予選開始
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その行動に皆驚いて一周の沈黙が辺りを包んだ時、伊達工業の後ろの方から声がした。
「ちょいちょいちょい!やめっ、やめなさいっ」
出てきたのは少しひ弱そうな選手で、眉無しの腕を謝りながら押していた。
「すみません!すみません!」
「いえ…」
「っておい!」
眉無しは腕を引っ込めるどころか、空いた手で晴樹を指差した。
「やめなさいってば!おい二口、手伝えっ」
「はーい」
二口と呼ばれた青年は眉無しの腕を下ろさせながら振り返って笑った。
「すみませーん。コイツ、エースとわかると“ロックオン”する癖があって…だから―“今回も”覚悟しといてくださいね」
そう言いニッと笑みを浮かべた後、晴樹を見た。
「そっちの鷹君もね」
そうして去っていく伊達工業の後ろ姿を見送りながら、チラリと旭さんを皆見た。
「いやーちょっとビックリしたなー旭、よく目え逸らさなかっ―」
菅原が声をかけた瞬間、ドバッと大量の汗が東峰から流れ出した。
「きっ、緊張したっ…」
「なんでコートの外だとそんなに弱いんですか」
「ノヤっさんオブラート!!」
そんなやり取りに笑った。
場所を移動し、皆着替えて準備を終わらすとゆっくり目を閉じる。
正直言って試合に出るかは解らないが…それでも出るために、出たときの為に集中する。
深呼吸を繰り返していると、ポンと肩を叩かれた。
「アップとりに行くぞ」
「はい」
立ち上がると、皆に続いた。
体育館に入る前、澤村さんは知り合いと少し話をするために列から離れた。
それを見送り先に体育館に入ると、笑みが浮かんだ。
こういうの、久しぶりだ。
第一試合開始25分前。
荷物を置いてアップをしていると「あっ!!」と翔陽が声を上げた。
「らっきょヘッド!!!…と…大王様っ…!」
えっ!?と翔陽の視線を追うと青葉城西がいた。
「やっほー!トビオちゃんチビちゃん、元気に変人コンビやってるー?」
ピースをしながら声をかけてきたのは及川さんだった。
飛雄ちゃん達が静かに睨む横で思わず「げぇっ…」と萎えた表情をしてしまい、それを目敏く見つけた及川さんがぶんぶんと手を振りだした。
「やっほー!晴樹ちゃん、元気にしてた?もー全然連絡くれないし返事もしてくれないから寂しかったよー?あ、今度一緒にぐはっ!!!」
「何時も悪いな、晴樹」
「いえ。こちらこそ何時もありがとうございます!」
煩いと及川を殴った岩泉は晴樹に手を振ってその場を離れた(及川を引き摺りながら)
その後ろにいた国ちゃんと金ちゃんが見え手を振ると、恥ずかしそう&無表情で振り返してくれた嬉しい。
「よしっ!!」
気合いを入れ直すと、アップへ戻った。
あっという間にウォームアップは終わり、IH宮城予選はスタートした。
選手と挨拶の為握手をすると隣のコートから伊達工業の応援が聞こえてきて驚いた翔陽の声に俺が驚いたこの野郎。
「いいか!開幕1戦目、誰だって緊張なり高揚なりで普段通りじゃない。そこからいかに一歩早く抜け出るか、だ!まずは1本ドカッと決めて流れを掴め!」
繋心さんの言葉に返事をすると、武田先生が静かに口を開いた。
「…これは、お世辞でも親ばかでも無くて、皆は強いです、烏野は強いです。“飛べない烏”がまた飛ぶところ、会場中に見せてあげましょう!!そして言ってやるのです!“見よっ、古兵烏野の復活だ!!”と!!!」
武田先生の言葉に返事をして笑った。
ポエミーだった!?と顔を赤くする武田先生を宥め、ふるつわものって何?と相変わらずバカ丸だしの翔陽と飛雄ちゃんに笑い、皆で気合いを入れた。
スターティングから外れたのでベンチに下がると試合が始まった。
サーブは試合相手の常波高校から、旭さんがレシーブをし既に動いていた飛雄ちゃんが相手をビビらしかつこちらの士気を上げる為に選んだのは…
(やっぱり)
「わっせらーっ!!」
田中先輩だった。
点が入ったことに西谷先輩と2人して雄叫びを上げるがあまりの長さに澤村さんとスガさんに怒られてしかも審判から注意も受けてしまった。
次は烏野のサーブで相手はレシーブをしてスパイクを打ったが西谷先輩がとり、旭さんにボールが流れる。
「旭さん!」
「頼むぜエース!!」
相変わらずの威力に皆が驚く中、「さすが成人!」や「留年の人が居る」という会話も耳に届き旭さんがダメージを受けていた。
「旭さんカッコイイっす!!」
声を上げると若干涙目だった旭さんがニッと笑って立ち直った(気がする)
それを見てからチラリと視線を動かす。
(もう―)
飛びたくて、打ちたくて仕方ねえって感じだな。
うずうずしながら飛雄ちゃんを見る翔陽に笑みが浮かんだ(因みに飛雄ちゃんにわかってると怒られていた)
その後も直ぐにチャンスは訪れ、翔陽が走り出した。
「―飛んだ」
翔陽がジャンプした時、場が静まり返り、誰かが呟いた。
(さあ―)
―見よ 古兵、烏野の復活だ
その後、試合は勝った。
勝ち進んだ。
撤収するとき、常波の選手、澤村さんの友達から俺達の分も勝てと、そう託された。
そう、勝ったなら負けたチームもいて、勝ったなら負けたチームの期待を、気持ちを背負って次に進むのだ。
(次も)
勝つ―
常波の選手の後ろ姿を見送ると、皆に続いて歩きだした。
次の試合までの空き時間、ストレッチをしながら周りの会話に耳を向ける。
すっかり周りは翔陽の話題ばかりで、嬉しいのか翔陽の口はヒクヒクしていた。
「翔陽、口面白いことになってる」
「………」
「な、なんだよ、うれしくたっていいじゃんか!おれ、あんな風に言われたことないし!」
晴樹と影山を見て翔陽は慌てるが影山は何も言わずニヤァと笑った。
「別に何も言ってねぇだろ。お前が注目されんのは良い事じゃねぇか。相手がお前に注目して警戒すればする程お前は本領を発揮する」
飛雄ちゃんの言葉にそうだなーと同意していると、翔陽が飛雄ちゃんの笑顔こわいと言って髪を鷲掴みにされた。
→