怪しき本丸の真実
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「やあ、待ってたよ」
政府の建物前へと着くと、入り口前で神山が待っていた。
「一人で来たんだ?」
「怪しいやつに私の刀を近付かせる訳にも行かないから。それより梔子さんの様子って、何?」
「うーん、相変わらずの塩対応だね。まあ、実際に見てもらったらわかるよ」
神山はそう言うと、中へと入っていく。
その後ろに続くと、職員達が神山に頭を下げるのが目に入る。
(こいつ…本当にどんなポジションにいるんだ……?)
そんな事を考えながら、政府の建物の奥、更には地下へと歩みを進めていく。
地下に囚人を捕らえているようだ。
「ここだよ」
1つの部屋の前へと着くと、神山は止まり振り返った。
「ここに梔子君がいる」
そう言うと部屋の扉を開いた。
部屋の中は随分明るく、地下なのに陽の光が入ってきているようだった。
いや、入ってきているな。
なんなら部屋には窓があって窓から庭が見えている。
「……ここって地下じゃ…」
「地下庭園ってやつだよ。囚人とはいえ、暗いと気が病むだろ?」
その言葉に乾いた笑いを溢すと、窓際に座る人物へと目を向けた。
(梔子さん…)
窓際で椅子に座り、ボーッと外を眺めているのは梔子だった。
その顔は、何か憑物が落ちたように穏やかだった。
「随分と様子が違う…」
「君が彼女を捕まえてここに来てから行った身体検査で判明したんだけど…これが原因かなって」
神山がそう言いながら取り出したのは、1つのお守りだった。
「これ…」
「うん、呪具の一種だよ」
恋愛成就と書かれた、何処にでもありそうなお守り。
そこからは、微かだが禍々しさを含んだ気配を感じた。
「もう壊れてしまっているこれを…何処で手に入れたのか聞きたいのだけど、どうにも彼女は口を開いてくれなくてね」
「…それで私を呼び出したと」
「そのとおり」
笑みを浮かべる神山に溜息を吐くと、お守りを受け取った。
「あんたの神様パワーでなんとか何ないの?」
「他にもやる事があってねー。いやー忙しい忙しい」
ワザとらしい態度にイラッとしたが、我慢して部屋の中へと入る。
後ろで扉が閉まった気配を感じながら、梔子の対面にあるもう一つの椅子へと座った。
正面に座ってもこちらを気にせずに外を眺める梔子。
(さてと)
神山は梔子の様子を見て欲しいと言っていた。
そして渡されたお守り。
要するに、このお守りを何処で手にしたのか聞き出せと言うことだろう。
桜は1つ深呼吸した。
「……梔子さん」
声を掛けるが、反応は無い。
(抜け殻みたいだな…)
「梔子さん、こんにちは。僕の事覚えていますか?」
「…………」
「貴女を…有明殿の屋敷で捕縛した者です」
有明、その言葉に梔子はピクリと反応した。
「有明…様?」
虚だった梔子の目に光が戻り、視線が交わる。
「……貴方は…」
「こんにちは」
ニコリと笑いながらも、何かされてもいいように身構える。
梔子はその様子に気付く事もなく、桜を驚いたように見ていた。
「なんで…貴方がここに…」
「政府に関わりのある人間、って事ですよ」
「……そうですか」
梔子はそう返事をすると、再び窓の外へと視線を向ける。
「…………」
「…………」
「……有明様は、ご無事でしょうか」
「…⁉……はい、すっかり調子を取り戻しているとの事ですよ」
「…よかった」
梔子は、外を眺めながら安堵の表情を浮かべた。
(以前の様子から、何か仕掛けてくるかと思ったけど…その素振りはない。随分と様子が違うのは…コレが関係しているのか?)
手の中のお守りをチラリと見る。
「…その節は、ご迷惑をおかけいたしました」
そう言いながらこちらを見た梔子は、頭を下げた。
「……随分とご様子が違いますね」
桜は率直に伝える。
「……そうですね。自分でもそう思います」
梔子は、そう言って苦笑した。
「コレが原因ですか?」
手にしていたお守りを梔子の前に出す。
梔子はそれをジッと見た後、再び外を見た。
「………梔子さん?」
「…………」
(黙り込んでしまった…)
口を開かないとはこういう事か、と納得してお守りに視線を落とす。
「……梔子さん、何処でコレを?」
「……………」
「有明殿の事は元から好きだったのですか?それとも…コレのせいで好きになったのですか?」
「違う!」
桜の問いかけに、梔子はキッと睨み付ける。
「私の…私のこの気持ちは、本物よ……!!」
そう言った梔子の目は嘘を言っているようには見えなくて、桜は頷いた。
「そのようですね。どのような術かは知りませんが…有明殿はギリギリで生きていた状態。下手をすれば死んでいました。彼を殺したかったのですか?」
「違う……!」
「なら…やはりコレが、貴女を動かしていたのですね」
梔子はバッと立ち上がると後ろへとたじろぐ。
桜はジッと手の中のお守りを見ると、ギュッと握りしめた。
「梔子さん、教えて下さい。貴女や有明殿のような被害者を出さない為にも」
その言葉に、梔子は目をキョロキョロと動かす。
(………何かを探している?)
その様子に辺りを見渡すが、何も見当たらない。
(いや、探しているのではない……恐れている?)
彼女は何かに恐れているようだった。
(ふむ…ならば)
「梔子さん、手を出して下さい」
「えっ……?」
「さあ」
微笑みながらそう言う桜に梔子は戸惑うが、恐る恐ると手を差し出した。
その手をそっと握ると、ふうと息を吹きかける。
人を守るちょっとしたまじないだ。
「……暖かい」
「僕のおまじないです。貴女を守ってくれます」
「…守る?」
「はい。だから…安心して話してはもらえませんか?」
桜の言葉に梔子はギュッと手を握りしめ、そっと椅子に座り直した。
→