最後の戦い
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(あの老女はやばい。私が相手しないといけない)
地上へと向かう途中も敵が襲って来たが全て倒しながらなんとか地上へ戻る。
外から聞こえる悲鳴に飛び出すと、溢れんばかりの遡行軍と、遡行軍から怪我をした審神者を守る刀達、その光景を見て笑う老女が目に入った。
「おや、もう出て来たのかい」
(そんなに時間が経ってないのに、この惨状とは…)
人型に戻った源氏を背に、老女を睨む。
「悪いけど…これ以上は好きにさせないよ」
「強がりはおよし」
「強がり…そうだね、強がりを言っているけど」
桜は息を吐くと微笑んだ。
「私の本丸の皆は、強いよ」
そう言った時、遠くの方で遡行軍の悲鳴が上がった。
「屋敷の中は鎮圧したぞ」
そう言って笑ったのは三日月だった。
「主ー!後は外の敵だけだよー!」
「皆、ありがとう!悪いけど、もう一仕事付き合ってね!」
その言葉に四方八方で自分の本丸の皆が動き出す気配がした。
「審神者の皆さん、我が本丸の刀達に続いてください。どうぞ、お力添えを!」
桜がそう叫ぶと、ゆっくりと皆が動き出すのが見えた。
それを見て息を吐くと、髭切と膝丸を見る。
「二人とも、ありがとう。私はあの老女を斬らなければならない。だから…道を拓いてもらえる?」
「勿論だよ、桜」
「俺たちに任せておけ!」
桜は微笑むと、刀を抜いた。
「さあ、行くよ!」
そう言って走りだした。
桜の前を行く髭切と膝丸は次々と敵を倒していき、道をつくる。
老女への道が開けた時、桜は更に加速をして刀を振るいながら老女へと切り掛かった。
「全く、少しは大人しく出来ないのかい」
「今大人しくしたら、負けだからね」
「それもそうだねぇ…」
そう言いながら腕を振った老女から離れる。
「全く、あまりこの姿は見せたくなかったが…仕方ないねぇ」
老女がそう言うと、パキパキっと音がして老女の顔のひびが広がっていく。
それがポロポロと剥がれ、黒い肌が見え始めた。
「この姿を見せるからには、誰一人……ここから生きては逃さないよ」
ニヤリと老女が笑った時、小さかった老女は遡行軍の大太刀2~3体分はあるであろう巨大な姿へと変わった。
「質量保存の法則って知ってる!!?」
「そんなの、どうとでもなるからなぁ」
そう言ってどこからか取り出した大太刀が振られて避けると、横から強い衝撃を受けた。
(なにっ……!?)
地に打ち付けられ、ゲホッと咽せながら何がぶつかったのかと視線を向けるがそこには何もいない。
「流石にこれくらいでは死なないか…」
そう言った老女の手に浮かんでいたのは、黒い球体だった。
「それは…」
「簡単にいえば闇の力の塊、といったところだろうねぇ。こんなもの、いくつも作り出せるよ」
そう言うと、バッと黒い球体の数が増えた。
「さあて、避けられるかね」
「くっ…」
立ち上がると球体の猛攻を避ける。
だが、数が多すぎて幾つかは当たってしまう。
(これは、かなり面倒だ)
この球体をどうにかしなければ、アイツに近づくことは難しいだろう。
さあ、どうしようと考えながら懐に手を入れて札を取り出す。
隙を見てどうにか老女へと投げようとするが、避けるのでいっぱいだ。
桜が防戦ばかりになっていると、一つの影が老女へと刀を突き刺した。
「くっ…なんだい、全く」
振るわれた腕から避けたのは、小夜だった。
「小夜!」
「ぼ、僕もいます…!」
「あるじさまをおまもりしますよー!」
「主君のために!」
次々と現れたのは短刀達だった。
「ちょこまかと鬱陶しいねぇ」
球体や大太刀を振るい短刀達を払おうとしている老女の後ろに三つの影が現れた時、老女の体から三本の槍が突き抜けて来た。
「串刺しだ!」
「隙あり!」
「後ろがガラ空きだぜ」
槍達の攻撃に老女は一瞬怯んだが、すぐに体を捻り薙ぎ払った。
「ほらほら、こっちにも気をつけないとねっ!」
「斬ります」
「厄落としだね」
次に現れたのは大太刀の三振りで、老女はその腕を斬り付けられる。
「グッ……小賢しい!だが、こんなもの…!」
斬られた腕はすぐに再生し、三振りへと振られるがそれは再び斬られる。
「俺もいるからねっと!」
腕を切り落としたのは蛍丸で、その後ろから愛染と明石も飛び出してくる。
「オレも負けてらんねぇな!」
「ったく。自分、動くんあんまり得意と違うねんけどなぁ」
老女は二振りに斬りつけられ、少し後退りをした。
「大将、今のうちにこっちへ」
「うわっ」
腕を引かれ振り返るとそこには薬研がいた。
「応急処置だ」
「ありがとう」
礼を言ってテキパキと対応してくれる薬研から老女へと視線を向ける。
「弟達や他の者も時間を稼げるだけ稼ぎます。勝機はありますか?」
「……うん、多分あるよ。一期」
現れた一期に頷くと、一期も微笑んで頷いた。
「それでは…私も皆の元へ向かいます」
「ありがとう」
地を蹴った一期を見送ると、バシッと背中を叩かれた。
「よし、手当ては済んだ。俺っちも…行ってくるぜ」
薬研も走り出し、その背を見た後に深呼吸をした。
(皆が時間を稼いでいる間に考えよう)
あの老女には普通の攻撃も通じるようだが…ただ斬り落とせるだけで実質的なダメージが入っているようには見えない。
外からがダメならば中からになるが…中からどう攻める?
桜は目を閉じ、この世界でのことやそれより前の世界のことを考える。
何かヒントはないかと。
少しして…一つのことを思いついた。
「そうだ…私には神気が宿っている。それを中から注ぎ込めば…」
何か起きるかもしれない。
ザッと立ち上がると、スーッと息を吸った。
「総員に告げる!私の道を拓いてほしい、ソイツの動きを、少しの間止めてほしい!」
桜がそう告げると、本丸の面々は頷き老女へと向かっていく。
「おやおや、私の動きを止めてどうするんだい?」
楽しそうに目を細めた老女を無視し、地を蹴る。
手に持つ短刀に力を集中させ、気を高めていく。
刀を使い、腕を使い、老女の動きを止めてくれる皆に感謝しながら足に入れる力を強める。
「何をしても無駄だよ」
「…かもしれないけど、試す価値ありってね!」
距離を一気に詰めると、老女の腹部に短刀を突き刺した。
「ぐっ…硬い……」
「刺さりが甘いね。さて…そろそろいいかしら」
グググっと動き出した老女を、刀達が必死に抑え込む。
(くそ、刀を完全に埋め込みたいのに)
硬くて鍔にすら到達してない。
ギリっと歯を食いしばった時、後ろから手が添えられた。
「主よ、待たせたな」
「拙僧も手伝おう!」
力自慢の岩融と山伏が力を入れると、刀は徐々に老女の体へ埋まっていく。
「ありがとう、助かる」
そんな二人に感謝を述べると、老女が更に動き出す。
「ええい、煩わしいねぇ」
腕を振り、足を動かし刀達を剥がそうとする。
「huhuhu…蜻蛉切、何をしているのですか。逃げてシまいますよ」
「わかっている、村正。もっと抑えつけろ!」
「静形、そちらを持て」
「巴形こそ、しっかり持て」
「あーるじ、他の箇所はあらかた対処したよ」
「俺たちも…コイツを抑えよう」
次々と集まってきた皆が、更に老女の動きを封じ込める。
自分の後ろにも、力強い刀達が増え共に短刀を埋め込もうとしてくれている。
「皆…ありがとう…!」
桜は気合を入れ直すと、手に更に力を込める。
「入れーーーー!!!」
「全く、そんなに必死になっても……私のことは止められやしないよ」
老女がそう言ったと同時に黒い球体が現れ、ハッとする。
「皆、逃げて!」
そう叫ぶが一歩遅く、皆が傷付けられていく。
(くそっ、別に追い詰められて手足を振っていたわけではなく、虫を払うように手足を動かしていただけか……!)
まだ余裕がある老女に舌打ちをするが、桜は決して短刀から手を離さなかった。
「力を貸してくれていた皆は、倒れてしまったよ?」
老女の言葉に視線を巡らせると、傷付いた面々が見えてグッと唇を噛む。
「今すぐ駆け寄りたいけど……お前を倒してからだ!」
「全く…お前さんじゃ無理だよ」
(もう少し……!)
皆のお陰で柄まで埋まったが、後少しが埋まりきらない。
桜は一瞬手を離して印を結ぶと分身を作り、刀を押し込むことに全力を注いだ。
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