原作突入~千鶴外出許可
名前変更
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「おい、桜」
「はい?」
名前を呼ばれて振り返ると、そこには歳さんと山南さんがいた。
千鶴がここへ来て数日、そして土方と山南という組み合わせにある事を思い出した。
2人は大阪へ出張に行く筈だ、そこで山南さんは…
いや、そんなことには、させない。
「僕に何かご用ですか?」
「俺達は明日から大阪へ行く。留守の間のことは任せたぞ」
「え、僕がですかー?」
面倒くさいのを全面に出してみる。
「総司が馬鹿なことしてないかとか、原田達が島原で馬鹿してねえかとか、色々見れんのはてめぇぐらいだろ」
「歳さん、買い被りすぎ」
頼ってくれるのはありがたいが、荷が重いぜお兄さん。
「雪村君の事も、よろしく頼みましたよ」
「千鶴の事なら任せて山南さん!悪い虫はぶった斬る!」
「……ったく、お前は…」
山南の言葉に意気込む桜を見て、土方は呆れたように溜め息をついた。
(あ、やばい)
話終わっちゃった、山南さんに忠告しなきゃ…
「………山南さん、土方さんも、周りには充分気をつけてね」
「何だ、俺達が殺られるとでも思ってんのか?」
「思っては…ない。でも、怪我に充分気をつけてください」
ソッと山南さんの左手に触れる。
「………貴方の忠告はよく当たりますからねえ。充分に気をつけましょう」
微笑んだ山南に、桜は何度も頷いた。
「お二人とも、お気をつけて行ってらっしゃい」
ニコリと微笑むと、2人も笑顔を浮かべた。
文久四年 一月
(寒い…)
布団を肩まで引き上げ、目をゆっくり開く。
千鶴が来てから一週間、土方と山南が出張へ行ってから数日。
彼女が保護された時の夜のことを思い出していた。
千鶴の見所は新選組預かりとして屯所に置くことになった、しかし女としておいて置くわけにもいかない。
女を匿っているという話が広がれば、良くない勘繰りが生まれる可能性があるから。
確定しているわけではないが、綱道を狙う奴らに、千鶴が狙われる可能性があるから。
不確定要素が多い現状で迂闊な行動は出来ない、その為に千鶴は男装を続けてもらうとのことだ。
歳さんの言葉は最もだから、千鶴には多少の我慢をしてもらうしかない。
それに、隊内に女性がいれば風紀を乱しかねない。
これは私も関係することだから、かなり慎重に生活をしている。
私のことも、千鶴の事も、試衛館時代から一緒にいる幹部達の間だけの秘密だ。
ただ、彼女が冷たい目で見られるのは耐えられないので、自分の弟だということだけ隊士に伝える事を許可してもらった。
理由も無理やり付けたし、下手に手は出せないだろう。
それより…
(千鶴に引きこもっていろってのは、許さん!)
原作も知ってるから言うが、許さん、許さんぞ!可愛い子には旅をさせよ!
よしっと起き上がると、猛スピードで着替えた。
顔を洗い身なりを整えると、千鶴の部屋へ向かった。
千鶴の部屋に来ると、彼女は小太刀を手にし、与えられた個室で溜息を吐いていた。
「千鶴」
「⁉兄様!」
パッと笑顔になった千鶴の頭を撫でると、近くに座る。
「なにか悩み事?」
「えっと…」
千鶴は言葉を口にすることを悩んだが、待っていると口を開いた。
ひっそり生活をする事が大事なのは分かっているが、ここに居るからには役に立つことをしたい、父を探しに行きたい。
(んーだよね)
「千鶴は、やっぱり綱道さんを探しに行きたいよね?」
「はい…」
「僕からも、土方さん達には声かけてるんだけどなぁ…」
あの人は中々首を縦に振らないからなぁ…
そういえば、ここで千鶴は一ちゃんとイベントがあった筈。
「千鶴、鬼の居ぬ間になんとやら、だよ」
「えっ?」
「僕だけの言葉じゃあの人は首を縦に振らないから、味方を増やそう」
「味方を?」
「うん。千鶴は、僕がここに来なかったらどうするつもりだった?」
「えっと…」
言い辛そうにする千鶴に言葉を促すと、人を探してお願いするつもりだったと言った。
「行っておいで」
「兄様…良いのですか?」
「屯所内なら、僕は止めないよ。千鶴は良い子だから、屯所から出たりしないでしょ?」
「はいっ!」
元気よく笑った千鶴の頭を撫でると、ソッと背を押して部屋の外へと促した。
千鶴は周りを気にしつつ、中庭の方へと歩き出した。
「さーてと」
千鶴の様子見も兼ねてイベント発生するところに促したし、用事でもしようかなぁ。
千鶴の部屋を出ると、自室とは別に与えられている執務室、もとい医務室に向かう。
私はこの世界に来るときに与えてもらった知識をフル活用して、予定通りに医者的な立場になれた。
新選組の中の薬品は私がメインで管理している。
サブで管理しているのは、勿論あの人。
「山崎さん」
「雪風君か」
医務室の中で足りない薬品をメモしていたのは、山崎烝。
監察方として新選組を影から支える彼は医学にも精通している為、手助けをしてもらっている。
「遅れてすいません、足りない薬品あります?」
「今書き出していたのだが、これらの物が少なくなっている」
メモを見せてもらい、結構少なくなってる物が多いなと感じた、特に二日酔いに効く薬が。
「あの三馬鹿にはそろそろお灸を据えないとダメですねぇ…」
「……程々にな」
苦笑した山崎に桜は笑った。
「そういえば山崎さん、これ。置屋、揚屋で集めた情報です」
「……すまない、助かる」
不逞浪士が良くないことを企んでいる噂は常に京を流れている。
そして、その様な話を収集するには茶屋の他に、置屋や揚屋で集めるのが手っ取り早い。
私は女であることをフルに活用し、山崎さんの手伝いをしている。(体は売らないギリギリのラインでね!)
山崎さんは私が女だとは知らないから、男なのに女装をさせていると申し訳なく思っているそうだ。気にしなくて良いのに。
とりあえず、私が千鶴を自分の小姓にしなかった理由は、これも関係していたりする。
頻繁に屯所を離れる事があるわけでは無いが、長期間千鶴の側に居れない時もある。
ならば、なるべく近くに居れる人の小姓にしてもらうのが一番だ。
「雪風君…?」
「ああ、ごめんなさい。意識飛んでました」
「全く、君は…」
呆れた表情を浮かべる山崎の脇腹を突くと、立ち上がる。
「なっ⁉いきなり何をする」
「さーて、薬の買い足ししないとなぁ~」
「聞いているのか!」
「もー聞いてますから、買い出し、行きましょう?」
ニッと笑うと、山崎は苦笑しながらも頷いた。
(これで、良しっと)
山崎と共に行き着けのお店を周り、足りないものを買い揃えた。
行き着けのお店はどこも面食いの人ばかりだから、山崎さんを連れて行けばだいたいオマケをしてもらえる。
偶に私もしてもらえるけど…
そんな感じで今日も安く、多く買い出しが出来た、ラッキーだ。
「今日も大量ですね!」
「君は相変わらず、口が上手いからな」
「僕は関係ないですよー山崎さんが、カッコイイからですよ」
「……君は、本当に…」
何でそこで呆れんのさ山崎さん、解せぬ。
でも、よく見たら耳が赤い気もするから許す。
「帰りましょっか」
「そうだな」
購入したものを大事そうに抱え直すと、屯所に向かって歩き出した。
「……一ちゃん、これは?」
「豆腐だ」
「あ、うん…そうだね。何でそれを僕に?」
「あんたの作る豆腐料理は美味い」
「あ、うん…ありがとう」
夕方、夕食を作ろうと勝手場で準備をしていると、パタパタと足音がした。
振り返ると、そこには爛々とした目で豆腐を渡して来た斎藤がいた。
桜は驚きながらも、豆腐を受けとった。
「……急だったし、お味噌汁とかでもいい?」
「勿論だ」
豆腐が食べれたらそれでいい一ちゃん、嫌いじゃないよ。
私は新選組で給食のおばちゃんもしている。
毎日献立を考えるのも仕事の一つだ。
幸い、食材を豊かに確保できているので、栄養不足にならないのは嬉しい。
隣で手伝ってくれる斎藤に指示を出しながら、桜は夕食を作り上げた。
「一ちゃんの味噌汁には、ちょっと多めに豆腐を入れといてあげる」
「誠か…!」
「うん、本当」
だから、千鶴達を呼んで来てと頼む。
土方さんには初日に許可をもぎ取ったから、一緒にご飯を食べることは問題ない。
皆の食事を運び終わると、斎藤はそそくさと千鶴と見張りをしている沖田を呼びに行った。
(見張り、早くとってあげたいなー)
信用がないわけではないけど、念の為とか…ふざけんなよ歳さん!
唇を尖らせながらご飯を茶碗に入れていると、ぷにっと唇を誰かに突かれた。
「ん?」
「なーに、拗ねてんだ?」
突いて来たのは左之さんだった。
「いやー早く千鶴から、見張りを取ってあげたいなって思っただけー事情が事情だから、別に何も言わないですけどね!」
「お前は、ほんと千鶴が好きだな」
「勿論!」
ニッと笑うと頭を撫でられたけど、もう私は子供じゃないぞ。
「桜ちゃん!俺、大盛りで!」
「桜ちゃん?僕、そんな人知らないですねー」
「桜!オレ、大盛りで!」
「わ、悪い…桜、謝るから普通に飯を入れて欲しい…」
「わかればいいんですよー」
元気な平助のご飯を少し多めに盛り付けていると、永倉は冷や汗を流した。
ちゃんと謝ったからそれなりにご飯は増やしてあげよう、この人は大食らいで少なかったらかなり煩い。
「総司もちゃんと食べさせないとなー」
そう言いながら、ぽんぽんと総司のご飯を大盛りにする。
「………てか、あいつら遅くねえか?」
「確かに…平助、ちょっと見て来てくれよ」
「えーなんでオレがー」
「平助、お願い!」
私が頼むと、平助は渋々と広間を出た。
私に逆らったら食事の量が減ってしまうから、滅多なことでは彼らは逆らえない。
ふふん、と鼻歌を歌いながら食事の用意の終わった広間を見ていると、千鶴達が入って来た。
「遅ぇよ」
左之さんは呆れた様子でそう言った。
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