定例会議と怪しき本丸
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「貴方は……定例会議にいた…」
「はい、そうです。先程振りですね」
桜は微笑みながら一期を近くに引き寄せる。
「何故こちらの本丸に、いらしたのですか?」
「貴女と前田藤四郎の関係がすこーしばかり気になりまして。まあその後は貴方が噂されていた事もあり、あの場を離れるために近付くと貴方から呪術を飛ばされましたので、何かあるなと思いましてね」
「そうですか…それにしても、何故貴方には色々とバレてしまったのでしょう。呪術も効かなくて、まさか有明様も見つかるなんて」
「まあ、僕がただの人間ではないからでしょうね」
桜は引き寄せた一期に視線を向け、歌仙と有明を見る。
一期は何かを感じ取ると、頷いて二人を守るように前に立った。
「まあまあ、そうですか、ただの人間ではないのですか」
クスクスと笑う梔子を見ていた歌仙が、ゆっくりと口を開いた。
「…梔子君、何故主を隠したんだい」
「ふふっ、決まっているじゃないですか。有明様を、私だけのモノにしたかったのです」
愛しいその方を、誰の目にも触れさせず、私だけがその方を愛せるように。
狂気が宿る目でそう言った梔子を、桜は鼻で笑った。
「自分を好いてもらう自信がなかったのか、振られたのか知らないけど…随分勝手な理由だな」
「何ですって…?」
桜の言葉に、梔子は怒りの表情を浮かべる。
「貴女の言い分はわかりました。後は…政府に任せます」
「ふふっ…政府に任せるですって…?」
「ええ。ここに来る前に連絡してますし、そのうち来るよ」
「ならば、その前に有明様と共に姿を消さねばなりませんね」
梔子は微笑むと、懐から幾つもの札を取り出した。
「さあ、そこをお退きなさい!」
「一期、構えて!」
「はっ!」
桜の指示に、一期は刀を抜いて構える。
それと同時に、一期、歌仙、有明の周りには結界が張られた。
「これは…」
「僕お手製の結界さ。とはいえ、今は一期の力で発動している。気を抜かない様に」
「かしこまりました!」
しっかりと前を見据える一期を見た後、桜は梔子へ振り返る。
「貴女を捕らえます」
「出来るものなら、やってみてください!」
梔子が札を投げると、火玉や氷塊に姿を変え、身に降り注ぐ。
「主!」
「大丈夫、一期は彼らを守ることに集中して」
「ですが…!」
「守るのも、立派な戦いだよ」
攻撃を避けながらそう言った桜の言葉に、一期は頷いた。
「動きの速い鼠ですね」
「それはどうも」
次々と襲いかかって来る攻撃を避けながら、桜は隙を探す。
(あの呪札がとにかく厄介だなぁ)
どれだけ持っているのかと聞きたくなるくらい、梔子の呪札がなくならない。
どうしたものかと考え、桜は床を強く蹴り梔子に真正面から向かった。
「主!」
「真っ直ぐ向かってくるなんて、貴方馬鹿なのかしら」
梔子は更に呪札を取り出して桜へと攻撃を加える。
「一点集中で行こうと思ってね」
そう言った桜は隠し持っていた短刀を取り出すと、それを自らの前に構えて呪札を切り捨てていく。
「何ですって…!?」
驚く梔子に桜はニッと笑うと、一瞬にして床に取り押さえた。
「何が…」
あまりの早業に、いつ梔子を捕らえたのかと周りは驚いていたが、止まった攻撃にホッと息を吐く。
「ちょっと!離して!」
「そうですかと離すわけないでしょうが」
桜は手早く梔子を縛り上げ、抵抗が出来ないようにした。
それと同時に、本丸の入口が騒がしくなった。
「政府の人間でも来たかな」
「そのようですね」
刀を収めた一期に微笑み、後ろを覗き込む。
「大丈夫?」
「あ、ああ」
返事をした歌仙と、頷く有明に桜はホッとしたように微笑んだ。
「有明様…有明様……今、この梔子が、貴方様の元に」
縛り上げられた後も抵抗を続け、有明の元に行こうとする梔子の前に桜はしゃがみ込む。
「ちょっと……退いてよ…!」
「……今は眠りなさい」
梔子の額に桜が指を当て、ポツリと呟いたかと思うと梔子の意識は飛んだ。
「さて…有明殿、命があって何よりです。ここから先は政府の方に処理を任せます。事情聴取もあると思いますが、まずはゆっくりと体を休めてください。歌仙さん、近侍として支えてあげてください」
「ああ、勿論さ!」
微笑む歌仙と、微かに頷く有明に桜は微笑むと、一期を見た。
「さて、帰ろうか」
「はい、帰りましょう」
一期が頷いたのを見て、桜は歩き出した。
諸々の対応が終わり、本丸に帰ってきた頃には夜になっていた。
「ただいま」
「ただいま戻りました」
「おかえりなさーい!!」
乱が笑顔で出迎えてくれた後、首を傾げる。
「あるじさん、服着替えたの?」
「ああ、急遽別の本丸に行っててね。ちょっと変装のために着替えたんだ」
乱の頭を撫でるとぎゅっと抱きしめられた。
「お勤めご苦労様、あるじさん」
「ありがとう」
可愛いことをしてくれる乱を抱きしめ返すと、一期を振り返る。
「一期も、今日はご苦労様でした」
「いえ、これくらいどうってことないですよ」
そう言って笑った一期に桜は微笑み返すと、本丸内へと入っていく。
「皆はもうご飯食べたの?」
「うん!食べ終わってるよ。今日のご飯も美味しかったよ!」
「それは楽しみですな」
3人で会話しながら広間へ向かうと、待っていてくれたのか燭台切と歌仙が振り返った。
「おかえり」
「おかえり主、一期さん」
「ただいま」
「ただいま戻りました」
2人に返事をするとテーブルへと座る。
手早くご飯の用意をしてくれる2人にありがとうと感謝を告げると、ご飯を食べる。
「うん、美味しい」
そう言って目の前のご飯を食べながら有明の事を思い出していた。
(かなり衰弱はしていたけれど、大丈夫だろうか)
考えながらご飯を食べていると、眉間を誰かに伸ばされる。
「あるじさん、眉間に皺が寄ってるよ」
「………ありがとう、乱ちゃん」
昔、誰かさんの皺をよく伸ばしていた私が皺を寄せちゃダメだな。
桜はにっこり笑うと、食事を済ませることにした。
「ご馳走さま」
「お粗末様」
食器を片付けてくれる燭台切と歌仙に礼を言うと、ツンツンと肩を突かれた。
「ねえ、あるじさん。いち兄を纏ってるのって…あるじさん?」
「ん?そうだよ。悪い気から一期を守るためにね」
「ええ~いいなぁ。ボクもボクも!」
一期を纏っている桜の気を見て羨ましがる乱に一瞬目を丸くしたあと、微笑んだ。
「勿論、いいよ」
「やったー!!」
喜ぶ乱に微笑んでいると、コホンっと咳払いが聞こえそちらを見る。
「それは…僕たちもお願いしていいのかい?」
「え?勿論」
そわそわしている燭台切と歌仙にそう言うと、2人は笑みを浮かべた。
(んーでもそうなると他にも言い出しそうな子たちがいるよねぇ…)
桜は考えた後、微笑んだ。
「ちょっと別の形にしてみるから、明日まで待ってくれる?」
「別の形?」
「うん」
桜はそう言って笑った。
その後、皆と別れると入浴も終わらせて自室へと戻ってきた。
(とりあえず、報告書作って…)
机に向かい面倒だが神山への報告書を作成する。
今日も適当な報告書を送信すると、巾着を漁って部屋へと目当ての物をばら撒いた。
「一丁やりますか」
桜はそう言って笑った。
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