定例会議と怪しき本丸
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(いやー、お口に合ったようで良かった)
伊達の刀にとっては馴染み深いであろうずんだ餅、作ったものの緊張してたんだよね。
グラスを洗いながらそんな事を考えていると、今日の近侍である堀川が小走りで近寄って来た。
「主さん!政府からの通達が来てますよ!!」
「通達?ありがとう、堀川」
手紙を受け取り内容を確認すると、審神者の定例会議に関する連絡だった。
「ほう…審神者の定例会議……」
桜は首を傾げた。
「えっと……これって出なきゃいけないの?」
「まあ…一応……そうみたいですね」
「えぇ…面倒だね…」
苦笑する堀川に手紙を届けてくれてありがとうと感謝すると、自室に戻る。
「ああ、戻ったか」
「……なんでまだいんの」
自室の襖を開くと、そこには呑気にお茶を飲む三日月がいた。
「ごめんね主。主がゆっくり出来るようにしたかったんだけど…梃子でも動きそうになくてね」
その横には、一緒にお茶を飲む髭切がいた。
「うん、まあ……今日は、別にいいよ」
ニコニコ笑うマイペース二人の笑顔に毒気を抜かれ、そう言うと机に向かう。
手にした手紙を睨んでいると、後ろからひょこっと髭切が覗き込む。
「審神者の定例会議…?」
「うん。審神者同士が集まって色んな情報交換するんだって」
(まあ、近侍を連れて行かないといけないみたいだから、ブラック本丸を見極めるのにもいいかもしれないけれど…)
面倒だよね!行きたくないよね!
乗り気じゃない様子の桜の後ろから、三日月も手紙を覗く。
「ふむ…近侍として刀剣男士1人の同行を許す、か」
三日月は何か考えた後、ニッコリと笑った。
「良いぞ。俺が同行しよう」
「……え?いや、別に行く気は………」
「行かぬのか?ぶらっく本丸とやらを見つけれるかもしれないのに?」
ニコニコと笑いながら詰め寄ってくる三日月にどうしたものかと考えていると、横からグイッと腕を引かれた。
「僕が同行するから、三日月は本丸でお留守番していなよ」
腕を引いたのは髭切で、ニコニコと笑っているがどこか黒さを感じるのは気のせいではない。
(うーん…)
ニコニコしながら無言の攻防を行なっている2人の間からスッと抜け出す。
「主?」
「一期、一期さーん」
後ろからの声を無視して一期一振を呼ぶ。
「お呼びでしょうか、主」
少ししてやってきた一期に手紙を見せる。
「今度、審神者の定例会議がある。できれば一期一振に付いてきてほしい」
「………私ですか?」
驚いた一期に頷く。
「後ろの2人も行きたいみたいだけど…今回は一期に付いてきてほしい」
理由?理由は……後ろの2人を連れて行くと面倒が起きそうだから。
1回目くらいは落ち着いて行きたい、でもブラックな本丸探しのために色んな意味で頼りになる男士と行きたい。
そんな私のワガママを叶えてくれるのが、一期一振だ!
そう言った桜に、一期一振は目を丸くした後、微笑んだ。
「私でよければ、喜んで」
「ありがとう!」
後ろで2人がブーたれているけど、スルーしよう。
「じゃあ、当日よろしくね」
「はい」
桜が微笑むと、一期も笑った。
審神者定例会議当日。
桜は出発まで後1時間も無いのに部屋で考え事をしていた。
「あるじさん、どうしたの?もうすぐ出発じゃないの?」
近侍の乱が考え事をする桜を心配そうに見る。
「うーん…実はさっき気付いたんだけど、手紙にこんな一文があってさー」
まあ神山からの一文なんだけど。
桜は手紙を乱に渡した後、困ったように目の前を見た。
「どっちの服がいいと思う?」
真っ黒のスーツか、少し光沢のあるスーツ。
うーんと悩む桜に、乱は口をポカンと開いて驚いていたが、慌てて我に返った。
「ちょっ、なんであるじさんの正装が男物になるの?」
「え?だって……この一文には多分そういう意味が込められてると思ったから」
「え?」
手紙に書かれていた一文は“偵察のしやすい正装で来ること”。
首を傾げる乱に桜は困った表情を浮かべながら口を開く。
「あまり言いたくないけど……ブラック本丸の審神者は比較的女性が多い。理由は……ね?」
桜の言葉に、乱はハッとした表情を浮かべた。
ブラック本丸に比較的女性が多い理由、それは見目麗しい男士達に囲まれてつい手を出してしまう者も少なくないからだ。
まあ、多いと言っても男性も変わらず多いんだけどね。
「女性の格好で行くより男性の姿の方が、比較的見極めやすいからね」
少しでも格好良くしていれば、寄って来る女性はいるかもしれない。
桜はそう言うと、改めてスーツを見る。
「乱ちゃんは、どっちがいいと思う?」
その問いかけに、乱は気合を入れた。
「ボクに任せてよ!」
「主はまだでしょうか…」
本丸の玄関前で、一期一振は刻々と迫る時間を気にしながら、まだ姿を現さない桜を待っていた。
「いち兄~お待たせー!」
聞こえて来たのは乱の声で、一期が振り返ると乱の後ろには見慣れない男性がいた。
「えっと……どちら様でしょうか?」
「やだなあ一期、僕のことを忘れた?」
そう言って笑う顔は、よく見てみると自分の主のものだった。
「あ、主………?」
「ん、そうだよ。乱に格好良くしてもらったんだ」
似合う?と自分の姿を見ながら言う桜。
光沢のあるスーツを身に纏い、髪はハーフアップにして後ろへ緩く流す。
刀剣男士とはまた違った格好いい男性の姿に、一期は呆気にとられていた。
「いち兄?」
「どうやら驚いてるみたいだな」
桜は固まる一期の前で手を振った後、反応が無いことに苦笑した。
「乱、一期にはこの格好の事行きながら話すよ。本丸のことよろしくね」
「うん!行ってらっしゃい!」
笑顔で見送ってくれる乱に手を振ると、固まる一期を半分引き摺りながら門へと向かった。
どうにか正気を取り戻した一期と共に門を潜り目的の場所へと辿り着いた。
政府が管理する洋式の屋敷を、多くの審神者や政府関係者が出入りしていた。
「多いな…」
「ほぼ全ての本丸の審神者が集まるみたいですな。会場はここが第三十七……そこから先は読むのはやめておきましょう」
そう言って門付近に置かれていた地図を閉じた一期は、引き攣った笑みを浮かべていた。
「よし、兎に角……入るか」
桜は一期の肩をポンっと叩くと、屋敷の入口へと向かった。
「ようこそ。身分証を拝見します」
「はい」
入口で警備をしている男が出した手に、自分の手を翳す。
手紙に書かれていたのだが、会場の入口を警備しているのは式神らしく、その体にあらゆる審神者の情報が入っているそうだ。
その為、手を翳した審神者の気を感じ取り、招いたものかどうかの判断をしているらしい。
(ただ……聞いた話では)
その辺りの情報操作をしている人間も少なくはないそうだ(勿論、ブラック本丸の人間)
「どうぞ、中へ」
いってらっしゃいませと頭を下げる男に会釈すると、会場内へと足を踏み入れた。
「…すごっ」
「確かに…これは圧巻ですね」
豪華絢爛な内装に、多くの審神者で溢れかえったフロア。
「ふぅ……あの中へ混ざる前に……一期、こっちへ」
桜は周りから見えない隅の方へと移動すると、一期の手を取りトンッと掌へ指をあてる。
「一期、僕の力で今から君を覆う。悪影響を受けないようにね。僕の力に集中して」
その言葉に、一期は掌へ集中する。
桜の指先が少し光ったかと思うと、体が一瞬で暖かいものに包まれた。
(ああ、なんと心地の良い…)
思わず一期は笑みを浮かべた。
「よし、これでオッケー。とりあえず本丸に帰るまでは我慢してね」
「本丸に帰ると、主のこのお力は解除されてしまうのですか?」
「ん?まあ……あんまり僕の力に包まれるのも嫌かなって」
「そんな事ありません!!私は、このままがいいです…!」
「え、あ……うん。まあ、その気を纏っているとある程度は悪影響を受けないから、僕としてはありがたいけど……いいの?」
桜の言葉に、一期は笑顔で頷いた。
桜は一期の返答に笑みを浮かべると、会場のホールへと目を向けた。
「よし、行こうか」
「参りましょう」
2人は人が溢れるホールへと入っていった。
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