本丸での新生活
名前変更
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次の日、目覚めると自分の周りには小さな少年達が沢山いて驚いた。
少年達も突然目を開いた自分に驚いたのか慌てて去って行った。(元気でよろしい)
身支度をして毎朝の日課となっている鍛錬を行い、こんのすけと朝食を食べる。
「主さま、本日はどのようなご予定ですか?」
「そうだねぇ…そろそろ手入れも終わっているだろうし、刀剣の様子を見に行こうと思う」
「なんと!」
顕現なさるのですね!と喜ぶこんのすけの言葉には答えず、残りの朝食を流し込む。
片付けを終えると、手入れ部屋へと足を進めた。
「おはようございます」
きっと中に刀剣は集まっているだろうと見込んで挨拶すると、予想通り揃っていた。
スッと座るとワラワラと式神が集まってきた。
やりきった様子を見る限り、全刀剣の手入れが終わったのだろう。
「お疲れ様でした」
そう言って懐から金平糖を出して配った。
とある男によくあげるようになってからつい癖で持ち歩いているのだ。
喜んでいる式神にほっこりし、スッと前を見た。
「さて、皆様との対話を避けるわけにも行きませんので、お話しましょう。といっても、まだお互いの意見が纏まっていませんので、皆様は霊体のままでお願い致します」
桜はそう言って一枚の札を取り出すと自分の体にペタリと貼った。
「さて…これで皆様の声は聞こえるようになりました」
「はっ!どうせ嘘なんじゃねえのか?」
「嘘じゃございませんよ?えっと…和泉守兼定さん」
ニコリと笑いながら言うと、騒がしかった面々は静まった。
「まず、皆様に言いたいことがございます」
桜の言葉に、誰かが唾を飲み込む音がした。
「この度は、人間風情が神である皆様に行った仕打ち、大変申し訳ございませんでした。到底許せる行為ではございません」
そう言って、深々と頭を下げた。
「………」
長い沈黙の後、ゆっくり頭をあげる。
「あの女に関しては、然るべき処罰がなされると思います」
主に神山とか神山とか神山に。
同じ神として怒りが無いはずないし、政府の人間としているみたいだから直々に何かしているだろう。
御愁傷様、と心の中で唱えた後周りを見る。
「では、本題に。まず、私の名前は雪風桜と申します」
「あ、主さま!真名を名乗るのは…!」
「こんのすけ、大丈夫だよ」
てか、その真名が~っていうのもあるんだ。想像のお話じゃないんだ。
なんて、場違いな事を考えていると誰かの声が響いた。
「大した自信だ。なぜそう言い切れるのか…教えてはくれぬか?“桜”」
奥にいた、見目麗しい男性が口元に笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「神の縛りというものは、この私には意味をなさないからですよ」
にっこりと微笑みながら答えると、おや?っと男子は首を傾げた。
「確かに…そのようだ。この俺の言葉に何も反応せぬとは」
その口振りから何かを仕掛けて来ていたようだ、だが残念。
あの付喪神達も言っていたが、世界を渡りすぎてあの2人に関わりすぎた私の体には神気なるものが宿り、通常よりも神に近しい存在の人間になった。
それに、私はあの2人の眷属に近い。
勝手に上書きされる様な事は無いだろうと踏んで名前を名乗ったのだ。
(読みは当たっていたか)
それにしても、危険な奴だなと思いながら、涙目のこんのすけの頭を撫でて前を見据える。
「あれやこれやと話すのは面倒なので、とりあえず私の言いたい事を言わせて頂きます。私はとある使命を授かりこの世へやって来ました」
桜の言葉に、その場の空気が緊張に包まれる。
「その為の本拠地として、ここに住まわせて頂きたいと思っております。というか住みます。審神者業もしろと言われたのですが…向こう一年分の資材と資金は貰っているので、よっぽど阿呆な使い方をしない限りは楽ができます。その為に皆様との共同生活を送る事になります」
「共同生活って…あんたを主として働けって事だろう?俺たちの事を持ち上げておきながら、あの女と同じ事をするだけだろう」
誰かの言葉が響いた。
(まあ。そう言われるよね)
出そうになる溜息を飲み込み、前を向く。
「皆様に働けとは言いませんよ。出陣は自分でもどうにかなりそうでしたので、出陣しろと言われたら私が行くつもりですし、皆様は好きに過ごして頂いて問題はないですよ。私に関わりたくなければ関わらなくて問題ございません。はじめに言ったように、私を見たくなければ姿を見せないよう努力はしますので、この本丸にいる許可だけくだされば問題ございません」
桜は笑った。
「本当なら…皆様に辛い事をしたあの女の同種である人間として、この本丸に関わらないのが一番良いとは思ってますが、私も知り合いの神様からここを拠点に働いてくれと言われたので」
よろしくお願い致しますと再び頭を下げた桜に、複数の刀剣が口の端を引きつらせていた。
「さて、長々とお話しましたが、私がここに住む事に異議がある方はいらっしゃいますか?まあ聞きませんけど」
そう言うと、体に貼っていた札を剥がした。
「とりあえず、顕現というものを行いますけど、いきなり刀を振ったりしないでくださいね。流石にここは狭いので。斬りたいなら他の場所で、私以外が怪我をしない場所でお願いします」
桜はそう言うと、近くの刀から名前を呼び始めた。
(なんとも、変わった奴だ)
知り合いの神に頼まれたからとはいえ、こんな危険な場所に住むなんて、馬鹿に違いない。
刀剣男士達の意見は、あいつは馬鹿だという事で一致していた。
(ブラックな奴らを摘発するとはいえ…そんなのどうすりゃ分かるんだ?)
全刀剣達を顕現させた後日、桜は念の為に刀剣男士は通れない結界を張った自室で、支給された機械を弄っていた。
タブレットが2つあったのでこんのすけに使い方を聞いたら、1つは政府支給の物で既に政府経由の通販を使用した事のあるものだったが、もう片方はわからないとの事だった。
(まあ、変な感じはしないのであの2人からの支給品って事は分かるんだけど…)
ネットサーフィンをしながら頭を捻る。(嬉しいことに、このタブレットはこの世界の本丸の外…日常のネットに接続できる。政府の通販サイトではなく、某動画サイトとかも見れるの嬉しい)
桜はついつい行なっていたネットサーフィンをやめると、かなり主張の激しいアプリを見つめた。
(この黒い丸のアイコン…絶対そうだよね。まんまだよね)
ブラックな本丸だから黒い丸。あの2人なら考えそうな単純なアイコン。
意を決してアプリを起動させると、複数の掲示板に繋がった。
「………ここから探せって?」
掲示板ありすぎて困る。
桜は頭を抱えそうになりつつ、一際目立つ掲示板を選択してみた。
「ん?」
その掲示板には、スレッドが一つしかなかった。
それを開くと、1つの投稿が。神山のようだ。
(……なるほどね)
そこには摘発についての事が書かれていた。
~ブラック本丸の探し方~
・見つけ次第、神山名義でここに情報を記載
・複数の掲示板を見て不穏な投稿が無いか確認
・演練での情報収集
etc…
桜は書かれていた事を確認すると、伸びをした。
(演練は刀剣男士を連れて行かないといけないから、パス。定期的に掲示板を回るかー)
伸びた状態のまま寝転がると、なにかの気配を感じた。
「…………」
少し空いた襖から、こちらを見る小さな虎。
「………おいで」
手招きすると飛んできた、可愛い。
何故か昔から猫科の動物には好かれる。有難い。
可愛いなーと撫でくり回していると、どこからか声がした。
「虎くーん。どこですかー?」
(この声は…五虎退君か)
襖を更に開けると、驚いた様子の五虎退と目があった。
「はい、どうぞ」
結界の外へと虎を差し出すが、五虎退は固まったままだ。
「五虎退君?驚かせてごめんね?ほら、虎ちゃん」
「‼?あ、ありがとうございます…!」
五虎退は虎をそっと受け取った。
(この子は虎の事もあってよく出会うなぁ…)
「あ、あの…」
「…………え?」
「その、頭…」
「………ごめんなさい」
桜は気付かないうちに五虎退の頭を撫でてしまっていた。
(この自然と頭を撫でてしまう感じ、中々やるな…)
なんて勝手な事を考えていると、ドタドタと本丸を誰かが走る音がした。
「僕といると変な目で見られてしまうので、どうぞもう行ってください」
桜はそう言って襖を閉めて溜息を吐いた。
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