ブラック本丸2と息抜き
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「あるじさまー!」
「ん?ああ、今剣か」
本丸の中を歩いていると、こちらに走ってきた今剣をヒョイっと抱き上げる。
そしてフとその後ろから誰かが走ってきていることに気付いた。
「今剣ー!待てー!」
「あっ!いわとおしがきてしまいました。あるじさま、にげてください!」
「え?え?」
「はやく!」
今剣に急かされて、とりあえず走り出す。
走りながら今剣を背中に移しておんぶの体制になってもらう。
「なんで逃げてるの?」
「いま、いわとおしとおにごとをしているのです!」
「え?まじで?」
チラリと後ろを見ると、満面の笑みを浮かべて追いかけてくる岩融がいた。
「おっ、主も参加するのか!俺は必ず捕まえるぞ」
「ちょ、早い」
全力疾走の岩融に対し、こちらは今剣を背負っている。
だからと捕まる気は無いが。いや、その前になぜ私は巻き込まれている。
とか色々思ったけど、まあいいやとこちらも全力で逃げる。
「忍舐めんなよ!」
「うわっ!あるじさまのそくどがあがりました!」
「なかなかやるな、主!」
スピードを上げて岩融を引き離す。
岩融も追いかけてきているが、やはり足の速さでは敵わないのか、少しづつ距離が開いていく。
「あるじさま!いわとおしがどんどんとおくに!」
「僕に追いつけるはずないでしょ」
桜はニッと笑うと、屋根の上に飛び上がった。
「はい、僕が参加するのはここまで」
「えー、もうおしまいですか?」
「うん、おしまい。今日は終わりだけど、また一緒に遊ぼ」
「はい!」
残念がる今剣と約束をすると、笑みを浮かべて走っていった。
「主!追いついたぞ!」
下から聞こえた声に視線を向けると岩融が追いついて立っていた。
「あ、岩融。僕はもう離脱するから」
「何っ⁉」
「また今度遊んでー。あ、ちなみに今剣はあっちに逃げたよ」
そう言って今剣が逃げた方向を指差すと岩融は走って行った。
(元気なのはいいことだ)
鬼ごっこをする二人を見送ると、桜は屋根から降りて自室へ戻ることにした。
明日の為にお酒を発注しなきゃね、ちびっこ用のジュースと食材も。
部屋に戻ってタブレットを操作してどんどんと注文していく。
かなりの量にも限らず、明日お届けの文字に心の中で謝罪をしてサボっていた執務に取り組むことにした。
「皆、ちょっといいかな」
夕食を食べ終えた後、皆が揃っている時に口を開く。
「明日なんだけど、出陣と遠征は無しで皆内番に回って欲しいんだ」
「皆?」
「うん。実は明日の夜、宴会を開こうと思って」
桜の言葉にその場がシーンと静まり返った後、皆は歓喜の声を上げた。
「宴会⁉本当か!」
「本当、本当。お酒もいっぱい頼んだからね」
「やったね!」
喜ぶ皆の顔を見て、宴会を開いて正解だなと感じる。
この本丸を立て直して半年以上経ったが宴会などは開いたことがない。
これだけ喜ばれるならもっと早くに宴会をしておけばよかった。
「とりあえず、明日の夜は楽しむ為に皆で内番終わらせて、一斉に準備に取り掛かりたいんだ。だから…よろしくね」
桜の言葉に、一同は気合の入った声で返事をした。
そして翌日、桜を筆頭に燭台切、歌仙は食事の準備、細かな事は平野や前田等、数名の短刀が手伝ってくれている。
他の者達は手分けして畑仕事や馬の世話を行なっている。
「主、これはどうする?」
「それはね、細く切って欲しいかな」
「こっちは?」
「それはね…もうちょい煮詰めて欲しいかな」
質問に答えながらテキパキと作業を進めていく。
皆の働きもあり、宴会の用意はあっという間に出来た。
「後は料理を運んだら終わりかな」
「夕食の時間まで結構時間余っちゃったなー」
桜がそう言うと、誰かが抱きついてきた。
「結構時間余っちゃってる?」
「余ってるよ」
抱き着いてきたのは加州だった。
加州は桜の言葉を聞いて笑顔になる。
「俺、主にいっつも可愛くしてもらってるから、今日は俺が主を可愛くしたいな」
「………え?」
「折角の宴会だし、それはいい考えだね」
加州の言葉に、皆はワイワイと盛り上がる。
「清光、念の為聞きたいんだけど可愛くって具体的にどんな格好?」
「そりゃー可愛い、いや主だったら綺麗で格好いい女性って感じかな?」
ああ、やっぱり女性の格好をさせられるのね。
普段男装している桜は加州の言葉に頬を引き攣らせた。
「主………ダメ?」
「ダメジャナイデス」
(清光に上目遣いで見られたら、断れるわけないでしょうが!)
ウルウルと見上げてくる加州に負けてそう返事をすると、加州は嬉しそうに桜の手を取った。
「全く…清光、よろしくね」
「もっちろん!」
加州は桜を連れてその場を去った。
「さて、料理以外の取り皿とか運ぼうか」
その言葉に、二人を見送った面々は準備の続きを行った。
「清光、これ…」
「うん、いい感じ」
取り出した大量の服の中から加州が選んだのは浅葱色が基調の裾に行くにつれて白になる着物と、赤い羽織だった。
綺麗な花柄だけど、色は完全に新選組&清光カラーだよね、これ。
桜はチラリと加州を見る。
加州はとても満足そうな笑みを浮かべていた。
「主、化粧もしようよ。髪も結ってさ」
「……清光の好きにしていいよ」
楽しそうな加州に毒気を抜かれ、桜はそう言った。
「任せちゃってよ!」
加州はそう言うと、化粧道具を手にした。
あれやこれやとされているうちに、夕食の時間が近づいて来た。
「ん、出来たよ」
加州の言葉に頷くと、鏡を見る。
「………女だ」
「主は元から女性でしょ」
目の前に、どこか可愛らしさを醸し出しながらもキリッと格好いい化粧を施した女がいる。
え?これが私?なんてどっかで聞いたことあるような台詞もさらりと言ってしまいそうだ。
「まあ…久しく着飾ってなかったからね。ありがとう清光」
「どういたしまして」
頭を撫でると凄く嬉しそうに笑ってくれた(ついでに花弁も)
可愛いなーと思いながら、よっと立ち上がる。
「さて、そろそろ時間だし行こっか」
「うん!」
桜は微笑むと、加州と共に広間へ向かった。
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