烏野
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あんま教室でそーゆー話はしないでほしい」
意識して睨むと顔面蒼白で何度も頷いていた。
校舎裏へ着いて日向と向き合うと、震える姿に苦笑した。
「別に怒ってるわけじゃねえからよ、そんなビビんなよ。で?何が聞きたい?」
「お、おう…いや、昨日さ自分の事リベロって言ってたけど、エーススパイカーじゃねえの?」
「違うけど」
即答すると、日向の頭にハテナが浮かびぶつくさと自問自答を始めた。
その姿に思わず笑ってしまうと、日向がムッと頬を膨らますものだから悪いと謝った。
「で?日向が用があるのはリベロの俺?スパイカーとやらの幻想の俺?」
そう問い掛けると、少し考える素振りを見せた後ジッと見つめてきた。
「リベロの、眞島に頼みがある」
「なんだ?」
「俺にレシーブを教えてくれ!」
「………は?レシーブ?」
急になんだと日向を見ると、どうやら以前生徒手帳を届けに行った日に影山と勝手に勝負をして主将を怒らせたらしく、入部は認めないと言われたそうで。
影山とチームメイトとしての自覚を持ち、土曜日に行われる3vs3の試合に勝つと入部を認めてもらえるそうだ。
相変わらず影山は勝ちに拘りレシーブも儘ならない日向にトスは上げないと言っていたそうだが、先輩とのコソ練である程度出来るようになり影山がついにトスを上げてくれたそうな。
だけどレシーブの精度が低いのが難点だと自分でも分かっている為、先輩だけではなく俺にも練習に付き合ってほしいとの事。
「ふーん…」
話を全部聞いて考える眞島を日向は緊張した面持ちで見つめる。
「悪いけどさ…付き合ってやりたいのは山々だが、俺はもうバレーはしねえの、昨日も言っただろ?」
「そこをなんとか!」
手を合わせてお願いしてくる日向に良心が痛むが、くるりと踵を返して歩き出す。
「ごめんな、他当たってくれ」
「眞島!!放課後!外で練習してんだ!気が向いたら来てくれよな!」
日向の言葉を背に受けながら、教室へと急いだ。
「じゃあな!」
「おう、じゃあな」
放課後、部活に向かう友人に別れを告げて下校準備をする。
準備を終えると今日一日疲れたなとため息を吐いて歩き出す。
あの後、休み時間になるとやって来る日向を突き放すのはかなり精神的に疲れた。
「放課後!」
「外で!」
「練習を!」
「行かねえってば」
そう返事をするたびに落ち込む日向に良心はズタボロだ。
(あんなしょぼくれた顔されたらなあ…)
後味悪いまま歩いていると、どこからかバレーボールを使っている音がした。
外なのに何故、聞き間違える筈なんてないし。
一度気になりだしたらもう止まらなくて、音のする方へ歩き出した。
「なっ…!?」
少し歩いて目に入ったのは外でひたすら練習に励む日向と影山だった。
本当に外でしてんのかよ、冗談かと思っていたのに。
呆気にとられていると、日向のレシーブミスでボールが此方に飛んできた。
「すいませーん…って、眞島!?来てくれたのか!!」
キラキラと目を輝かす日向から視線を反らし、ボールを拾うとギュッと握る。
懐かしい感触に頬が緩みそうになったがキュッと引き締め、日向を見た。
「日向、そんなにバレーが好きか?」
「そんなの…当たり前だろ!!」
ニカッと笑った日向がとても眩しく思えた。
「そうか…」
釣られて笑うと、向こうで此方を見ていた影山にボールを投げた。
「影山、そっからかなりきつめのボール打ってくれ」
「あ?」
「日向、一度だけ見せてやる」
学ランを脱いでシャツの袖を捲ると、軽く腰を落とす。
深呼吸をすると、影山を見た。
(!?アイツ…纏う空気が変わった)
驚きで目を見開いた後、影山はニッと笑った。
今目の前には、コート上の鷹がいる。
少し後ろに下がり距離をとると、ボールを上に投げ殺人サーブ(と何故か言われるジャンプサーブ)を繰り出した。
スピードもあり威力もあるボールの真っ正面に移動すると、いとも簡単にボールを受けて返した。
全ての衝撃を吸収し、セッターがいるであろう場所へと。
静かに行われた一連の動作に日向は開いた口が塞がらなかった。
「………なあ日向、ちゃんと見てたのか?」
「す…」
「す?」
「スッゲー!!!!あの殺人サーブを簡単に!ポンって返すなんて!」
興奮して話し出した日向に苦笑しつつボールを拾い、近付いて来ようとしていた影山に投げた。
「日向が思った感じでいいから、俺の真似してレシーブしてみろ」
「え」
「影山ー打ってくれ」
「ああ」
日向と入れ替わると、殺人サーブではないがかなり強いボールが放たれた。
日向はレシーブ出来ず、顔面にボールが当たり蹲ってしまう。
「お前、なに見てたんだよ」
「見よう見まねで簡単に出来るか!」
「ったく…」
ボールを影山に投げると、日向に構えさせる。
「もう少し腰を落として、お前は運動神経が人よりいいんだからボールをしっかり見ろ。お前、集中したら凄いんだからよ」
「わかった」
日向が頷くと、影山に合図を送りボールを打ってもらう。
日向の纏う雰囲気が変わったのにゾクリとした。
(コイツ…)
日向に気をとられている間に、なんとかレシーブをこなしていた。
「眞島…!!俺、とれたぞ!」
「あ、ああ、とれたな」
ぴょんぴょん跳ねて喜ぶ日向に返事をすると学ランを拾って帰り支度をする。
「あれ?帰るのか?」
「帰るよ」
じゃあ、と歩き出そうとしたら腕をガッと掴まれた。
「お前、本当にバレーしないのかよ」
腕を掴んできたのは影山で、掴まれた手をやんわり離す。
「おう、バレーはしない」
「コート上の鷹、エーススパイカーなのにかよ」
「……俺は鷹じゃない。それは俺じゃない。俺はリベロだ」
影山の顔を見るのがなんだか怖くて、その場を急いで離れた。
→