戦力拡充計画と放棄された世界
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まあ、それは当事者達の問題だからとやかく言うつもりはないが…それよりも気になるのは…
「ひっく…俺は、信長様にあんなに愛してもらったのに…信長様にも、蘭丸にも…」
何も返せなかった。
そういって(甘酒を)飲んだくれている不動当人だった。
(あー、色々あるのはわかってる、わかってるから口出しはしない方がいいのは理解してるけど…)
こう、ダメ息子を見ているようで、口出ししたくなる。
「…不動が、どうかしたのですか」
「え?あ、いや…なんでもないよ」
宗三に声をかけられ、慌てて不動から視線を外す。
「なんでもないという顔をしていませんよ」
「……いや、なんというか…ダメ息子を見ているようでこう、母親的な意見が出そうになった」
ジト目で見てくる宗三に白状すると、きょとんとした後、くくっ…と笑い出した。
「そ、そうですか…そんな事であんなに渋い表情を浮かべていたのですか…」
「え?そんな表情してた?」
笑い続ける宗三に桜がそう言って詰め寄った時、不動がこちらを見た。
「俺がなんだって…?」
「あ、いや…」
四つん這いでズルズルと近付いてくる不動に桜は何でもないと言うが不動は止まらなくて遂に目の前まで来た。
「どうせあんたも…俺のことダメ刀だと思ってんだろ」
酔ってしゃっくりをしながらそう言う不動に、我慢の限界が来た桜は溜息を吐いた。
「あーーーーもーーーー!」
「うわ、ちょ!」
不動の頭を胸に抱き抱えると、その頭を撫でてやる。
「僕がいつ不動の事をダメ刀と言った?それに、信長は自分に何も返さなかった相手をダメな奴だと言う小さい男なのか?違うだろ!」
そう声をかけると、離れようと抵抗していた不動の動きが止まった。
「信長は確かに死んでもういない、恩を返したくても直接返せない。蘭丸もそうだ。でも、不動は刀剣男士。信長が、蘭丸が、自ら選び生き抜いたその歴史を歪めようとする敵を、倒すことで、歴史を守る事で恩を返す事は出来るだろ?」
桜の言葉に、不動の体からは力が抜けていく。
「その時にしてやれなかった事を悔いるのもその後腐るのも勝手だけど、恩を返せなかった、何かしたかったって気持ちがあるなら今何が出来るかしっかり考えなさい。自分自身をダメ刀にしてるのは不動だよ」
全く、言うつもりなかったのに言っちゃったじゃないか。
そう言いながら不動を更に抱きしめると、不動が慌てて離れようとした。
「ちょ、待って、あんた」
「暴れないの」
「いや、あんた、女じゃないか!」
更に強く胸に抱かれた事で気付いた不動は、慌てて離れようともがく。
「ちゃんと話、する?」
「す、するから!」
そう言った不動を解放すると、不動は甘酒で赤かった頬を更に赤くしていた。
「とりあえず、僕が言いたいことは伝わった?」
「つ、伝わったから!」
「……なら、いつまでもクヨクヨしてるんじゃないよ。少しずつでいいから、前を向きなさい。私がその手助けをするから」
優しい笑みを浮かべた桜に、不動は何度も頷いた。
「よし、言いたい事も言ったし、今日は解散!」
夜も遅いしね。
桜はそう言って立ち上がると、部屋を出て行った。
残された刀剣男士達は今起きた出来事に驚きつつも、とりあえず黒いオーラを纏わせている髭切と加州から不動を守らなければという気持ちで動き出した。
「という事で、戦力拡充?はもう終わった」
『流石!早いね』
自室で神山に報告を行いながらパソコンを眺める。
「あのさ、聞きたいんだけど…こういうのって他にもあるの?」
『ああ、色々あるよ。その時々によって、開く道が違うけどね。そういえば…近々各本丸に出される予定の指令があるのだが…君には先に行ってもらってもいいかもね』
「指令?行く?」
『あぁ……特命調査、ってやつさ』
電話の向こうの神山はそう言うと、「すぐに先行調査をしている刀剣男士から入電があるから受けてあげてね!」と言うと電話を切った。
それにイラッとしていると、パソコンに通信者不明の入電が入った。
(……これか?)
桜が入電を受けると、画面には目元に仮面をつけた謎の人物が映った。
『聞こえているか?』
「ああ、聞こえているよ」
そう返事をすると、謎の人物はそうかと返事をした。
『既に聞いているかと思うが…近々、各本丸にある指令が出される。歴史改変が為され、放棄された世界…その調査だ』
「歴史改変された上に放棄された世界…?」
桜が眉をひそめると、謎の人物は頷いた。
『放棄された世界、聚楽第。部隊を編成し、1590年の聚楽第の洛外より調査を開始。同時に敵を排除せよ。との事だ』
「それが、政府からの指令…か。またなんでこんな指令が?」
『…長期化する戦いに懸念を表した政府による、特別任務との事だ。実力の有無を示せ、というところだろう』
「ふーん…………気に食わないね」
桜はそう言って目を細め、画面を見つめる。
「まぁ、どっちにしろその世界は放っておけないか。わかった、一足先に向かわせてもらうよ」
『ああ…現地で待つ。なお、この調査は監査官が同行する事になっている』
「実力を見極めるため…ね」
『表向きはそうだが…こちらの本丸の実力は見る必要も無いと聞いている』
「え?それは酷いってこと?」
いやいや、最近は皆も強くなって来たんだよ?なんだ神山は私と喧嘩をしたいのか?
表情が険しくなる桜に謎の人物は慌てて声を上げる。
『そ、そういう事ではない。この本丸の実力はお墨付きだという事で見極めるまでもないという事だ』
「……それはよかった」
にっこりと桜は笑うと、謎の人物を見る。
「なら、なんで監査官が同行する必要が?」
『実力を見極める必要性は無いが、その放棄された世界で何が起きているのか確かめる必要はある。報告係ということだ。既に先行調査で聚楽第にいるが…1人ではままならない』
「なるほどね、わかった」
桜は伸びをすると、画面に映る人物を見る。
「聚楽第といえば豊臣が思いつくんだけど、敵は豊臣関連?」
『いや…確認されているのは、北条氏政なる人物だ』
「北条…?」
『ああ。だが正史で無い以上、当人であるかは瑣末な事だ』
「そう…わかった」
桜は今聞いた情報をメモすると、謎の人物を見る。
「今日は夜も遅く皆疲れている。そっちへ向かうのは明日の朝にさせてもらう」
『ああ、わかった』
頷いた人物にヒラヒラと手を振ると、通信が切れた。
(さてと…)
眠る前に一度皆に伝えないと。
パソコンを閉じると、広間へと向かう事にした。
「と、いう事です」
「放棄された世界の調査…か」
一度皆を集めた後、先ほどの事を説明する。
「向かうのは明日の朝。出撃するのは北条に関係するといわれる山姥切国広、江雪左文字。また薄緑の話を持つ膝丸……の3人は考えたんだけど後はどうしたものかな」
そう言って頬を掻いていると、服を引かれる。
「ん?」
「勿論、僕も入れてくれるよね?」
笑顔を浮かべてそう言ったのは髭切で、確かに出陣頻度が少なく不満を言っていたのでそろそろ良いかと頷いた。
「髭切も、よろしく」
「任せて」
笑顔の髭切の頭を撫で、残りの2人は…と辺りを見渡し、目当ての2人を手招く。
「前田、平野。貴方達にお願いしたい」
「勿論です、主さま」
「お任せ下さい!」
誇らしげにする2人の頭を撫でると、周りで自分も出陣したいとブーたれている面々に振り返る。
「今回はこの面子で行くが…またいつこういった調査が入るかわからない。それに備えて…鍛えておいてくれ」
桜はそう言い、にっこりと笑みを浮かべた。
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