新たな日常、愛刀
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「さて、今日から本格的に活動しようと思うが、君達をまだ戦場に出す事は出来ない」
「え、なんでだ?」
後日、皆との朝食を終えた後に集まって話を切り出すと、きょとんとした愛染が声をあげた。
「長い間、戦場に出ていなかったのだから、先ずは体を軽く動かす事から始めて、暫くしたら出陣や、遠征等を行いたいなと、考えてる」
「なるほど」
桜はそう言うと、指を立てる。
「まずは皆で畑仕事と馬当番から始めよう。所謂内番の仕事だね」
「内番には手合わせもあるだろうが」
不満そうな同田貫に笑う。
「手合わせは最後。畑仕事と馬当番で今日は体を沢山動かして、明日手合わせしようかなと考えてる。その後は日毎に当番を決めてやっていくつもり」
桜はそう言うと、秘技早着替え(上に付けていたエプロンを取っただけ)でジャージ姿になる。
「皆も着替えて、まずは畑行くよ!」
ニッと笑う桜を見て面々は顔を見合わせた後、頷いた。
桜はよしっと気合いを入れると、こっそり頼んでいた野菜の種を大量に抱えながら畑に向かう。
「主さん、俺も荷物持つぜ!」
「わしも持つぜよ!」
「2人とも、ありがと!」
声をかけてくれた浦島と陸奥守に礼を言って荷物を分けて持ってもらい、雑談しながら歩いていると畑についた。
「さてさて、先ずはこの荒れ果てた畑を耕すとこから始めよう」
桜はそう言って予め用意していた鍬を持つ。
「先ずは力自慢の皆に手伝ってもらおうかな」
そう言って独断と偏見で数人に鍬を渡す。
岩融、蜻蛉切、御手杵、太郎太刀、次郎太刀、山伏、大倶利伽羅、同田貫。
前者6人は筋肉と体の大きさ、後者は戦に出たがっているから沢山体を動かしてもらう為に選んだ。
「ささ、始めるよ!」
桜はそう言うと鍬を使ってどんどん畑を耕す。
戸惑っていた面々も、その様子を見て耕し始めた。
「耕せてきたら…次は種を植えよう!」
「待ってました!」
ニカッと笑った獅子王の手には、既に種の袋が持たれていた。
「全く、どうして俺がこんな事を…」
「僕を使いますか…」
拗ねた様子の蜂須賀と不思議そうな宗三に桜は視線を向ける。
「ほらほら文句言わずに、兄弟分と楽しみながら仕事してね」
桜が指差した先にはそれぞれの兄弟刀が楽しそうに種を植えていた。
それを見た2人は渋々と畑仕事を始めた。
「皆ー!種を植え終わったら、水をあげてね!あ、でも、あげすぎはダメだから!」
桜の言葉に、それぞれが返事をする。
「光忠、水あげ終わったら皆と馬小屋に来てもらえる?」
「わかったよ」
燭台切が返事をすると、桜は先に馬小屋に向かう。
そこには神山から特別ボーナスとして与えられた馬が6頭。
「皆、今日からよろしくね」
馬に挨拶をしてそっと撫でる。
「主、畑仕事は終わったよ」
聞こえて来た声に振り返ると、燭台切が皆を連れて来ていた。
「お疲れ!さあ、次は馬の世話をしよう。今後出陣する時にお世話になる事もあるからね」
始めるよ!と言った桜の言葉に短刀達は元気よく返事をし、その他の面々も返事をした。
「あー!お疲れ!」
桜は笑いながら夕食を食べ終わった面々を見た。
「今日は沢山体動かしたし、それなりに鈍ってた自覚が出た奴もいるんじゃ無いかな?」
桜の言葉に、多くのものが苦い顔をした。
「今日1日で畑仕事と馬当番の土台は出来たから、明日からはここに鍛錬且つ手合わせを混ぜる。三当番に皆を分けて、畑仕事・馬当番・鍛錬をこれからして行くから。体が動かせる様になってきたら、遠征と演練と出陣も」
そう言った桜は、箱を取り出した。
「ってわけで、ここにくじ引きがある。これで明後日からの当番を決めようと思う」
桜が用意していたくじ引きの箱、ホワイトボードを取り出す様子を面々はぽかんと見ていた、いつ用意していたんだと。
「ほら、ボーッとしてないでくじ引いて。で、引いた紙を僕に見せる」
その言葉に弾かれた様に動いたのは長谷部だった。
その長谷部に続き、皆順番にくじを引いて行く。
「ふむ…決まったな」
ボードに並んだ名前を見て、桜は1つ笑った。
「今後は本格的に動いて行くから、今日は早く寝て、明日の手合わせに備えろよ」
その言葉に、面々は頷いた。
後日、手合わせをする為、特別に発注した大きい道場へと来ていた。
「じゃ、ストレッチから始めるか」
「ストレッチ?」
「そう、ストレッチ。準備運動だね」
ちゃんと真似してねーと言いながら、ストレッチを進めて行く。
ちびっ子が一生懸命やっているの、可愛い。
ストレッチを終了させると、ヨッと立ち上がる。
桜は壁にかかった竹刀と木刀を見ると、うーんと頭を悩ませる。
「主、どうされましたか?」
「んー、どっちがいいかなと思って」
壁を指差しながら、声を掛けてきた蜻蛉切にそう伝える。
「実戦を意識するなら木刀の方がいいかなぁ?」
どう思う?と刀剣達を振り返ると、やる気満々の男子がニッと笑っていた。
「俺は真剣で構わねえぜ」
そう言ったのは同田貫だった。
「………真剣、ねえ…怪我させちゃったら元も子もないしなあ」
桜がそう言って、頬を掻くと同田貫は刀を抜いた。
「随分な自信だな!」
ヒュッと同田貫は刀を振るった。
面々が突然の事に驚く中、キィンと刀同士がぶつかる音がした。
「まあ、そりゃ……伊達に戦ってきてないからね」
ニッと笑った桜が、刀を抜いて同田貫の刀を受け止めていた。
鬼切安綱、桜が初めて転生した先で手にした刀。
そのままずっと、巾着からお取り寄せして持ち歩いている。
桜は同田貫の刀を振り払うと、タッと床を蹴った。
「ほらほら、動きが鈍いよ。そんなに手を下げたら首切られちゃうよ。ああ、今度は上げすぎ」
同田貫の悪いところを次々と指摘しながら刀を振るい、最後に足払いをした。
「うおっ!?」
「はい、終わり。好戦的なのはいいけれど、自分の実力を理解せずに格上に挑むならば何か策を考えて確実に仕留めれるようにしようね。今のままなら……無駄死にだよ」
桜の声のトーンが低くなり、面々は背筋がぞくりとした。
「僕は君達を折らせるつもりはない。僕と共に歩んでくれるというなら……共に強くなろう」
桜はそう言って微笑むと刀を鞘に納め、同田貫へ手を伸ばす。
同田貫はハッとすると、その手を掴んで立ち上がった。
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