両片思いを拗らせた結果
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「…全部、新開から聞いた」
その空気を破ったのは寿一で、言われた言葉に目を丸くした。
「お前達の事だから口を出すつもりは無いが、お前が悪い癖を出してるようだからこうやって来た」
「悪い、癖?」
「自分でこうと決めたら人の話を聞かないところだ」
最近は治っていたのにな、それだけショックだったんだな。
含み笑いをした寿一に頭を撫でられ困惑していると彼は新開の肩をポンと叩いた。
「ちゃんと話せよ」
「ああ、ありがとう寿一」
寿一が屋上を去り、私と新開が残された。
「舞子、話しても?」
「…どうぞ」
「俺、今日の朝自転車乗れたんだ。本気で」
「⁉︎そう…良かったね」
「舞子が励ましてくれたからだ」
そういって笑みを浮かべる新開に恥ずかしくなり視線を逸らした。
「話ってそれだけ?」
「いや、まだある…今までごめん」
今まで、恐らくセフレとして過ごしてきたこの一年間のことだろう。
「謝らないでよ、別に謝られるような事してないでしょ」
「さっきさ、寿一が俺から全部聞いたって言ってたよね?俺も聞いた、舞子の事」
「え?」
驚いて顔を上げるとそこには優しい顔した新開がいた。
「今まで気持ち踏みにじってきてごめん。辛い思いさせてごめん、セフレなんてさせて…ごめん」
「踏みにじるって、なにがよ」
シラを通し切りたい、そう思って言葉を吐いたが無駄だった。
確かに寿一は全部話したみたいだ、私の気持ちを。
「セフレの話を持ち掛けたのは…恐怖とワガママだったんだ」
「恐怖とワガママ…?」
「そう、舞子を誰にも取られたくないって恐怖と繋ぎ止めたいワガママ」
舞子は優しいから、恥ずかしがりながらも困惑しながらも逃げないと思って吐いた言葉。
「取られたくないって、何よ…」
「…全てが遅くて順序も逆になったが、おめさんが好きだ。好きすぎて誰かに取られるのが怖かったんだ」
「………は?」
「今朝、友達だって言われてムッとして空き教室に連れて行った、セフレの話を持ち掛けたのは俺だったのに名前を呼ばれない事にイラっとした、関係を終わらせようって言ったのはおめさんにもう辛い思いさせたくないのと、正直に当たろうと思ったからだ」
新開の話に目を丸くしてまさかと思いその目をじっと見つめたが嘘を言ってる様子は無かった。
「本気で、言ってんの?」
「おう」
それが本当なら、嬉しいけど、でも…
「舞子、おめさんが好きだ。勝手な事を言ってるのはわかってる。でもおめさんが好きなんだ」
関係が崩れるのが怖い、繋ぎ止めたいと思っていたのは私だけじゃなかったのか。
「新開…本気で言ってる…?」
「もちろん」
「わ、私は、ずっと…隼人のこと、」
涙が流れてきて上手く話せない。
ふわっと抱きしめられその逞しい胸に頭を預けると、深呼吸した。
「私も、ずっと好きだった…私達、お互いバカだったのね」
お互い気持ちが読めなくて、片思いと思い込んで、でも離れたくないし離したくないから体で繋ぎとめようとして。
「大バカね…」
「大バカだ」
頭を撫でられ、顔を上げると目に入ったのは泣く新開の顔。
「なんであんたも泣いてんのよ、バカ隼人」
「なんでも、さ」
そう言って降りてくる唇にそっと目を閉じた。
あの後、寿一には謝りに行った。
やっと収まったかという言葉になんだか恥ずかしくなった。
ファンクラブの人は隼人が牽制したらしく、一気に大人しくなった、でも数は減るどころか増えてるみたいで新開マジックが起きていた。
季節はすぎて春、今年三年に私達は上がる。
最後のインハイに向け多忙になる隼人と会う時間はほとんどなくなるけどまあ良いかと笑う。
お互い拗らせていたけど気持ちが変わる事がなかった二人だから大丈夫という根拠のない自信に溢れている。
「舞子、始業式始まるぞ」
「今行く!」
これからは彼女として彼の隣に入れることが嬉しくて、にっこりと笑った。
END
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