烏野
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桜舞う季節、宮城県立烏野高等学校に新入生が続々と登校して来てはクラス分けの紙が貼られた掲示板の前に駆け寄る。
流れに乗って掲示板まで行くと、目の前にいた女子達の頭上からクラスを確認し、ふらりと歩き出した。
教室では真新しい制服に身を包んだ生徒達が早速友達作りに励んでいた。
元気だなーと圧倒されつつ自分の席に着くと、前の席に座っていた男子がくるりと振り返った。
「!?」
「よ!俺は前田!お前は?」
「眞島…」
「眞島だな!どこ中?」
グイグイと会話をしてくる前田に(実はしていた)緊張も解け、先生が来る頃には友達というものが沢山出来ていた。
(よし、楽しく過ごせそうだな)
不安ばかりだったが、これからの学校生活が楽しみになってきた。
仲良くなった前田と話ながら廊下を歩いていると部活の話しになった。
「なあ、そういや部活どうすんだ?」
「部活?………………」
「おけ、考えてなかったのはよく分かった」
前田にぽんっと肩を叩かれ苦笑した。
「ならよ!バスケ部に一緒に入らねえ?」
「バスケか…考えとくわ」
「そこは即答してくれよ!」
騒ぐ前田を笑うと、目の前を猛スピードで何かが駆け抜けていった。
驚いてきょとんとしていると、何か落ちているのに気付いた。
「なんだこれ?………生徒手帳?」
ぱらぱらと中を見る前田の後ろから覗き込む。
どうやら同じ一年のものみたいだ、そして見たことあるような名前。
「前田、俺コイツ知ってるかも。届けてくるわ」
「え?おう!じゃあ俺はバスケ部に行ってくるな!前向きに考えてくれよ!」
ぶんぶんと手を振る前田に笑って手を上げると恐らく彼がいるであろう場所へ向かう。
(確か…こっちだよな)
校舎案内の記憶を頼りに辿り着いたのは男子バレー部が使用する体育館。
記憶は間違ってなかったと1人ガッツポーズをすると、開いていた扉から中をそっと覗き込んだ。
(おーおー、いるいる)
やはり見たことある奴で記憶に間違いはなかった俺って天才?なんて考えていると黒いジャージを着た三人組の1人と目が合った。
「あああぁぁあ!!!!!」
「ひぃぃい!!??」
指を差されて物凄く叫ばれたものだから思わず情けない声をあげてしまった。
こう見えて(どう見えてるかは知らないが)気は小さくビビりだぞ!
バクバク煩い心臓を抑えていると、指を差してきた丸坊主の男子は黒髪の人に頭を叩かれた。
その横で申し訳なさそうに手招きする人物に近付くと満面の笑みで手を握られた。
「君も入部希望者かい?」
「え、いや、そうじゃないですけど…というか、手」
「え?違うの?」
きょとんとする先輩と思わしき人物は手を離す気はないんだなこの野郎と思いつつ、奥の小さなオレンジ頭を見た。
「あそこのオレンジが生徒手帳落としていったので、届けに来たんです」
ギュッと握られる手をなんとか剥がして近寄ると拾った手帳を渡した。
「もう落とすなよ」
「お、おう。ありがとな!」
ニカッと笑う青年に釣られて笑うと、用は済んだとそそくさと退散する。
「ちょーっと待った」
退散する筈だったのに、ニコニコと笑う黒髪の人物に引き留められた。
「本当に入部しないのかい?」
「え?はい」
即答すると、後ろからニュッと目付きの悪い青年が出てきた。
「何で入部しねえんだよ、コート上の鷹」
(コート上の王様)
体育館覗いた時からガンガン視線を向けてくる奴がいたから全力で無視してたけどやっぱり奴か、面倒だなーと視線を反らすと、肩を掴まれる。
「聞いてんのかよ」
「聞いてる聞いてる(だからそう睨むな!)」
腕を剥がすと、ジッと目の前の人物を見る。
「影山飛雄、俺からも1つ聞きたい事あんだけどいいか?」
「あ?なんだよ」
「俺がバレーをしないと君に何か支障でもあんの?」
北川第一出身影山飛雄、彼は優秀なセッターだ。
そんな彼が有名なように、少なからず有名だった部類に入る自分がバレーをしないのが彼は不思議なのだろう。
だけど、俺がバレーをしないことによってなにか支障でも起きるのか?と問われたらそうではないだろう。
案の定、影山はむぐっと口を閉ざした。
よし、王様に勝った!と内心ガッツポーズしてると、横からキラキラした視線を感じ取った。
「本物はやっぱかっけー…」
オレンジ頭の青年を見ると、ハッとした様に口を開いた。
「俺!1年1組の日向翔陽!よろしく!あと、生徒手帳ほんとにありがとな!」
「1年2組の眞島晴樹だ。よろしく。どういたしまして」
そう返事をすると、ぱたぱたと日向は腕を動かしながら話し出した。
「俺、お前のプレーすっごいなーって思ってさ!小さな巨人が一番の目標だけど、その前にお前より高く飛ぶのも目標でさ!」
そう話してくれる日向の頭を撫でると、苦笑いした。
「そう思ってくれるのは嬉しいけどさ、もうバレーはしないし俺は飛ばない。リベロだし。それにお前、よく飛ぶじゃん」
去年の試合、見たから実は知ってると笑いながら伝えると、日向は照れたように笑った後きょとんとした。
「え、バレーしねぇの?」
「うん、しねぇの」
そう告げてひらひらと手を振り、先輩達に頭を下げると体育館を後にした。
「残念だなあ…」
「それよりアイツ、なんかおかしな事言ってなかったすか?」
「リベロって言ってたな」
頭にハテナを浮かべる先輩達の後ろで、影山と日向が騒ぎだした。
「よ!おはよ!」
「…おはよ」
「なんだよテンション低いぞ眞島!」
朝教室へ入ると俺の席に日向が座って前田と仲良く話していた。
「お前ら友達だったのか?」
「いや、さっき初めて知り合った」
「そうそう!」
気が合うのかケラッケラと笑い合う二人に苦笑すると日向がジッと見てくるのに気付いた。
「なんだ?」
「昨日言ってた事だけどよーんぐっ!?」
話し出した日向の口を塞ぐと腕を掴んで教室から連れ出す。
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