リベロとエース
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「失礼しました」
翌日昼休み、職員室から出てきた晴樹は影山と日向に遭遇した。
「あれ?こんなとこで会うなんて珍しいな。2人でどっか行ってたのか?」
「旭さんとこ」
「手応えあったの?」
無言になる2人にそっかと息を吐いた。
「ところでお前は何してたんだよ」
「ああ、武田先生に用があったから」
「武田先生に?」
「おう。ちょっと所用があるから練習遅れるって言いに来たんだ」
「「ショヨウ?」」
おいお前らその頭に浮かぶハテナは所用の意味をわかってないのか、用事ってなんだろうってやつなのかどっちだ。
バカ2人に息を吐くと、旭さんの事を思い浮かべた、自分も会いに行ってみようと。
「思ってたより早く終わったな」
鞄を手にすると体育館に駆け出す。
係りの仕事を変わって欲しいと言われたから今日だけ変わったのだ。
その為に練習に遅れると先生と澤村さんには伝えていたが思ったより早く終わったのでよかったよかった。
タッタッタと走っていると、少し離れた所に旭さんを見付けた。
「………」
何かを考えながら歩いてる様に見え、歩いてきた方向を見ると体育館の方だった。
それを見て追い掛けると、ひょこっと顔を覗き込んだ。
「こんにちは」
「うぉおっ!!?」
随分と驚いた様子の旭さんにすいませんと謝る。
「改めまして、1年の眞島晴樹です。少しお話しませんか?」
「……うん、いいよ」
力なく笑った旭さんにニコリと笑った。
学校を出て少し歩き近くの土手に来ると旭さんは足を止めた。
スッと座った旭さんの隣に座ると、ジッと見つめて口を開いた。
「言い方悪いですけど旭さん、潰されたんですよね」
「…そうだね」
「撃ち抜くイメージ見えなくなって、必ず止められるってビビって自分で自滅して、トスを呼ぶの怖くなりますよね」
そう言った晴樹を驚いた様に東峰は見た。
「俺、中学の時エースって呼ばれてて、皆のトスは基本的に俺に集まって」
目を閉じると中学時代の事が頭に浮かぶ。
「もちろん、エースって呼ばれるからには点は取りました。だけどある時俺も潰されちゃって…だけどバレーは好きだからもう一度ネットの“向こう側”が見たくて、ボールの“重さ”が手に当たる感覚が好きで、だから負けない様に力も高さも付けました」
「…………」
「その後色々あって一度バレーは辞めたんですけど…やっぱりバレーが好きだから、烏野に来て皆の後押しがあって再びコートに戻りました」
そう言ってニコリと笑う。
「俺、旭さんの気持ち全部じゃないけどわかりますよ。何があったか詳しくは知らないですけど、点を取れない自分の事を、責めて欲しいのに烏野の人は責めなかったんですよね?」
「!?」
「だから余計に責任感じて、行かなくなって、戻り辛くなって…行けなくなって…今そんな感じですかね?」
窺うように旭さんを見ると力なく笑った。
「エスパーみたいだね、君。ほとんど当たってるよ」
はぁ…と息を吐きながら項垂れる東峰に晴樹は手を出した。
「旭さん、まだバレーは好きですか?」
「俺は…」
「少しでも好きな気持ちがあるなら、一緒に行きましょう」
顔を上げた東峰は力なく笑った。
「すいません、遅れましたー!!!!!」
ガラガラと体育館の扉を開けると勢いよく頭を下げる。
「何だ遅刻か!!ナメテんのか!!」
「すいませ…ん?」
聞きなれた声に顔を上げるとあっ!!と怒鳴った人物を指差した。
「繋心さん!?」
「晴樹!?」
向こうも驚いた様に指を差して固まっていた。
「眞島君は烏養君とお知り合いですか?」
「え、まあ…でも何でここに?」
「音駒との試合までだがコーチをするんだ」
「へぇ~」
烏養繋心、烏野出身で烏養監督の孫。
まさかこんなところで会うなんて…と驚いたがそうだ!っと澤村さんの元に近付いた。
「あの、予定より随分遅れてすいませんでした」
「確かに、聞いてたより大分遅かったな。いったい何してたんだ?」
黒いオーラを出す澤村さんにヒッ!と悲鳴を上げながら体育館の入口を見た。
「あれ?」
「ん?」
「ちょっと待ってくださいね」
体育館の入口から外を見ると緊張した面持ちの人物が固まって立っていた。
「もう、何してるんですか」
「いや、だってさ…」
「ほら、早く入りましょ」
手を掴むと体育館の中に連れ込む。
「あっ、アサヒさんだっ!!!」
「旭さん!?」
嬉しくて微笑む田中や日向、ジッと見つめる西谷、各々の反応を見せた。
晴樹は東峰から離れると澤村に頭をもう一度下げた。
「えっと…色々あって遅れました本当にすいません」
「…旭を連れてきてくれたんだな」
「連れてきてと言いますか…まだ好きなら行きましょうって言っただけです」
顔を上げると、澤村は笑った。
「そうか、ありがとうな」
「いえ…それより、1時間程外周してきます」
「え?」
驚いた様子の澤村に苦笑する。
「あまりにも遅れすぎたので、それでは行ってきます!!」
「あ、おい!!」
呼び止める澤村に振り返らず、晴樹は体育館を出ていった。
「ん?晴樹はどこに行ったんだ?」
「えっと…大分遅れたからと自ら一時間程外周に…」
「あ~またか。アイツ変なところで真面目だから好きにやらしとけ」
「は、はあ…」
がっはっはと笑う烏養に澤村は呆気にとられた。
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