皆のその後…
名前変更
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「丞先生」
そう言いながら山崎の家…改め、診療所に足を踏み入れた。
「桜…君からそう呼ばれるのは慣れないからやめて欲しいのだが」
そう苦笑しながら言った山崎に、桜はふふっと笑いながら近付いた。
山崎は自分の家としてこの場所を提供してもらった際、診療所にしたいと相談を受けた。
この里には桜以外に医療に長けている者はいなかった。
千鶴も医療の心得は多少あったが、蘭学…所謂外からの怪我に対する知識である事に対して、山崎が持つ内からの病状に対する知識とはまた別。
そして戦いのないこの里では山崎の知識の方が求められた。
その結果、里の当主である桜以外にも対応できる者がいた方がいいだろうと、山崎が名乗りをあげたのだ。
そのおかげで桜は肩の荷がかなり降りたといっても過言ではない。
「丞さん、調子はどうですか?」
「肌寒くなって来たからか、体調を崩した者もいるようだがそこまで多くないな。外傷に関しては鬼である君たちはすぐ治るからあまり患者はいない。いるとしたら…君がよく言う馬鹿者達だ」
馬鹿者達、それは元新選組の皆のことだ。
鍛錬をするのはいいが体が鈍るからとたまに行き過ぎた打ち合いをしているのだ。
桜は溜息を吐いた後、山崎を見て微笑む。
「丞さん、色々とありがとう」
「気にしなくていい」
照れたように視線を逸らす山崎を、桜はジッと見つめる。
彼からのアプローチは、他の皆に比べてかなり控えめなものだった。
とはいえ、こちらが照れるような行動は何度かされていたが…
そんな彼は、今も私のことを好きでいてくれているのか…それは正直自信がない。
もう一度言うけれど、彼からのアプローチはかなり控えめだ。
いつもこの通りの様子なのだ。
それに最近は診療所での対応もあり会うことも少なくなっていたから、より読めないのだ。
「……桜?どうしたんだ?」
「…ちょっと丞さんについて考えてた」
「俺について?」
桜は頷くと、山崎の前に座る。
「丞さんってさ…私のこと好いてくれてるのですか?」
「なっ…!?」
ストレートな言葉に、山崎は顔を真っ赤にした。
その様子を見てきっと大丈夫だと思ったが、彼からの言葉が聞きたい。
桜がジッと見つめるものだから山崎はどうしたものかと考えてきたが、諦めたように息を吐いた後に桜の手を握った。
「俺は…お前のことを好いている。叶うならば添い遂げたいと、思っている」
その言葉に、桜は心が温かくなるのを感じた。
(こういったことに対して不器用だけど)
こうやって真っ直ぐ気持ちを伝えてくれるのは、本当に嬉しい。
桜は微笑んだ後、山崎に抱きついた。
「お、おい!」
「凄く嬉しい…私も、丞さんのことお慕いしています。丞さんと、この先も一緒にいたいです」
彼と同じ気持ちでよかった、そう思いながら自分の気持ちを伝えると山崎は固まった。
少しして、動き出した山崎はバッと桜を引き剥がすと赤い顔で桜を見る。
「そ、その…それは本当か?」
「はい、勿論です」
そう返事をすると、山崎は嬉しそうに笑った。
そんな格好いい顔で笑われるとこちらの心臓に悪いと思っていると、スッと山崎の手が顔に触れた。
「桜…」
あっ、と思った時には目の前に山崎の顔が迫っていて、桜はそっと瞳を閉じた。
(…なんで丞さんがそんなに照れてるんですか)
(いや、その…改めると恥ずかしくてな)
(これからもしてくれますよね?)
(…ああ、君が嫌だといってもな)
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