戦力拡充計画と放棄された世界
名前変更
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「主さま!政府から通達が来ておりました」
「ん、ありがとうこんのすけ」
部屋で執務をしていると、手紙を持ったこんのすけがやってきた。
手紙を受け取ると、中を確認する。
「えっと……戦力拡充計画?」
「ああ、それですか…」
「宗三、知ってるの?」
「ええ、知っていますよ」
本日の近侍の宗三は手紙を覗き込んだ状態で頷いた。
(宗三はやたらと侍らすおつもりですかと言ってくるから敢えて侍らせてみた)
「まあ、そのまま受け取るならば戦力を充実させるための計画かと思うんだけど…新たな刀が手に入るってこと?」
「そうですね…まあ、必ずしも手に入るとは限りませんが」
「へぇ……」
桜は手紙を読み進めていく。
今回、名前が挙がっているのは不動行光、太鼓鐘貞宗、亀甲貞宗の三振りだ。
検非違使という敵を倒せば、他にもレア刀が手に入る可能性があるそうだが…
まあ、検非違使とやらは今まで会った事もないし、一旦は置いておこう。
どうやら三振りの気配を色濃く感じている場所があり、そこへの道が開かれているそうだ。
道は恐らくもって1週間、その間に探せということか。
鍛刀でも手に入るらしいが…経験値を積む為に実戦を兼ねて探しにいくのもいい経験だろう。
「期間は…明日からか」
「参加されますか?」
ジッと見てくるこんのすけに頷く。
「戦力は多い方がいいんだろ?」
「は、はい!」
目をキラキラと輝かせるこんのすけに微笑むと、その頭を撫でた。
「さて、部隊の編成を考えますか」
桜はそう言ってタブレットを手にした。
「……で?なぜこうなっているのですか?」
「え?何が?」
「だから…なぜ貴方がここにいるのですか」
ため息を吐いた宗三に桜は笑顔を浮かべる。
「ちょっと興味本位で」
その言葉に、宗三は深い溜息をもう一つ吐いた。
夜の市中、そこに桜は刀剣男士と共にいた。
近侍の宗三以外に編成は薬研と長谷部という織田に関連する刀、後は先日顕現した物吉と博多と後藤も連れている。
「そもそも、ここしゃい来て大丈夫なんか?」
「ん、大丈夫大丈夫」
「いや、大丈夫じゃないだろ」
博多と後藤はジト目で桜を見ていたが、気にせずに歩みを進める。
「あ、主!先々行かれては…」
「危ないですよ!」
長谷部と物吉が慌てるが、桜は気にせず歩く。
「大将は俺たちより強いから、大丈夫だろ」
そう言って豪快に笑う薬研に対して長谷部が何か言っていたが、気にせず歩く。
(ふむふむ、確かにどこかから刀の気配を感じるなぁ)
桜が周りをキョロキョロしていると、宗三がツイッと服を引っ張ってきた。
「貴方、前方の敵が見えてないのですか?」
「勿論、見えてるよ。ここに着いた時から気付いてたし」
その返答に宗三は溜息を吐きながら刀を抜いて、前方の遡行軍へと向けた。
「主、おさがり下さい」
「僕も……いや、よろしく長谷部」
自分を守るように前に立った長谷部に桜は頷くと、一歩下がった。
そこから始まった戦闘を見て、桜は少し笑っていた。
(宗三、薬研、長谷部は大分動きが良くなったな。新顔組も…悪くないね)
あっという間に終わった戦闘の後に、皆に労りの言葉をかけると先を目指した。
「うーん、こっちでしょうか?」
「残念、こっちだね」
「なら次はこっちだろ!」
「ざーんねん、こっちかな」
「主は本当に気配ば感じ取るのが上手かねー!」
「どうもー」
道中、新顔の3振りの探知能力確認も含めて敵がどの方向に潜んでいるかを当てながら進んでいると、あっという間に終点へと辿り着いた。
「あれがここの親玉か」
「大将、ちょっと下がっててくれ」
薬研の言葉に後ろに下がると、6振りは地を蹴った。
(宗三、長谷部、薬研は強くなってきてるねぇ…新人のカバーをしながら戦えるなんて、成長している証だ)
よしよしと1人頷いていると、あっという間に戦闘は終わっていた。
「お疲れ、皆」
「………はい、お目当てのものですよ」
ポツンと落ちていた短刀を拾い、宗三は桜へと近寄る。
桜の手に刀を預けると、宗三は少し目を逸らした。
チラリとその様子を見た後、口を開く。
「起きなさい、不動行光」
その声に応えるかのように、刀から桜の花びらが溢れ、付喪神が顕現される。
「……ひっく。俺は不動行光。織田信長公が最も愛した刀なんだぞぉ!どうだ、参ったかぁ~」
そう言って現れたのは黒紫の長髪を後頭部高めに結い、緩んだネクタイに開いた襟元と少々だらしなさが見え、片手には甘酒を持った少年だった。
「これはまた…甘酒で酔うとは随分可愛らしい」
「ん?なんだよ…あんた」
「不動!主になんて口の聞き方を…!」
長谷部が不動に詰め寄ったが、まあまあと長谷部を落ち着かせる。
「とりあえず、本丸に帰るか」
皆の成長も見れたしよかったよかったと言いながら、帰路を開くのであった。
「さてと、思ったよりもあっさりと…終わってしまったなぁ…」
桜は目の前にいる新顔を見てそう呟いた。
あの後、次の戦場に向かおうと言う新顔組を心配したものの、長谷部が任せろと言うので彼らには引き続き一緒に戦場へと向かってもらった。
(ちなみに当たり前のようについて行こうとしたが宗三に怒られたので本丸で待機することにした)
結果としては目の前にいる2振り、亀甲と太鼓鐘を見て貰えばわかるが大成功で終わった。
燭台切は貞ちゃん貞ちゃんと太鼓鐘を捕まえてずっと喜んでおり、物吉は同じ貞宗派として亀甲に本丸の案内をしている。
不動はというと…なんとも言えない。
織田の馴染みだというのに長谷部や宗三はなんとも言えない表情を浮かべているのだ。(薬研は特に普通だ)
信長が好きな不動に対して、色々と思いがある長谷部と宗三は微妙な距離感だった。
→