして眉間のシワとれなくなるぞ!」
「ア゛!?」
「プッ」
翔陽の言葉にぐりんと飛雄ちゃんは振り返った、そして思わず吹き出した俺は悪くない睨むな。
「明日、大王様倒して―」
「!」
「テレビに映るんだから爽やかな顔の練習した方がいいぞ」
「!?余計なお世話だ!」
倒す気満々の翔陽に笑みが浮かんだ。
「試合には勝つ。勝たなきゃ先に進めねえ!」
「そうだな。及川さん、倒さねえとな」
ニッと笑うと、2人も笑った。
明日 第3回戦が始まる。
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