ブラック本丸2と息抜き
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翌日、壁を背にして座りながら眠っていた桜はパチリと目を覚ました。
(……まだ眠っているか)
自分の腕の中にいるこんのすけを、布団で眠る三日月の隣へ降ろすと固まった体の筋肉をほぐす。
「………」
着替えたいけれど、三日月のいる部屋で着替えるのは気が引ける。
幸い今着ているのはジャージだ。
(……このままで良いか)
桜はそのまま部屋を出た。
顔を洗い身支度を軽く整えると、日課である鍛錬を行う。
「あ、良いところに」
聞こえて来た声に振り返ると、そこには御手杵が立っていた。
「おはよ。朝早いんだね」
「今日は偶々だよ。ところで三日月のじいさん見なかったか?今剣が三日月がいなくなったと騒いでてよ」
なるほど、自発的に起きたのではなく起こされたのか。
桜は汗を拭いながら御手杵に近付くと、自室の方を指差す。
「三日月なら僕の部屋でこんのすけと寝てるよ」
「あんたの部屋で…?こんのすけと……?」
訝しげな表情を浮かべた御手杵に苦笑する。
「別に何も無いさ。君らが考えているような事はね」
君ら?と首を傾げる御手杵の後ろを指差すと、そこには獅子王がいた。
「お、俺は別に何も考えてないぞ!」
ワタワタと取り繕いながら近付いてきた獅子王に思わず笑ってしまった事は許してほしい。
桜は獅子王の頭をポンっと撫でると、口を開く。
「酔った三日月が昨日部屋に来てな。昔話をして欲しいと言われたんだ。帰れと言っても居座ってな。梃子でも動きそうに無かったから帰らせるのは諦めたが、二人きりの状況を知ったら皆が不安に思うだろ?だからこんのすけを呼んで昔話をしながら過ごしたんだ」
三日月が自分を見定めに来た事は隠しつつ、説明をすると2人は成る程と頷いた。
「今剣には居場所を教えてあげてくれ」
そう伝えると、厨へと向かった。
(おやおや?あれは…)
気配を消しながら厨の前を彷徨く人物に近付く。
「おはよ、大倶利伽羅」
「っ……!あんたか」
冷静を装ってるけど、驚いて肩が揺れたのはバレてるよ。
出そうな笑いを堪えながらどうしたのか尋ねれば、手にしていた物を渡される。
「ん?」
「畑で採れた野菜だ。光忠に持っていけと言われた」
野菜の入った籠を受け取ると、中には色々な野菜が入っていた。
「大倶利伽羅、ありがとう」
「…………礼なら光忠に言え」
そう言って去って行った大倶利伽羅を見送った後、とある野菜が目に入った。
桜は少し考えた後、笑って厨へ入って行った。
昼からも大倶利伽羅は燭台切と共に朝の畑当番の続きを行なっていた。
「加羅ちゃん、そっちはどう?」
「……問題ない」
そう答えて流れる汗を拭き、野菜の様子を見る。
桜が用意してくれた様々な道具等でかなりハイテクな農業を行なっているが、野菜のチェックは各々で行うしかない。
大倶利伽羅は話し続ける燭台切に適当に相槌を行いながら、淡々と作業を続けていた。
「光忠ー!大倶利伽羅ー!」
「あれ、主?」
お疲れと言いながら手に盆を持つ桜が、2人の元へやって来た。
「暑い中お疲れさん。皆休憩に戻って来てるのに2人が中々戻って来ないから倒れてるのかと思った」
「ごめん!夢中になって一息入れるの忘れてたよ」
謝る燭台切に桜は笑うと、休憩を取ろうと2人を木の影に誘った。
「はい、お茶とお茶請け」
そう言って桜が置いた盆の上には、冷たいお茶とお菓子が乗せられていた。
「これって……」
「………ずんだ餅」
お茶請けのずんだ餅を凝視する2人に桜は頷く。
「朝、大倶利伽羅が届けてくれた野菜の中に枝豆があったから、作ってみた」
「……懐かしいね」
そう言って燭台切はずんだ餅を頬張る。
「うん、美味しいよ」
「ありがとう」
燭台切の言葉に微笑むと、チラリと大倶利伽羅を見る。
「………悪くない」
一口食べ、少しの沈黙の後にそう言った大倶利伽羅にも礼を言う。
彼の悪くないは褒め言葉なのだから。
(群れてくれない大倶利伽羅に少しでも近付けたなら良いけど)
折角なら、皆と仲良くしたいしね。
桜は2人の休憩が終わると、お盆を手に立ち上がる。
「倒れないように、気をつけてね」
「ありがとう。主も無理しないようにね」
去っていく桜を見送ると、燭台切は大倶利伽羅を見る。
「続き、頑張ろっか」
「…ああ」
どこか柔らかい雰囲気を醸し出す大倶利伽羅に笑い、燭台切は伸びをした。
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