新たな日常、愛刀
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「わーーー!あるじさん、とっても強いね!」
「主殿は驚くぐらい屈強なのだな!」
ワラワラと集まってくる面々に桜はアタフタし、前に斬りかかったことのある面々が桜の強さに冷や汗を流していると、どこからか笑い声が聞こえてきた。
「…………?」
桜や男士達は周りを見渡した後、桜の持つ刀へ視線を向けた。
「…………鬼切安綱?」
『僕の名前は、そっちじゃないよ』
「え……意思疎通が出来てる」
桜は周りの面々を見た後、刀を見て口を開く。
(鬼切安綱じゃないなら………)
「………髭切?」
そう問いかけると、その場に桜が舞った。
「源氏の重宝、髭切さ。君が………桜が、今代の主でいいんだよね?」
そう言って現れたのは、微笑む男士だった。
「…………」
「…………主?」
「………鬼切安綱……いや、髭切?」
「そうだよ」
ニコニコと笑う男士に、桜は唖然とする。
(鬼切安綱と髭切は同一と見られている諸説もあったけど、結局は別々に存在するとか云々の話も……あれ?)
「僕の鬼切安綱は……実は髭切だったの?」
「んーどうなんだろうね?呼び方なんて、どうでもいいじゃないか。ただ……君の愛刀である事には間違いないよ」
そう言って髭切は桜の手を取った。
「うん…それは気配でわかるけど……」
笑う髭切に、桜は微笑み返す。
「そうだね、僕の愛刀である事には間違いないか。これからもよろしくね」
桜がそう言うと、髭切は頷いた。
「てか、髭切が顕現しちゃったから……僕の愛刀が!」
いつも振るっていた刀が無くなり、少し寂しくなってしまう。
「主…」
「だけど、大丈夫か」
桜は笑うと周りを見る。
「何だかんだあったけど、まだまだお稽古時間はあるからね。二人一組作ってねー」
そう言うと、稽古場にいた面々は二人一組を作って手合わせを始める。
「そういえば、何で急に髭切は顕現したんだ?」
「さあ?僕にもあんまり…ただ、他の場所でも主である桜の声は聞こえていたけど、ここに来てそれが強くなって……起きることが出来たんだよ」
なるほど。
今までにも意識っぽいのはあったけど、この刀剣の付喪神達が沢山いる世界に来た事によって、力が増したって感じかな。
桜は一人で納得すると、そうだと髭切を見た。
「髭切は……改めてここの案内しないとだね」
そう言うと、今日の近侍である厚を呼ぶ。
「ごめんね、厚君。髭切を案内してあげてくれない?」
「任せとけ!」
「じゃ、髭切。行ってらっしゃい」
そう言って二人を送り出すと、稽古をする面々に視線を向けた。
その夜、桜はパッドを睨んでいた。
(内番のメンバーは決まってるから問題ないけど、出陣とか遠征どうしようかなぁ…)
んーっと考えると、よしっとパッドに部隊を入力する。
「厚君、これでいいと思う?」
「ん?どれどれ」
後ろでこんのすけと戯れていた厚を呼ぶと、パッドを見てもらう。
「とりあえず、第二から第四には練度の低い面々を」
顔の良い大人な男達と言えば良いのだろうか。
すっかり主夫が板について来た燭台切を筆頭に、顔の良い刀剣達は見事に練度が低かった。
短刀や幼さが垣間見える脇差、小さな蛍丸は練度がそれなりに高かった。
理由は明らかだが、考えると殺意が湧くので察して欲しい。
「明日は太刀や大太刀、打刀の大半は練度が低いから軽い遠征にでも行ってもらって、練度がそれなりにある子達には実際に僕と出陣してもらおうかなって思ってるんだけど……好戦的な男士は黙っているだろうか……」
「………黙ってねえと思うぜ?」
「だよねー」
厚の返答に、桜は頭を悩ませた後、よしっと顔を上げた。
「演練にも行くか。確か午前と午後で別れてたから、午前中に出陣して、午後に演練場に行こう」
よし決めた!
桜は笑うと、厚の頭を撫でる。
「明日、楽しみだな。今日はもう寝るから、厚君も寝な」
「おう!おやすみ、大将」
ニッと笑って出て行った厚を見送ると、桜はいそいそと眠る準備をした。
よしっと用意をした布団を見ていると、スパンッと襖が開いた。
驚いて新たに用意した刀を手に取りその場から飛び退くと、ニコニコと笑っている髭切が立っていた。
「おや?どうしたのかな、主。そんなに怖い顔をして」
「……敵襲かと思った」
桜は驚かさないでくれと言うと、肩の力を抜いた。
「どうした?髭切。何かあったのか?」
「何かって……眠りに来ただけだよ?」
「……え?」
「僕たちはいつも一緒だっただろう?」
「いやまあ、愛刀だからずっと一緒にはいたけど……髭切は刀剣男士として顕現したし、部屋は用意したよ?」
私としては一緒に寝ようがどうしようがいいけど、ここの本丸の面々はそういうのに敏感だからなぁ…
桜は少し考えた後、口を開く。
「髭切、僕と共にいたなら聞いていただろう、この本丸の惨状を。あまり彼らを変に勘繰らせたくないし、刺激したくない」
桜はそう言うと、髭切の頭を撫でた。
「髭切、分かってくれる?」
「僕は君の守り刀だ」
「………何かあったらすぐに呼ぶし、今よりも近い部屋を用意するから。ね?」
ジッと見てくる髭切の頭を撫でながらそう言うと、バシッと手を掴まれた。
「……約束、守ってね」
「勿論」
手に頬擦りする髭切に微笑むと、今日は部屋に戻るように告げた。
大人しく出て行った髭切を見送ると、今度こそと桜は布団に入った。
「はい、これが今日の部隊編成」
翌日、朝食を終えた後に皆を集めて紙を渡した。
近くにいた長谷部がその紙を受け取り、読み上げていく。
第一部隊、五虎退・小夜左文字・今剣・蛍丸・鯰尾藤四郎・骨喰藤四郎
第二部隊、小狐丸・岩融・御手杵・蜻蛉切・太郎太刀・次郎太刀
第三部隊、石切丸・鶴丸国永・鶯丸・にっかり青江・蜂須賀虎徹・宗三左文字
第四部隊、三日月宗近・燭台切光忠・一期一振・江雪左文字・長曽袮虎徹・山姥切国広
長谷部が読み上げ終わった後、桜に注目が集まる。
「とりあえず、昨日の夜皆の練度を見た。まずは練度が高めの者に出陣してもらう。練度の低い人は遠征。簡単なものにするから部隊編成の相性は考えてないけど、今回は許してほしい」
そう伝えると、皆は頷いた。
「おい、俺は出陣出来ねえのか」
ムスッとしながら言ったのは同田貫だった。
「うん、出陣はしない」
「なっ!?」
すぐに返事をした桜を、同田貫は睨みつける。
「でも、演練に行く」
「……演練?」
「うん。同田貫正国・大倶利伽羅・歌仙兼定・和泉守兼定・大和守安定・へし切り長谷部。こちらはもれなく血気盛んと僕が独自に判定した面々だ。この面子で演練に赴く」
血気盛ん=私が初めて来た時に斬りかかって来たり、戦の話をやたらとする面々だ。
何か心当たりがある者もいるのか、苦い表情を浮かべる者も居た。
「正直、練度が低い面々で心配はあるけど、演練は怪我をしても自動的に癒えて折れる心配もない。だから君達を連れて行く。でも、怪我が治るからって無茶な戦いをする奴は二度と戦わせないから、よく頭に入れておくように」
桜の言葉に、面々の表情は更に苦いものになった。
「演練は午後からね。で、各部隊なんだけど第一部隊は練度高めの面子で固めた。簡単な戦場に僕と行こう」
「え、主も行くの?」
「行くの。なあに、大丈夫さ」
桜はニッと笑うと、残りの部隊を見る。
「第二から第四部隊は遠征ね。練度低すぎるからまずは遠征からやって行こう。行く先はそれぞれここね。お使いみたいなもんでやりごたえを感じないかもだけど、そのやりごたえない遠征でも完璧にしてみせてね」
桜の言葉に、面々は頷いた。
「演練は午後になったら行くから、怪我しないようにね。よし、それじゃあそれぞれ活動開始!」
桜はそう言うと広間を出て門へ向かい歩き出した。
「主!僕はお留守番?」
駆け寄って来た髭切の言葉に頷くと、微笑む。
「髭切は人の体を手に入れたのは昨日だから、まずは内番をこなして体に慣れるところからね。慣れて来たら出陣や遠征や、お願いするから」
そう伝えると、髭切はどこか不満そうなものの頷いた。
その後門前に着くと、遠征部隊を皆送り出す。
「じゃあ、僕たちも行こうか」
んーっと門にあるパネルと睨めっこをした後、よしっと頷く。
「今日は江戸に行こう。準備はいい?」
問い掛けると面々が頷いたので、桜は微笑んで江戸を選択した。
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