ブラック本丸2と息抜き
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到着した監視官にこの本丸の審神者の事を伝えると、髭切に纏わり付こうとしていた邪気を祓い、自分達の本丸へと戻った。
「いやー、臭くて気持ちの悪い本丸だった」
「うん、そうだね。かなり酷い匂いだったよ」
人型へと戻った髭切と話しながら屋敷の中へと足を踏み入れると、そこには正座をする長谷部がいた。
「お帰りなさいませ、主」
「……びっくりした。長谷部、どうした?」
桜が問い掛けると、長谷部は立ち上がって桜の手を取る。
「皆が待っています」
「え?皆?」
どういう事?と問いかけても長谷部は答えず、広間がある方へと連れて行かれる。
髭切を見ても、分からないと首を振られるだけだった。
「長谷部、一体何事?」
「それは…」
「それは、我々の台詞だぞ。主」
言い淀む長谷部が足を止めた時、別の声が聞こえて来た。
広間に着いたみたいで、そこにはこの本丸にいる面々が揃っていた。
「えっと…」
「2人とも、そこに座って」
皆の上座に当たる場所に促され、大人しく座る。
神妙な面持ちの皆を見ていると、
「祓いたまえ、清めたまえ」
そう言ってお祓いをしてくれる石切丸に対して頭にハテナを浮かべていると、お祓いが終わったのか石切丸が口を開く。
「君の周りに良くないモノがいたのでね」
どこか厳しい表情で言う石切丸に、やっちまったと思いながら礼を言い、改めて周りを見る。
「改めて、何で皆ここに揃ってるの?」
そう問い掛けると、青江が口を開いた。
「この前もそうだったけれど……偶にどこへ出掛けているんだい?今君が纏っていた良くないモノ、長谷部くんが以前受け取った手紙、関係しているんだよねえ?」
口元は笑っているが、目は笑っていない青江に桜は口元を痙攣らせる。
(これは……教えろって言ってるんだよね)
(そうだと思うよ)
髭切と目で会話をしていると、ダンっと床を叩く音がした。
「教えてもらえるんだよな?」
その言葉に息を吐くと、皆を見据える。
「まだ、教えれないよ」
「なんで⁉」
「なんでって……教えたら付いてくるだろ?」
「そんなの、当たり前じゃん!」
桜は目を瞑る。
「僕のしている事は危険を伴う。出陣とはまた違った危険。申し訳ないが、弱い君達に話をして付いて来られるのは、困る」
桜がそう言って目を開くと、悔しそうな長谷部が口を開いた。
「髭切は…よろしいのですか」
「髭切は…顕現する前から僕と共にあったから、何をしていたか知っている。誤魔化しがきかない。だから今回は刀の姿で付いてきてもらった」
「ならば、我々も…!」
「ごめん」
長谷部の言葉を遮り、謝罪を1つ。
「どうしても教えてもらえないのかい?」
「ごめんね」
桜が謝ると、燭台切と歌仙は互いを見て頷き、一期を見る。
一期も頷くと、桜を見た後、弟達を見た。
「私は何も見てませんよ」
その言葉に桜が頭にハテナを浮かべていると、頷いた粟田口をはじめ短刀達が桜の周りに集まる。
「え、ちょ」
「あるじさん、ボクたちに隠し事するの?」
「主さま、僕たちは確かに弱いですけれど…」
「主君のお役に立てる力はございますよ」
ウルウルとした目で見てくる(主に粟田口の)短刀達に「ウッ…」と胸を痛めていると、ポンっと肩を叩かれる。
顔を上げると、薬研が微笑んでいた。
「大将、俺たちは大将の刀だ。確かにまだまだ弱いが…あんたを守りたい。一つ信じて話してくれねえか」
やだ、薬研、イケメン。
桜は短刀達からのお願い攻撃に頭を抱えた後、参ったと笑った。
「わかった、わかったよ。全く……こんな卑怯な方法考えたの誰だよ…」
「ああ、俺だ」
そう言ったのはだんまりを決め込んでいた三日月だった。
「主は……小さな子に弱いみたいだからなあ」
笑う三日月にやられたと苦笑すると、神山から受けている使命の話を簡単に皆にする。
「僕がたまに出て行っているのは……過去のこの本丸のように、審神者によって様々な事を強いられている刀剣達を助け、ブラック本丸を作り上げた審神者を捕縛する。その使命を果たす為に、出掛けているんだよ」
桜の言葉に、ハッと息を呑む者が何人もいた。
ここに来たばかりの包丁はあまり良く分かっていなかったみたいだが、良くない人間を桜が捕縛しているのは理解したみたいだ。
「僕が行く本丸は、呪具を使っている事も含め瘴気が尋常じゃない場所ばかり。そんな場所に……お前達を連れて行くなんて、したくないのさ」
桜がそう言うと、ドンっと横から何かが引っ付いてきた。
「主、俺たちを思ってくれてありがとう……!でも、俺たちにも手伝わせてよー!!!」
「そうですぞ、ぬしさま!この小狐、ぬしさまの為ならば火の中水の中!!」
左右から引っ付いてきた半泣きの加州と小狐丸の頭をポンポンっと撫でると、桜は笑った。
「ありがとう。僕も皆を守れるほど強いわけじゃないから、一緒に強くなって、クソみたいな審神者をぶっ倒してやろう」
言葉の最後の方はかなり悪どい顔をしていたのか、燭台切に頬を摘まれた。
「今度から出かける時は声をかけて行くんだよ」
「はーい」
歌仙の言葉に返事をすると、伸びをした。
「さて、今日は夜も遅いから、皆寝よう。隠しててごめんね」
桜の言葉にまだ文句を言う者もいたが、それぞれ部屋へと戻って行った。
(あーあ、バレちゃった)
ずっと黙っているつもりだったのになあと思いながらも、随分と心を許してくれた事を嬉しく感じ、その日は眠りにつくことにした。
本丸の皆に神山からの使命がバレてから数日、思ったより穏やかな日々を過ごしていた。
(掲示板にも特に書き込みは無し、演練とかでも特に話は聞かない。良いことだ)
皆の鍛錬も順調、相変わらず演練ではボロ負け状態だが、着実に強くなっているのは確か。
良い方向へと進んでいる、と思う。
そんな事を考えながら歩いていると、縁側に座る山姥切がいた。
非番でボーッと和んでいる様子にフッと笑みを浮かべる。
「まんば」
「…⁉あんたか」
一瞬驚いた様子を見せた山姥切の隣に座ると、いつも被っている頭巾をヒョイっと脱がせてみる。
「なっ⁉何をする……!!」
「今日もまんばを褒めにきた。相変わらず綺麗だね。流石国広の傑作」
「何であんたは、簡単にそんな事を……!」
最近毎日行なっている「まんばを褒めよう」を実行すると、ブワッと顔が赤くなった山姥切に微笑む。
ついでに彼の周りを舞う桜の花弁に嬉しくなる。
(最近知ったのだが、刀剣男士は嬉しい時に花弁を出すらしい)
桜の言葉に山姥切は視線を泳がせた後、思い出したかのように頭巾を被った。
「あー、勿体無いなぁ」
「俺は写しだ。綺麗でもなんでもない」
相変わらず拗らせている山姥切の頭をぽんっと撫でる。
「写しだろうとなんだろうと、まんばはまんばだろ?それに、綺麗なものは褒めないと」
「全く、あんたは…」
ぶつぶつと文句を言う山姥切に、桜は笑った。
「さてと」
桜はよッと立ち上がると、歩き出す。
「じゃあ、僕は引き続きお散歩に行くよ」
「さっさと行け」
今日も素直じゃない山姥切との交流を済ませた桜は歩き出した。
シツコクして嫌われたら本末転倒だから、ほどほどにしないとね。
「ねえ兄貴~ちょっとくらい、いいじゃーん」
「お前はすぐ飲みすぎますから」
甘えるような声が聞こえてそちらに向かって歩いてみれば、お酒を取り上げられた次郎太刀が太郎太刀にお酒を飲みたいと縋っているところだった。
それを微笑ましく眺めていると、二人がこちらに気付いた。
「主…これはみっともないところを」
「まあ、気にしないで」
桜が二人に近付くと、次郎が抱きついてきた。
「ねっ、主。アンタも飲みたいよね?お酒」
甘えるような次郎太刀に笑うと、ポンっと頭を撫でる。
「そだね。久々に飲むのもいいな…」
「なら!」
「でも、明日ね。今日は我慢」
「ええー!!」
「明日は宴会を開いてあげるから」
「本当かい?なら、我慢するよ」
宴会の言葉に体を離して満面の笑みを浮かべた次郎太刀の頭に手を伸ばしたが、真っ直ぐと立つ次郎太刀の頭に手が届かなかったのて諦めた。くそっ。
「そういえば、ここでの生活はどう?」
「アタシは楽しくやってるよ!兄貴は大きいから頭をよくぶつけてるよね」
「そうなの?」
「……はい」
そう言われて改めて太郎太刀を見ると、確かに部屋の鴨居より頭は上にあった。
「……他の身長大きい組の為にも、お部屋改造とか出来ないか政府に聞いておくよ」
「すみません…」
申し訳なさそうにする太郎太刀にニッと笑う。
「謝らなくていいじゃん!大きいと色々助かることもあるし、自分の大きさは気にしなくていいよ」
「助かることですか?」
「うん、私は女にしては背は大きいかもしれないけれど、高くて手の届かないところもある。そんな時は太郎さんにお願いしたら助けてもらえるじゃん?」
デカイ女だが、それでも届かないところはある。
そんな時は太郎太刀くらい大きい人に助けてもらえるのはありがたい。
大きいことは悪いことじゃないと話す桜に、太郎太刀は目を丸くした後笑った。
「主にそう言っていただけるのは、嬉しいことですね」
「そう思ってもらえてよかった」
今日の報告書で改造のこと相談してみるねと改めて伝え、その場を後にした。
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