新たな日常、愛刀
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「よし、着いたな」
桜は江戸の合戦場に着いたのを確認すると、一緒に来た面々を見る。
久しぶりの出陣だからか、皆どこか不安そうだ。
「………」
桜は五虎退に近付くと、ぎゅっと抱きしめた。
「あ、あるじさま?」
戸惑う五虎退から離れると、次は小夜、今剣、蛍丸、鯰尾、骨喰の順に抱きしめた。
突然の行動に、驚いたり照れたりする面々にニッと笑う。
「少しは緊張や不安は解れたか?」
桜の言葉に、面々は目を見開いた後笑った。
「もう。急に抱きしめてくるから何かと思ったよ」
「悪い悪い。不安を紛らわすには触れ合いが良いっていう話もあるだろ?ついでに、僕の神気ってやつを分けてみた」
「主殿……ありがとう」
珍しく微笑んでいる骨喰に思わず手を合わせた。
普段無表情の子の微笑み、プライスレス。
「何で手を合わせたの?」
「内緒。さっ、行くぞ!」
鯰尾の質問を流した桜は、皆を連れて歩き出した。
戦場では他愛ない話をするのも良いけれど、周りの気配を探るのは忘れずにねと話をしながら歩いていると、前方に敵の気配を感じた。
(この子達はいつ気付くかな)
まだ見つかる距離ではないから様子見を兼ねてまだ伝えない。
そう思って様子を見ていると、何かに気付いた短刀達が止まり、それに続いて脇差二人と蛍丸も止まった。
「主、敵の気配を感じる」
前方をジッと見ながらそう言った小夜の言葉に他の面々も頷く。
「よく気付いた。偉い偉い」
わしゃわしゃと皆の頭を順番に撫でると、今剣が敵のいる方を指差す。
「あるじさま!ぼくたちにていさつにいかせてください!」
「え」
突然の申し出に一瞬戸惑う。
出来るなら、彼らを危険に合わせないためにもまだ向かわせたくはない。
悩んでいると、普段は大人しい五虎退が服の裾をぎゅっと掴んで来た。
「あるじさま、お願いします…」
普段は泣きそうな表情をよくする五虎退が、口元を引き締めて凛々しい表情を浮かべていたので桜は頷いた。
「わかった。短刀の三人に偵察を頼むよ。くれぐれも慎重に、怪我のないようにね」
「わかった」
三人は頷くと、偵察に向かった。
「………心配だなぁ」
「まあ、大丈夫じゃない?あの三人は本丸の中でも練度が高いし」
心配そうな桜を、蛍丸が慰める。
「ん、そうだね。信じよう」
その言葉に頷くと、三人が戻ってくるのを待った。
そわそわしながら待っていると、少しして三人は戻ってきた。
「おかえり!」
「どうだった?」
鯰尾と骨喰の言葉に、三人は顔を見合わせた後小夜が口を開く。
「打刀一振り、脇差二振り、短刀が三振りいた」
「ん、おっけー。偵察お疲れ様」
わしゃわしゃと何度目かになる頭撫でを行なった後、前を見た。
「まだ敵には気付かれてないみたいだから、奇襲をかけるよ。刀装の準備はいい?」
そう声をかけると、短刀と脇差は遠戦用の刀装の準備をした。
「五人が遠戦用の刀装で奇襲をかけた後、こっちに気付いた敵が近寄ってくると思う。そしたら次は蛍丸の出番ね。その自慢の刀で残りを仕留めにかかろう」
そう言うと、かなり大雑把な指示だったが皆は頷いてくれた。ありがたい。
気配を殺して敵へと近付いていくと、まだこちらには気付いていなかった。
(ここならもう遠戦の刀装も届くね)
桜は五人を見ると、敵を指差す。
面々は頷いた後、石、銃、弓の刀装で奇襲を行った。
短刀三振りは今ので倒せ、残りは三振り。
「蛍丸!」
「んじゃ、派手に戦いますかっとぉ」
蛍丸はそう言って刀を振るった。
それなりの練度を誇る蛍丸の大太刀は、残りの三振りを一気に薙ぎ払った。
「蛍丸………凄い!強い!」
「ちょっと主、激しいよー」
ぎゅーっと抱きしめていると、激しいと言いながらも嬉しそうな蛍丸に桜は微笑んだ後、残りの五人を見る。
「よし、こい!」
そう声をかけると、今剣、鯰尾は飛び込んで来たが後の三人は遠慮していた。
桜は残りの三人も巻き込んで抱きしめると、気合いを入れ直した。
「残りも、サクッと行っちゃいますか」
その言葉に頷いた面々と共に、歩き出した。
「お疲れ様ー!」
皆で本丸に帰って来ると、丁度昼過ぎだった。
「お帰り主。昼食の用意は出来ているよ」
そう言って出迎えてくれたのは歌仙だった。
「ありがとう歌仙。一人で用意したの?」
「俺も手伝ったんだよ!」
「お帰り主。僕が作ったご飯もあるよ」
歌仙の後ろからヒョコッと顔を出したのは加州と髭切だった。
「本当に?ありがとう」
そう言って三人の頭をぽんぽんっと撫でると、ちびっこ達と共に手を洗いに行って広間へと向かう。
広間には遠征に行っていない面々が集まっており、食事をしていた。
(美味しい)
光忠もだけど、歌仙もどんどん料理の腕が上達している。
もっと手の込んだ料理が載ってる本を用意してもいいかもね。
そう思いながらご飯を食べていると、目の前に小鉢が2つ出てきた。
「主、これ俺が作ったの。食べて!」
「これは僕が」
小鉢を出してきたのは加州と髭切だった。
加州の持つ小鉢には野菜のお浸し、髭切の持つ小鉢には切り干し大根が入っていた。
「ん、ありがとう」
それぞれ食べて美味しいと伝えると二人は笑顔を浮かべた。うん、可愛い。
きゃっきゃと騒ぐ二人を見ながら食事を終えると、洗い物を済ませて広間に戻る。
「さてと……」
桜は気を入れ直すと、広間に残っている面々を見る。
「同田貫正国・大倶利伽羅・歌仙兼定・和泉守兼定・大和守安定・へし切り長谷部。演練に行くよ。準備はいい?」
「おっしゃぁ!」
「なれ合うつもりはない」
「はじめようか」
「いっちょやってやろうじゃないか!」
「出番だね。了解」
「おまかせあれ」
それぞれの返事を返してくれた面々に頷き、演練場へと向かった。
「ほう、ここが演練場………」
初めて来た演練場に、少しドキドキする。
心なしか、六人も緊張した面持ちだ。
(そうか……皆も来たのは初めてなのか)
桜は六人をチラリと見た後、隅で待つように告げる。
「受付して来るから、少し待ってて。いい子にね」
「主、お一人で大丈夫ですか?」
「さすがに大丈夫だ。心配ありがとう、長谷部」
心配そうな長谷部にそう言うと、小走りで受付へ向かう。
六人の元に早く戻るためだ。
「お姉さん、こんにちは。受付頼んでもいい?」
「お疲れ様です。受付ですね、かしこまりました。こちらの利用は初めてですか?」
素直に頷くと、演練場の説明を簡単にしてくれた。
・受付を済ませると、エントリー札が割り振られる。
・1グループに6組の本丸が割り振られ、総当たり戦となる。
・演練で受けた傷は、戦闘エリアを出ると全て回復する。
・審神者同士の交流は自由になっており、交流スペースも施設内にはある。
「なるほど……お姉さん、ありがとう」
微笑んでお礼を言うと、頬をほんのりと赤く染めたお姉さんが「頑張ってね」と応援してくれた。嬉しい。
エントリー札を受け取って六人の元へ戻ると、少しホッとした表情を浮かべた。放って行ってごめん。
「お待たせ。演練場の説明も受けたし、行こっか」
そう言って歩き出すと、皆の距離が近かった。
ごめん、そんなに不安だったか。
口に出すと多くの反論が帰って来そうだったから、別の話をしながら待機スペースに向かう。
自分達の組が最後だったのか、入った瞬間に目の前にあるモニターに文字が浮かびアナウンスが流れる。
『エントリー札、K-1番とK-6番は戦闘エリアへとお進みください』
「おっ、始まるみたいだね」
置いてある椅子に座り、目の前のモニターに映し出される戦闘エリアの映像を見る。
「皆は他の本丸の戦い方、見たことないと思うから先ずはお勉強だね」
今日は編成を考えずに来ているから、相手の部隊をどう崩すかも考えないとね。
戦闘エリアに、両部隊の姿が見えたと同時に戦闘が開始される。
「ほー、皆素早いねえ」
感心して見ていると、一緒にいた面々が練度の差に驚いている様子が見えた。
「……怯んだ?」
「なっ⁉そんな事は…」
「いいんだよ、怯んで。強さに絶対の自信を持つのも良いけど、自分より格上を見た際は素直に自分の力不足を認めて、どうすれば勝てるのか考える」
そう言って微笑むと、すぐに気を引き締めてモニターを見る。
「1番の部隊は、練度の高い短刀や脇差が多い。多分相手の間合いに入ったら一発でやられる。今の皆じゃ素早さは絶対勝てない。ならここぞという時を見極めて一撃にすべてを込めてみる、とか。6番の部隊は短刀・脇差・打刀・太刀・大太刀と揃っているね。大太刀は刀を振るのは少し遅い、その隙を短刀や脇差がフォローして連携が出来てる。でも全体的に練度は高くなさそうだから、フォロー役の面子を先に行動不能にしたら後はこっちのもん、って感じに考えてみたり」
ツラツラと戦略を考え出した桜に、六人は言葉を失う。
(あいつ、本当に女か?)
(ずっと戦い続けてたって言ってたしよ、そのせいか?)
コソコソっと話し出した同田貫と和泉守をチラッと見た大和守は、桜に近付いた。
「……主は、どう戦うのが一番だと思うの」
「………」
ツンツンした様子ではあるが、大和守の突然の主呼びに驚く。
「ねえ、聞いてるの?」
ムッとした様子の大和守にハッと気を取り直すと、ニコリと微笑む。
「そうだね……皆は、今日の組み合わせの中で一番弱い。なら気をつける事は、一対一で対峙しない事。大太刀がいるところとぶつかった時は、勿論一気に薙ぎ払われる可能性もある。だからといって一対一で挑めばすぐにやられるのは目に見えている。だったら協力し合わないとね」
桜がそう言うと、大倶利伽羅は不快な表情を浮かべる。
「俺は馴れ合うつもりは「はい、うるさいよー」
大倶利伽羅の言葉を遮ってポンっと大和守の頭を撫でる。
「そういえば隊長決めてなかったね。安定、よろしく」
「え、僕⁉」
「うん、副隊長は兼さんね」
「オレが副隊長か!って、お前!兼さんって…」
「堀川君が呼んでたから」
まあ、細かいことはいいじゃんと言い、周りを見る。
「群れて戦う事にも慣れている新選組、指揮をとるのは苦手じゃないでしょう?」
そう言って微笑むと、大和守と和泉守は一瞬驚いた後ニッと笑った。
「任せてよ!」
「任せな!」
気合の入った二人を見ていると、アナウンスが流れる。
『エントリー札、K-2番とK-5番は戦闘エリアへとお進みください』
「あ、順番が来たよ」
桜はそう言って立ち上がり、6人を見る。
「さっ、行こうか」
その言葉に、6人は頷いた。
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