本丸へ
名前変更
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「もし、もし」
ツンツンと突かれる感覚に、目を開ける。
顔、お腹周りなどが白い狐、所謂こんのすけが目の前にいた。
よっと起き上がると、こんのすけを改めて見る。
困惑気味の狐は、かなり汚れていた。
「あの、貴方さまは?」
「あー、なんだろ。この本丸を貰いに来た」
ニッと笑うと、驚いた様子のこんのすけの頭を撫でる。
「も、貰いに来たとは…⁉」
「まあ、ここの現審神者を捕らえに来たって感じかな」
ピピッと機械音がしたので視線を落とせば、腰に携帯電話が付いていた。
「はい」
『無事に着いた?』
「まあ、ついたよ」
『あと30分もしないうちに政府の人間がつくから』
ー始めちゃって。
そういった神様の言葉に了承の返事を返すと、電話を切った。
「あの…」
不安げに見上げてくるこんのすけに、微笑む。
「大丈夫。君達を助けに来たって言えばいいのかな?」
そう言って乱れた長い髪を纏め直し、前を向く。
自分は本丸の門にいたみたいだ。
周りを見渡すと、とても黒く、重たい瘴気が漂っていた。
(アイツらが手を出さないってことは、呪具系か)
腰に括り付けた巾着を漁り、幾つもの札を取り出す。
「邪魔するよー‼」
本丸中に聞こえるように声を上げる。
そうすると、見えていた縁側に幾つもの影が出来た。
幾つもの影は、目を当てるのも嫌になる程傷だらけのものが多かった。
「一体、なによ!」
その中心にいるのは、思わず目を背けたくなる程醜い女。
「あんた、ここの審神者?」
「そうよ。一体あんたはなによ!」
金切り声を上げる女に、イラっとする。
(愛姫様、今すぐ会いとうございます…)
可愛い姫様に想いを馳せて息を吐くと、ゆっくり近づく。
「あーなんだろ。とりあえず、あんたを裁きに来た」
「裁きに?なに言ってるの?」
意味がわからないといった表情の女は、すぐに周りにいた者たち、刀剣男士に桜を斬る用に命令した。
その際に光ったネックレスに、桜は狙いをつけると地を蹴った。
「ごめんねー、流石に怪我人相手に遅れをとる人間じゃないんだわ」
勢いのない刀剣達の間をすり抜け、女に近づく。
恐怖に染まっている女は、醜い悲鳴をあげながら本丸の奥へと逃げていく。
その間にも襲いかかってくる刀剣達の目には、光はなかった。
「………反吐が出るな」
うざったい奴もいるけど、付喪神とは立派な神様だ。
そんな相手をいいようにしようなんて、痴がましい。
刀剣を軽く捌いて逃げ場を失った女の前に立つと、ネックレスを引きちぎった。
「ちょっと!」
「死にたくなければ動くな」
刀を向けると、女はその体を固くした。
ネックレスを女から奪ったことで力の供給をなくしたのか、妖しい光は消え、刀剣達も膝をついた。
「お前、人間のくせに神に呪具を使うなんて…愚かな奴だな」
「な、なによ!私の刀剣なんだから、好きにしてもいいでしょ!」
「………お前の?……………人間が神より上に立てると思うな」
静かに睨むと、女は再び悲鳴をあげた。
桜はその姿を見て刀を収めると、懐の札を出して念を込め、ネックレスに貼り付けた。
これでこの呪具はもう二度と、効力を発さないだろう。
別世界で陰陽師とか術師の人と懇意にしてて良かった。
「さてと………」
「ひっ!」
怯える女の顔すれすれに、再び抜いた刀を添える。
「ここの刀剣達に、何をして過ごしていたのか、教えてもらえる?」
にっこり微笑むと、怯えながらも女は話した。
呪具での縛りに始まり、手入れの怠り、夜伽の強制、八つ当たりでの破壊に始まり色々と…
(こういうのって、二次的な想像だけじゃないの?)
なんて事を考えている間に門近くが騒がしくなった。
「お迎えが来たようだな」
「え?」
女を手早く縛り上げると、引きずって門近くまで来た。
「あんたら、政府の人間?」
「あなたが、神山様から聞いているお方ですね」
神山?と思ったが、おそらく付喪神達の偽名だろう。
「そうそう。神山が言ってたの、僕のこと」
大体どこの世界でも男装していたせいで染み付いた一人称に関しては、許してほしい。
初対面にはこれで行かなきゃ落ち着かない。
「この女が、ここの審神者。で、こっちが呪具。破壊は済ませてるから」
「ご協力、ありがとうございます!」
敬礼をする男に頷くと、息を吐く。
「これから僕はここの立て直しを試みる」
「はっ!お手数をお掛け致しますが、よろしくお願い致します!」
必要な資源や資金等は神山からの支給で向こう一年分はあるらしい。有難い。
去っていく政府の人間を見送ると、本丸を見た。
「おや?」
さっきまで倒れていた刀剣達がいない。
女の縛りがなくなった事で自由に動けるようになり、どこかに行ったようだ。
(さて…)
信頼は特に要らないが、この本丸を立て直すにあたり彼らには暴れないでいてほしい。
しかしながら、彼らは人間に大層恨みを持っただろうから、一筋縄でいかないのはわかっている。
どうしたものかと考えていると、足元からキラキラとした視線を感じた。
「ん?」
「あの、私はこんのすけと申します‼貴方さまは、この本丸の新しい主さまとなるのでしょうか!」
「え?あ~まあ、そうなるかも。政府の人間に、ここの審神者引っ捕らえて立て直してくれって言われたから」
「なんと!この度は助けて頂き、誠に有難うございます‼皆もきっと歓迎を「あー、それはないんじゃない?」
こんのすけの言葉を遮ると、そっと抱き上げる。
「人間にいいようにされたのに神様がまた人間を歓迎するとは思えないし。まあ、ここ立て直さないと他の事は進めないから、とりあえず広間に案内してくれる?」
「か、畏まりました!」
少ししょげたこんのすけの案内に従い、本丸内に足を踏み入れた。
忍装束が珍しいのか、こんのすけがやたらジロジロと見てくる、ちょっと恥ずいからやめてほしい。
「この先が広間となります」
「ん、ありがとう。ちょっと離れておこうか」
かなりの殺気が漂ってる。
こんのすけに離れてもらうと、目の前の襖を開けた。
それと同時に刀が振り下ろされる。
それをスッと避けて相手を蹴り飛ばすと、広間の中を見る。
かなりの大広間となっており、そこには大勢の刀剣達がいた。
「あーどうも、はじめまして。名前は…まあいいか。今日からここでお世話になります」
相手は神様だ、頭を下げると中の面々はぽかんとしていた。
「なんか、政府の人間に言われて審神者っていうのをやれって言われたんだけど…まあ、皆さん嫌だと思うので、無理強いはしないし安心してください。僕の顔が見たくないなら、適当に見られないようにするので、この本丸にいる事だけご了承ください」
「な…に、好き勝手言ってやがる!」
そう言って切りかかって来たのは黒髪長髪の刀剣男士だった。
サラサラ羨ましい。
サッと避けると、ペシッと札を貼る。
「なっ⁉」
驚いた様子の男士は、次の瞬間には刀に戻っていた。
「えーっと、手入れ?ってのをしたいのですが、皆さん素直に聞いてくださらないのは百も承知ですので、一度刀に戻ってくださいね?」
そう微笑むと、呆気にとられていた男士達は正気を取り戻し、動けるものが次々と襲いかかって来た。
それを軽く躱しながら次々と刀に戻していき、全ての刀剣男士が刀の姿へと戻った。
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