ブラック本丸2と息抜き
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あの後、お土産を買って本丸に戻ってきた後、広間で神山から貰った刀を目の前に桜は座っていた。
因みに、周りには本丸の皆も集まっている。
「さて、起きてもらおうかな」
桜は息を吸うと、刀に手を添える。
「起きて、包丁藤四郎」
そう声をかけると、刀が光り、その後子供が現れた。
「包丁藤四郎だぞ!好きなものはお菓子と人妻!よろしくー!」
笑顔でなんとも言えない台詞を発しながら、包丁藤四郎は周りをキョロキョロ見渡した後桜を見た。
「お兄さんが主?」
「そう、僕が主」
「なーんだ、女の人じゃないのかー」
残念そうに言った包丁に苦笑していると、誰かがぎゅっと彼を抱きしめた。
「久しぶりですね、包丁藤四郎」
「あー!いち兄だ!」
他の兄弟もいる!とはしゃぐ様子を微笑ましく見ていると、一期一振が申し訳なさそうな表情で振り返った。
「主、弟が失礼な発言をして申し訳ございません」
「え?なんか失礼な事言ったっけ?」
「人妻がどうとか、主が女人ではないとか」
「あーそれくらいなんとも思わないから大丈夫だよ」
桜がそう言うと、一期の横で包丁が頭を傾げる。
「え?主…女の人なの?」
「まあ、こんな格好してるけど女だよ」
いつも通り男装していた桜がそう言うと、包丁の目がキラキラと輝き始めた。
「主!人妻?」
「こら!包丁!」
包丁の言葉に一期は一喝を入れる。
そんな包丁の様子が面白くて、思わず笑ってしまう。
「そうかそうか、包丁はそんなに人妻が好きか」
「うん!」
「まあ、残念ながら元人妻って感じかな」
前の世界とか色々な場所でね。
「元、人妻……」
桜の言葉に、包丁は何かを考え込んだ後顔を上げた。
「うん!元でも人妻だったなら大丈夫かも!」
「ん?何かはよく分からないが、そうかそうか。それより包丁、兄弟達と本丸の中を見ておいで」
桜がそう言うと、粟田口の面々が包丁を取り囲んで本丸見学へ向かった。
それを微笑ましく見ていると、一期が再び謝罪をしてきた。
「包丁が申し訳ございません」
「え?気にしてないから大丈夫大丈夫」
桜はそう言うと、一期の肩を叩いた。
「気にせず、皆と一緒に行ってきなよ」
「主…ありがとう」
一期は笑うと、その場を後にした。
(また賑やかな子供が増えたもんだ)
桜は笑うと、燭台切と歌仙を見た。
「子供が増えたし、美味しいものでも作ろっか」
「もうすぐ夕食の時間だしね」
「腕によりを掛けた料理を用意しなきゃね」
燭台切と歌仙は笑って頷いた。
(………こりゃまた、なんともまあ)
包丁藤四郎を顕現させた夜、桜は報告書を神山に送った後例のアプリを立ち上げて掲示板を見ていた。
とあるブログのURLが貼られており、それをクリックするとある本丸の審神者のブログに飛んだ。
そこまでは良かったのだが、ブログに貼られている写真が酷かった。
(神様を嬲るとは、いい根性してやがる)
見目麗しい刀剣男士達に夜伽を行わせている審神者。
その様な者は少なくないが、このブログの審神者はその中でも有名らしく、事に及んでいる最中の写真を載せたりしていた。
明らかに呪具と思われる物も一緒に写っているし。
「大変ヨロシイご趣味な事で」
そう言った桜の表情は、鬼も逃げ出す程の怒りに塗れていた。
桜は通信機を手にすると、素早く政府に連絡を入れた。
掲示板で見つけた審神者の話を伝えると、政府の人間は1時間後には向かうと言って通信を切った。
桜は刀剣達に見つからないようにソッと部屋を抜け出すと、門へと向かった。
「主、どこに行くの」
よし行こうと門に手を掛けた時、後ろから声を掛けられた。
「髭切か…」
そこには微笑む髭切が立っていた。
「ねえ、どこに行くの?ぶらっく本丸とやらかい?」
核心をついてきた髭切に苦笑する。
「うん、そう」
「僕も行くよ」
髭切の言葉に桜は少し考えた後、頷いた。
「いいよ、行こう。ただし、刀の姿でいる事が条件」
「それだと、一緒に戦えないじゃないか」
不機嫌そうな表情に変わった髭切の頭をぽんっと撫でる。
「刀の姿でも、髭切はずっと一緒に戦ってくれていたじゃないか。今回は……僕のわがまま。僕の愛刀はこんなに格好いいんだぞって自慢するのもいいけど、今から行く本丸は大変胸糞悪いところだから、髭切の姿を見せたくないんだ」
僕のわがままを聞いて欲しい、そう伝えると髭切は少し考えた後頷いた。
「わかった」
「ありがとう」
伸ばされた髭切の手を握ると、淡い光が放たれ髭切は刀の姿になった。
「さあ、行こっか」
『いざ、出陣だね』
桜は腰に髭切を携えると、門を開いた。
(おえ、気持ち悪い)
目的の本丸に着いての感想は気持ち悪いだった。
淀んだ本丸、屋敷から漂う甘い匂い。
これは、毒だ。
「髭切、大丈夫?」
『ああ、主に近い距離にいるから、平気だよ』
なら良かったと返事をすると、屋敷へ近付く。
建物の構造は基本的には同じらしいから、先ずは広間へと向かってみた。
気配を殺して忍び込み、広間の中の様子を見ると、短刀等の幼さが残る刀が草臥れたように寄り添っていた。
「………」
桜は息を吐くと、姿を現した。
「だ、誰!」
「シー、静かに。君達には危害を加えないから、落ち着いて」
近付かずに、遠くから皆を宥める。
「君達を助けに来た。僕を信じてくれとは言わない、だけれどここの審神者を捕縛するのは許して欲しい」
桜がそう言うと、短刀達は恐る恐ると近寄って来て、一定距離でこちらをジッと見つめた後、ポロリと涙を流した。
「いち兄を…」
「兄様達を…」
助けて。
それぞれの身内を助けて欲しいと言う面々に、桜は頷いた。
「勿論、助けるさ。そのために来たからね」
桜は微笑むと、懐から数枚札を取り出した。
「ここの本丸は少し瘴気が強すぎる。このお札を部屋に貼ってみてください。少しは気が楽になる」
桜はそう言って札を置くと、本丸の中を歩き出した。
(気配的には、こっちかな)
感じる気配を頼りに本丸の中を歩いていると、甘い匂いが一際強い部屋を見つけた。
ついでに、聞きたくもない嬌声も聞こえてくる。
(お楽しみ中ってか)
桜は溜息を吐くと、髭切を抜いて部屋の襖を叩っ斬った。
「きゃあ!何⁉」
全裸の女と、組み敷かれている刀剣男士。
周りには呪具の影響だろうか、虚ろげな瞳で桜を見る刀剣男士達が何人もいた。
「神様を嬲って更には晒しものにしている大層なご趣味を持っている貴女を、捕縛しに来ました」
「何ですって…!」
女は布団で体を隠しながら立ち上がると、その部屋にいた面々に命令を下す。
「ソイツを斬って!」
「髭切、行くよ」
『ああ』
この部屋にいるのはざっと数えて10人。
「朝飯前だね」
振り下ろされる刀を払い、受け止め、流し、峰打ちを入れていく。
(呪具はっと…)
刀剣達を動けなくしながら呪具を探し、見つけた瞬間苦無を投げつける。
「ちょっと!何するのよ!」
呪具である香炉に苦無が刺さった瞬間、女が香炉から苦無を抜こうと手を伸ばす。
「あ、それ…」
「痛っ!なによこれ!!」
「僕の気を練り込んでるから、不浄なものは怪我するよって……もう遅いか」
桜は苦笑すると、手早く縄を取り出し布団ごと女を縛り上げる。
「ちょっと、何するのよ!外しなさいよ!」
「はいはい、ちょっと黙ってねー」
そう言いながら女の携帯を手にすると、女の滑稽な姿を撮ってブログに載せてやった、ざまあみろ。
(さてと……)
本格的に呪具を潰さなければ。
苦無が刺さった状態でパチパチと電気の様なものが迸る香炉に、札を貼った苦無を深く突き刺した。
バチっと強い電光が走った後、香炉は効力を無くしたのか静かになった。
「これでよしっと」
桜は髭切を鞘に収めると、後ろを振り返り、倒れて動けない刀剣達に、それぞれ服を着せてやる。
「救出が遅れてすみません。これからは…兄弟や仲間達と、穏やかに過ごせますよ、きっと」
そう言葉をかけながら、纏わり付いていた邪気を祓ってやると虚ろな瞳に光が戻っていき、中には涙を流す者もいた。
『政府の人間が来たみたいだよ』
髭切の言葉に頷くと、外に出た。
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