鬼殺隊〜
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錆兎と冨岡と別れを告げ、煉獄家を目指して走り続けていた暁美は、見慣れた光景が目に入り頬を緩めた。
(ああ、無事に帰ってこれた)
それがとても嬉しい。
「オ帰リナサイ!」
聞こえてきた声に顔を上げると、朱が飛んでいた。
「朱!」
「ミンナ、待ッテルワヨ!」
その声に嬉しくなり、並走するように飛ぶ朱に微笑んだ。
煉獄家が見えてきて、ああ帰ってきたのかと実感していると門前で掃除をしていたふみがこちらに気付いた。
「あら…まあ!!」
「ふみさん!」
「よくぞご無事で」
ふみの前に止まると、涙を浮かべるふみに無事を確かめるように体をぺたぺたと調べられた。
それに笑っていると、騒がしいことに気付いたのか誰かが走ってきた。
「ふみさん!どうした……暁美!!」
「暁美…!?」
走ってきたのは杏寿郎と伊黒だった。
二人は暁美を見て驚いて目を丸くした。
「…ただいま戻りました」
そう暁美が言うと、杏寿郎は満面の笑みを、伊黒も小さく笑みを溢すと駆け寄ってきた。
「戻ってきたか!」
「…怪我はしていないのか」
ぎゅうっと杏寿郎に抱きしめられて「ぐえっ」となんとも言えない声を漏らしつつ伊黒に頷いた。
「さあさあ、中へ。旦那様も奥様も、千寿郎坊ちゃんも首を長くして待っていましたよ。どうぞそのお顔を見せてあげてください」
「そうだな。行こう!暁美」
「わわっ!」
杏寿郎に手を引かれてパタパタと走る。
その後ろ姿を見て伊黒は小さく息を吐くと、笑って後に続いた。
「父上、母上!暁美が戻りました!」
二人がいるであろう部屋の前で止まると、杏寿郎は声を上げた。
すると即座にスパンと襖が開いた。
その勢いに暁美が目を丸くしていると、厳しい表情の槇寿郎と目が合った。
「た、ただいま戻りました」
「………」
槇寿郎は無言のまま一歩前に出た。
それをゴクリと唾を飲んで見上げていると、ポンっと頭に手が置かれた。
「…よく、生きて戻った」
その言葉と、優しく下がった眉尻に暁美は目の前が潤んだ。
「はい!」
そう言って笑うと、「中へ入れ」と言われたので槇寿郎に続いて部屋へと入った。
「暁美さん。…無事に戻られて、本当によかったです」
「瑠火さん…」
辛い筈なのに体を起こし、手を伸ばしてくれる瑠火に近寄る。
そっと胸に抱かれたので、おずおずと抱きしめ返すとクイっと服を引かれた。
視線を向けると千寿郎が服を引っ張っていたようで、暁美は瑠火から体を離すと千寿郎に微笑んで手を差し伸べた。
笑顔で抱きついてきた千寿郎を抱き締めると、無事に生きて帰ったことの幸せを、改めて噛み締めた。
あれからすぐにふみさんが用意してくれたお風呂に入り、食事を沢山出されたので全て平らげ、陽の匂いがする布団へと案内されて眠りについた。
丸一日眠ってしまったようで、起きた時は皆に苦笑された。
「暁美、君に客人だ」
そう言われて案内された部屋には、鬼殺隊に所属する隠がいた。
「あなたが暗波暁美さんですか?」
「はい」
声をかけてきた隠に頷く。
(この眼鏡の人、どこかで見たことあるような…)
「こちら、鬼殺隊の制服となります」
そう思いながら、隠が渡してきた服を手にする。
「ありがとうございます」
受け取った服を広げて、口元が引き攣った。
(ああ、あなただったのか…)
前田まさお。
女性隊士に際どい服を渡す男。
本編には基本出ていないし、かなり若いのでわからなかった。
暁美はチラリと前田を見る。
「制服はこれだけですか?」
「はい!それだけですね」
元気よく頷いた前田に溜息を吐く。
裾がかなり短いスカートに、心なしかボタンが少なめの上の服。
気のせいでなければ胸が見えるか見えないかくらいの位置にやっと一つ目のボタンがある。
自分の体はまだ発育途中だからそこまで胸が膨らんでいる訳ではないが、大人の女性が着用するとそれはそれはセクシーな状態になりそうだ。
暁美はグッと服を握りしめると、くるりと前田に背を向けた。
「お?お着替えになりますか?」
「いえ、槇寿郎さん…炎柱のもとへ。こちらの制服の代わりになるものがあるか聞いてみます」
そう言ってにっこり笑うと、前田の顔が青くなった。(目元しか見えてないが)
「そそそ、そんな…わざわざ炎柱様にお伺いされなくても」
「こちらの制服は私が戦うには随分と動きにくそうですので。お館様のお役に立てなくなるのは嫌ですし」
ピシャッと言い放った暁美に前田は「うつっ…」と唸ったあと、バッと何かを取り出した。
「あー!なんとここにもう一着制服がー!」
はじめから出しておけ、という言葉は飲み込み取り出された制服を手にして確認する。
皆がよく着用している長袖に
「それでは、合わせますので外に出ていただけますか?」
「こちらは気にしませんのでそのまま…「どうぞ、外に」
少し強めに言ったが動こうとしない前田にイラッとしていると、襖がバッと開いた。
「隠の君!父上がお呼びだ」
「え、炎柱様が……??」
立っていたのは杏寿郎で、その特徴的な目はしっかりと前田を捉えていた。
後ろには伊黒もいて、ジトリと前田を見ている。
炎柱が呼んでいるという事と二人からの視線に前田はダラダラと汗を流していた。
「さあ、案内します」
「あ、ありがとうございます…」
前田は顔面蒼白のまま部屋を出た。
ぽかんと二人を見ていると、ちらりとこちらを見て笑った。
(あ、もしかして…)
外で聞き耳を立てて、前田の言動に我慢しきれなくなり助けてくれたのかもしれない。
ありがたいなと感謝しつつ、そそくさと制服に着替えた。
サイズに問題はないようで、ぴったりだった。
そして、気も引き締まる。
部屋にあった姿見を見て変ではないか確認していると、外から「入ってもいいでしょうか」と声がした。
「どうぞ」
「失礼します…おお!ぴったりのようですね!」
入ってきたのは前田で、キラッと眼鏡が光ったかと思うとくるくると暁美の周囲を回り出した。
変なところがないか見てくれているのはわかっているが、ソワソワしてしまう。
「…はい。それでは制服を合わせるのはこれで大丈夫そうですね。これからも…ちゃんとした制服をご用意いたしますので」
何かを思い出したのか少し青ざめながら話す前田に苦笑すると、「よろしくお願い致します」と頭を下げた。
前田が帰るのを見送ったあと、槇寿郎が休んでいるであろう部屋へと向かう。
「槇寿郎さん、入ってもよろしいでしょうか」
「…入れ」
返事を聞いて中に入ると、制服姿をジッと見つめた後に「死ぬなよ…」と言いながら暁美の目を見た。
「勿論、死にません。鬼舞辻を倒すまでは」
暁美はそう言って笑うと、「制服の件、ありがとうございます」と頭を下げた。
きっと、色々と前田に話をつけてくれたのは間違いない。
「なんの事だ」と言いながら目を逸らす槇寿郎に、笑顔をこぼした。
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