鬼殺隊〜
名前変更
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「あ、朱…」
「ドウシタノ?」
「あのさ…ちょっと、任務多くない?」
煉獄家を出てから雲取山の方面へ向かいながら、与えられた任務をこなしていたのだが…気のせいでなければ任務の数が多い気がする。
「オ館様ガ、暁美ナラ大丈夫ダロウッテ!」
「そ、そう…」
信じてもらえているのか、なんというか。
暁美は少し息を吐くと、次の目的地へと向かっていた。
運がいいことに、比較的自分が出会う鬼達は弱くそれほど体力も消耗していなかった。
もしかしたらそれも見越していたのか…?なんて考え、お館様は読めないなぁと考えていた暁美はピタリと足を止めた。
(この辺り、もしかして…)
暁美は地図を取り出して辺りを確認する。
「あ、朱!私、この近くの山に用事があるの」
「オ館様ガ、少シクライナラ寄リ道ハ問題ナイッテ言ッテタワ!」
その言葉にヨシっと暁美は頷くと、見えてきた町へと向かうことにした。
この付近の山のどこかに、竈門家があるはずなのだ。
けれど場所までは把握していない。
だから近くの人へと話を聞かないといけないのだ。
町…村?へ着くとぐるりと周りを見渡し、平和な光景に暁美は頬を緩める。
ここ数日、幾つもの任務へ向かい鬼と対峙していたのでこのような光景は久しぶりかもしれない。
ほわほわとした気分で歩いてゆっくりとした時間を堪能した後、さてと周りを見渡す。
たまたま目があったお婆さんに微笑むと、タタタッと近付く。
「こんにちは。お尋ねしたいことがあるのですが、良いですか?」
「お嬢さん、どうしたのかね?」
「竈門さんのお宅をご存知ですか?」
「ああ、竈門さんの」
お婆さんはそう言って笑いながら暁美の格好を見る。
ああ、怪しまれてるなぁ…と思いながらも笑顔は絶やさずに、お婆さんを見る。
「以前、竈門さんに私の友達を助けていただいて」
友達だと朱を指差しながらそう言うと、ほんの少しお婆さんの雰囲気が優しくなった。
「あら、可愛いお友達ねぇ…本当に竈門さんは優しいお方だわ」
お婆さんはニコニコして朱を見た後、近くの山を指差した。
「あの山に住んでいるよ。時折降りてくるからね、人が歩けるような道はあるはずだよ」
「ありがとうございます!」
暁美はお婆さんに頭を下げると、教えてもらった山に向かい歩き出した。
山の麓へ着くと教えてもらった通り、さくさくと登れるように道が出来ていた。
暁美は道に沿って山を登っていくと、暫くして煙が見えてきた。
きっと、炭焼きを行なっている竈門家が近いのだろう。
煙を目指して少し小走りに道を進むと、一軒の家が見えた。
(やっと着いた…)
歩きやすかったとはいえ、山を登るのはそこそこ体力がいる。
暁美は息を整えながら家に近付いた。
「ごめんください」
そう声をかけると、パタパタと足音がして勢いよく扉が開かれた。
「はい!」
元気よく現れた少年にビクッと肩を揺らした後、その顔を見て微笑んだ。
(ああ、君は)
目の前の少年はあの竈門炭治郎だった。
その後ろから覗いているのは禰󠄀豆子ちゃんだろうか。
彼らの幼少期がとても可愛くて思わず声をあげそうになったがグッと唇を噛んで我慢する。
いやほんと可愛いんだもん…
暁美は深呼吸し、膝をついて目線を近付けるとにこりと微笑む。
「はじめまして、お父様はいらっしゃいますか?」
「います!」
炭治郎は元気よく返事をすると家の中へと入っていった。
慌ててついて行く禰󠄀豆子も見送ると、ゆっくりと立ち上がった。
「こらこら炭治郎、そんなに押すんじゃない」
「だって!お客様が!」
そんな声が聞こえてきてクスクス笑っていると、家の中から人が出てきた。
「こんにちは。俺に用があるのは君かな?」
「突然申し訳ございません。はじめまして、暗波暁美と申します」
そう言って頭を下げると、男性…竈門炭十郎は微笑んだ。
「俺は竈門炭十郎だ。わざわざ来てくれたんだ。お茶でもどうだい?」
「そ、そんな!勝手に訪ねてきたのにそんなご親切をしていただくのは」
「炭治郎、お客様を中に案内してくれ」
「はい!」
「え、あの…」
やんわりと断ろうとしたらそれに気付いた炭十郎は炭治郎をけしかけてきた。
流石にキラキラした目で「どうぞ!」と家の中を指差す炭治郎を無碍には出来ず、暁美は少し息を吐くと「お邪魔します」と家の中へと入った。
「こんにちは」
「こんにちは。お邪魔します」
家に入ってすぐに赤ん坊を抱く母親、葵枝がいて笑顔で挨拶されたので少し恥ずかしく思いながらも笑顔で挨拶を返す。
「奥の部屋を借りるよ」
「はい、どうぞ」
炭十郎に頷いた葵枝にペコリと頭を下げると、案内された部屋へと入った。
座布団を勧められ座ると炭十郎を見た。
「突然の訪問にも関わらず、良くしていただいてありがとうございます」
そう言って頭を下げると、「顔を上げてくれ」と言われてそっと上げる。
穏やかな炭十郎の目はとても優しいもので、竈門家は皆穏やかなんだなと考えていると、トタトタと足音がした。
足音が聞こえてきた方を向くと、慎重にお茶を運ぶ炭治郎と、その後ろを付いて歩く禰󠄀豆子が部屋へと入ってきた。
「お茶です!」
大きな声でそう言った炭治郎に笑いつつ「ありがとうございます」とお茶を受け取り微笑むと、ペコリと頭を下げて炭治郎は禰󠄀豆子も共に去って行った。
「運べたー!」と大きな声で母親に報告している声が聞こえ、思わずクスクスと笑ってしまった。
「騒がしくてすまないね」
「いえ、元気なのはいいことですから」
そう言って出されたお茶を一口飲むと湯呑みを傍に置き、炭十郎を見る。
「本日お尋ねしたのはとあるお願いがあり参りました」
「ほう、お願いかい?」
「……ヒノカミ神楽を、拝見したいのです」
その言葉に、炭十郎は目を丸くした。
「君は…ヒノカミ神楽を知っているのかい?」
「あの、話だけですが…実際は見たことありません」
「ふむ…」
炭十郎はチラリと暁美が持つ刀を見て目を細めた後、フッと笑った。
「きっと君は、これの持ち主と関係があるのだろうね」
これ、と言って耳飾りを触った炭十郎に暁美は小さく頷いた。
「あの、直接関係があるわけではないのですが、大きくいえば関係がありまして」
わたわたと慌てる暁美に炭十郎は笑い、ぽんっと頭を撫でた。
「深くは聞かないよ。君は何かを教えても悪用はしないだろうから」
「…ありがとうございます」
「とはいえ、あの神楽は新年の始まりに舞うものだ。その時期にまた来れるかい?」
「はい、勿論です!」
新年までまだ少し期間がある。
その間、任務は無くならない。
ならばお館様に早速連絡をしなければならない。
頭で色々と考えた後、炭十郎に頭を下げる。
「それではお言葉に甘え、新年を迎えましたら訪問させていただきます」
「ああ、待っているよ。それより今日はもう帰ってしまうのかい?」
「え?あの…?」
「よければ泊まっていくといい」
流石にそこまで甘えるわけにはいかないと断ろうとしたが、炭十郎の笑顔を見ていると大変断り辛い。
暁美は少し考えた後、「よろしくお願いします…」と頭を下げた。
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